(後編)井浦新さんインタビュー 井浦さんの感じる、村と街が隣接する唯一無二な渋谷

前編では、井浦さんがプロデュースするコスメブランド「Kruhi」のイベントについてご紹介させて頂きました。後半では学生時代から渋谷と関わりを持ち、街の変化を肌で感じてきた井浦新さんに、人にフォーカスするメディア「渋谷新聞」のライターとして、今も昔も変わらない渋谷の街の良さについてインタビューさせて頂きました。
前編はこちら

井浦さんと渋谷との関わり

ーー渋谷とどのように関わってきたか教えてください。

自分の場合は、音楽・ファッションと渋谷は切っても切れない場所で、学生時代は渋谷でレコード屋さんや古着屋さんに行っていました。新宿や原宿と比較すると、当時も今もそうですが、新宿は新宿に特化したレコードショップがあって、原宿はファッションとして強い場所で、渋谷はファッションもレコードもあって、渋谷と新宿では行く目的が全然変わってくるんです。

明るい時間帯の渋谷は、レコード屋に行って、例えばブラックミュージックとか、ネオアコースティックとかのレコードを買いに行きました。渋谷にはいろんなジャンルの音楽があって、興味のあるジャンルというより音楽全般に興味を持つことができました。暗い時間帯の渋谷は、今は行くことが少なくなっているけども、クラブカルチャーっていうのも自分の青春時代とか自分を作ってくれた大事な場所だったりします。

 

ーー今の渋谷って結構海外の観光客が多くて、その中でゴミなどのオーバーツーリズム問題も発生していたりしますが、今の渋谷についてどう思いますか?

今の渋谷はどちらかと言えば昔より綺麗になったなと思います。今も確かにたくさんゴミはあるけれど、それは渋谷に来る人口が増えたからだろうなと思うし、自分が学生の頃の渋谷っていうのはタバコの吸い殻や瓶も缶もそのまま放置されてるというか、ゴミ箱自体がないから捨てる場所がなかった。
だから、今の渋谷はタバコを吸う場所も決められていて、ゴミを捨てるスペースもちゃんと確保されていて、綺麗にされるベースはちゃんとあるんだなと思うと、渋谷はいい方に変わったなと思うのはあります。

カルチャーとしての渋谷

渋谷って、おしゃれな街というイメージではなくて、渋谷は川が流れていて、谷になっていて、そこに渋谷村というカルチャーが集まるところだと思っています。なので、低い雑居ビルの中に色んなお店がひしめき合って、レコードだったりファッションだったり、それこそコスメだったり、何かといろんなものがある場所で、その裏には映画館があってみたいな、本当にカルチャーを渡り歩けるもっとごちゃごちゃした場所のイメージ。

今も、詩のイメージがもちろん残っているけれども、建物の老朽化とかで大分クリーンナップされすぎちゃったかなと思うところもあります。でも、全ては時代を象徴していくものだから、特に大きな街は、昭和が良いとか令和が良いとかではなくて、自分が仲間と遊んでた頃とは違う、今の渋谷ってものがちゃんとあるんだなっていう。ただ、観光や経済の為だけに渋谷を綺麗にしていくとそれは大切な物を壊してしまうだけになってしまうから、渋谷という大きな街を作っていくことに関わる人たちは責任が求められる、そんな代表的な街だな思います。

ーー今も変わらない“渋谷“の楽しみ方はありますか?

渋谷は今も生活圏なのでよく散歩しています。

渋谷は失われていくものはもちろんあるけれど、残ってる場所が確かにあるなと思っています。さっきも言ったように、変わらないのは渋谷の地形。やっぱり谷だなって。渋谷のど真ん中を川が流れていて。下水の匂いが出ちゃってるところも正直あるけれど、元々あの川が通っていた場所から人が増えていった街ですよね。

例えば奥渋とかの裏道とか、道玄坂の裏とかに、意外と素敵な昭和のマンションとかアパートとか、一軒家が結構残ってたりします。そんな裏道を抜けて散歩をするのが好きです。こういう散歩って、新たな発見にも繋がるので、カメラを持って歩きながら、こんな所にコーヒー屋さんができたんだなとか、あそこのおばちゃんがやってる洋服屋さんはまだあるんだとか考えます。

村と街が融合型している渋谷の奥深さ

渋谷は、実は道が面白いんですよね。すごい象徴的な街なのに、地方都市のように駅を中心に放射線に広がっていく作りではなくて、ここからが住宅街だからあまり発展させられないとか。だから、発展していく場所がいびつなんですよ。街と集落の縁で、ちょっと寄り添った道路の作り方が全然違うんですよね。だから、そういうのを散歩しながら歩くのが楽しい。江戸の文化は、軒先に花壇を作るのがすごい流行っていて、下町の方に行くと家の前にお花が育ててあるお家が多いけれども、渋谷にも結構あります。

なんかそういう、人と街の暮らしの境目っていうのがモロに見えるのが渋谷なんですよね。ある意味、新宿とかに比べると街としてはとっても小さい。文化人類学的にも渋谷って住んでる人も街も独特だし、そういうところを歩きながら「こんにちは」って大都会なのにちゃんと挨拶も交わせる。だから渋谷って、村が物凄く近いというか、令和になっても大きく変わらないのが渋谷の面白さだと思ってます。村と街が融合したところで、それをまだ感じられる、世界的にもきっと稀な街だと思うんですよね。

だから、渋谷は都会だよねっていうのが自分はピンときてなくて、村が大きくなっちゃったのが他と違う素敵なところだなって。

自分の好きを続けていくこと

ーーそれでは最後に、今回はKruhiのコスメのイベントに参加させて頂き、ありがとうございました。このブランドや俳優業において、発信していくことや長く続けていく上で大切にしたいことはありますか?

自分の場合はありがたいことに、26年間、俳優として表現して伝えたり、映画を撮って、届ける仕事をしてきました。、この仕事に従事しているからこそ、難しさも知っているけれど、それを重ねてきた時間があるから何かのドアになっていくなと思っています。社会の中間に立って作って伝えることを意識してやってきたけれど、行動というか自分の好きなものに従事するっていうのが大切かなと思います。

就活をして会社に勤めたとしても、最初は興味がなかったけれど、その仕事が好きになれたら大成功だと思います。好きになるのは最初か好きでも、後から好きでもどっちでもいいんですよ。自分の場合、モノを作るのは最初から好きだったんですけど、俳優業は後から好きになったタイプです。

今回のKruhiを家内と作ることになったのも、子どもたちの未来を考えた時にやってみようと決めました。温暖化だったり、どんどん地球が変化していくのであれば、国会の前でプラカードを持つことももちろん大切だけど、暮らしの中で環境への負荷を減らすことの方が手が届くし、語り合える家族がいるから重きを置いています。

なので、そうやってコスメ業界に関わるなんて正直思っていなかったけれど、この環境を自分が大切な人を愛し、守りながらちゃんと取り組んでいけるか、それがどう派生して社会へ広がっていくかを考えたときにコスメだったんです。ちゃんと自分が愛せるもの、価値のあるものであれば、1人でも多くの人がこのコスメに出会うためにどんなことでもやれてしまうんですよね。お金の為にやってしまったら、不健康になって壊しての繰り返しになってしまうので、本当に好きであるってことが全てにおいて大切だと思っています。

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◾️Kruhi公式HP https://kruhi.jp/

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◾️井浦 新(いうら あらた)
1974年9月15日 東京都⽣まれ。 1998年、映画「ワンダフルライフ」に初主演。以降、映画を中⼼にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。アパレルブランド〈ELNEST CREATIVE ACTIVITY〉ディレクター。サステナブル・コスメブランド〈Kruhi〉のファウンダー。映画館を応援する「MINI THEATER PARK」の活動もしている。 上映中の作品に、映画「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」、大河ドラマ「光る君へ」が放送中。 今後の出演作に、CX「アンメット ある脳外科医の日記」(4/15より放送)、映画「東京カウボーイ」(6/7公開)、WOWOW「連続ドラマW ゴールデンカムイ―北海道刺青囚人争奪編―」(今秋放送)などがある。

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