渋谷で生まれる共創のかたち vol.07「目指すは“渋谷のプロ” 渋谷を舞台に社会課題を面白く解決したい!」森陽菜さん

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今回は、私、鈴木大輔のプロジェクトメンバーの紹介をしていきます。渋谷を拠点にまちづくりや社会課題の解決に取り組む&&の森陽菜(もりはるな)さんにライターさんに取材してもらいました。
陽菜さんは地域新聞の運営、アーティスト支援、コミュニティ運営、インバウンド事業、そしてプレコンセプションを発信するメディア『n/[エヌスラッシュ]』の編集長と、多岐にわたる活動の原点は、常に「社会をちょっとよくする」という視点があるそう。「渋谷で一番、“面白くて意味のあること”を生み出したい」と語る彼女に、その原点と今、そしてこれからのビジョンを聴きました。

クリエイティブな発想で社会に届けていきたい

――まずはどんなお仕事をされているのか教えてください。
「&&は様々な事業部があるのですが、私は全体の方向性や戦略に関わることが多いので、横断して関わっています。具体的には、地域新聞(渋谷新聞・原宿表参道新聞)、屋外広告事業・アーティスト支援のシブヤキャンバス、コミュニティ支援C4C、そして若者に向けてプレコンセプションについて伝えていくメディアn/[スラッシュ]では編集長をしています」

――かなり幅広いですね。どういう軸でつながっているのでしょうか?
「すべて”社会課題を、もっと面白く伝える”ことが軸です。n/[エヌスラッシュ]のテーマはプレコン(プレコンセプションケア)。現時点では結婚や出産を考えてないけれど、将来は可能性もあるかもという人たちに向けて、わかりやすく知識を届け、社会的なテーマも親しみやすい切り口で扱っています。重くなりすぎず、”選択肢を持ってもらう”というスタンスで発信しています」

高校3年生で見つけた、自分の軸

写真:ウェスレー財団

――社会課題を面白く伝えるというのは新しい切り口ですね。社会問題に関心を持つようになったのはいつ頃からですか?
「高校3年生のときです。アートやクリエイティブで社会をよくするという自分の軸を見つけた瞬間があって。その時から大学や学部、出会う人も全部”その実現につながるかどうか”で選ぶようになりました」

――かなり早い段階で自分の軸を決めて、そこから人生設計を始めたんですね。
「はい。マイルストーンを設定して、進むべき方向を自分なりに描いていました。SNSよりも、信頼できるメンターを2〜3人持って、テーマごとに頼ることで人脈を築きました」

――高校時代にはどんな活動を?
「舞台出演や部活の掛け持ち、公募型プログラムへの応募など、とにかく幅広く挑戦していました。高校2年、3年生の頃から多世代の人たちと関わる機会も多くありました。演劇を通じて、自分が最年少で、上は70代という場に身を置いたこともあります。高校時代にラジオパーソナリティをやらせてもらえた経験は大きかったですね。一つのコミュニティに依存せず、いろんな価値観を吸収することを大事にしていました」

――行政や社会の仕組みにも関心があったと伺いました。
「そうですね。文化や芸術に関わるには、行政やお金の流れも理解していないと実現できないと気づいたんです。高校時代から市の協議会にも顔を出していて、”現場の声をどう仕組みに届けるか”を学んできました」

――大手企業の内定を辞めて独立をしたと聞きました。そのきっかけについて教えてください。
「起業には、”とにかく起業したい人”と”やりたいことが既存にないから仕方なく起業する人”の2パターンがあると思うんです。私は完全に後者。
アートと社会をつなぐ仕組みが日本にはまだ少なくて、特に”アートマネージャー”という存在が圧倒的に足りていないと感じたんですよね。だったら“ないならつくろう”という感覚で独立しました」

――陽菜さんは現場での行動力もありますよね。
「はい、社会課題解決の一つとして、約70人(2025年7月現在)の仲間と一緒に渋谷のゴミ拾い団体も運営しています。世界経済フォーラム傘下のもと東京の地域課題を解決するというミッションのもと非営利活動をするglobal shapers communityの枠組みの中での活動です。商店街の方々が毎朝、365日掃除をしているという”当たり前”、改めて感謝を届けたり、外国人観光客にゴミ箱について教えてあげたり。草の根的だけど、地域にちゃんと向き合うことができる取り組みです」

――海外のカンファレンスなどにも参加されていますよね。
「そうですね、いろんな国を旅してきて、いつも刺激を受けています。旅のたびに、新しい視点や問いをノートに書き出して、自分の価値観をアップデートしていくのが習慣になっています。たとえば、ベトナム・ダナンで見たインフラの格差に触れて、東アジアのスタートアップ事情と日本の課題をつなげて考えるとか。そういう”点と点をつなぐ思考”が、今の活動にも活きている気がします」

「狭く深く」渋谷×アート×未来へ

――これからチャレンジしたいことはありますか?
「いま、渋谷の文化政策やアートを使ったまちづくりと、プレコン(プレコンセプションケア=将来の妊娠・出産に備える健康づくり)の2つの軸で活動しています。一見違うジャンルですが今後はこの2つをうまく”融合”させていきたいなと思っています」

――2つの軸を融合させるとはどういうイメージですか?
「例えば、渋谷のアートイベントで”未来の自分の身体について考える”きっかけをつくるとか。難しく見えるテーマも、デザインや体験を通じて伝えれば届くはずだなと思っています。”渋谷でやる意味のあること”を、ちゃんと形にしていきたいです」

――最後に、読者や学生へのメッセージをお願いします。
「渋谷って、”やりたいことがある人”にはすごく優しい街なんです。もし今何か挑戦したいことがあったら、ぜひ相談してほしい。やる気があれば、機会は必ずあるし、応援する人もたくさんいます。“自分ごととして動ける人”が、これからの社会をつくると思うのです。私もその背中を押す存在でありたいですね」

ーー陽菜さん自身は、今後どうなっていきたいですか?
「今後も”渋谷のプロ”として成長し、自分らしく生きる選択肢を広げる活動を続けたいと思います。現在は幅広いジャンルでのお仕事が多いのですが、今後は手広くなりすぎず、狭く深い領域で活躍できる人になりたいと考えています」

ーー渋谷のプロっていうのは面白いですね。
「そうですね、渋谷は大好きすぎて、”骨を埋めたい”と思っています(笑)。大学1年のときから家もバイト先も学校も渋谷。まちづくりや文化政策も渋谷を中心に研究していたし、どんどん愛着が増していきました。渋谷って、混沌としていて多様で、それでいて温かい。“正解が一つじゃない”っていう空気が心地いいんですよね。なので、渋谷をもっと盛り上げたいし、渋谷で何かやるなら、相談が来るような “渋谷のプロ”になりたいですね。街の現状と文脈を理解していて、ちゃんと面白いことができる人、そこを目指しています」

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