「必要なのは特別な支援ではなく、当たり前の日常」困難を抱える10代女性を支える 一般社団法人Colabo代表 仁藤夢乃さん

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2011年から活動を続けている一般社団法人Colabo 代表理事 仁藤夢乃さん。ご自身も中高生時代に家族や学校との軋轢から家に帰れない生活を送った経験から、10代女性を支える活動をされています。仁藤さんは2011年から新宿歌舞伎町などの繁華街で、帰りたい家がなくて街をさまよったり、ホテルを転々としながら生活をしている10代の女の子に向けて、バスカフェ(Tsubomi Cafe)を開催しています。ご飯や生理用品、妊娠検査薬などを無償で提供し、すこしでも安心できるように一緒になって当事者運動をしています。2022年7月には渋谷クランクストリートでもバスカフェを実施しました。

私も、10代女子としてお話を伺いました。

 

コロナ禍で変化する夜の街

 

 

ーーコロナ禍で貧困が拡大したということ、性搾取の被害が広がっているということが問題になっていましたが、コロナが少しずつ収まってきた今、助けを求める女の子に変化などはありましたか?

 

家などに居場所がなくて新宿や渋谷の路上に夜通しいる子たちは、小さい頃から大人に助けを求めても助けてもらえなかった経験のある子が多くいます。生きていくことに諦めも強いし大人への不信感もあったりして、自分から助けを求めてこない状況にあります。そこに付け入る性売買の業者と繋がる前に、私たちと出会って、選択肢を考えられたらと思って活動しています。

ですがコロナ禍から最近では、物資の無料配布があると知って、家に帰ることはできる状態にある子たちも、物資を目当てに来ることが増えました。他にこういった若い人の支援団体が無いことが理由かもしれませんが、路上にいる子と、自ら物資を求めて来る子とでは話す内容も違うし雰囲気も違うので、居場所がなくてバスカフェへ来ていた子たちが居づらくなってしまうという状況が生まれてしまいました。なので今は、夜の遅い時間にバスカフェを開催しています。

 

ーー支援すべき女の子、支援が必要ではない女の子の線引きなどはありますか?

 

支援が必要かどうかは支援者が線引きすることではないと思っています。困っているという状況が拡大していることは事実なので、だからこそ自ら集まってくる子もいます。自分から助けを求められる状態にある子は、本来公的機関がもっと積極的に支援すべきなのに助けてくれない状況があります。女の子たちのSOSが何でも無いものとされているんだなということをすごく思います。

 

ーー渋谷や歌舞伎町といった繁華街で活動をされていますが、渋谷の特徴や特に問題となっている性的搾取はありますか?

 

渋谷に遊びに行って声を掛けられた経験がある子は多いと思います。性売買の業者がスカウトやバイトの紹介という形で少女たちに声を掛けたり、「ご飯でもどう?」と誘う男性がいたり、こういう光景は渋谷のあちこちで起きています。声をかけられた時に、断れる子はリスクが低い、でも、お金がないなどの理由で断れない状況にある子を狙ってるんです。また、渋谷は性搾取被害の入口であるケースが多い印象もあります。新宿にいる子たちはすでに被害に遭っていて、お店を転々とさせられる感じが多いので、渋谷で声をかけられて新宿へ移動していくっていうイメージですね。

 

▲渋谷クランクストリートでバスカフェをした際の様子

 

買春者に悪いことをしているという自覚をしてほしい

 

ーー性売買に関わる女性たちは「合意の上でしている」という人もいますが、そのあたりについてどうお考えですか?

 

買春者側は、女性を買う自分達を正当化するために、「女性は自ら進んで性売買をしている」という概念を女の子たちにも社会にも植え付けて正当化させようとしています。女性はその仕事を自発的にやっている、好きでやっている、それも女性の選択なんだと言いたがる。女性は性的な対象として扱われて良いという考えだったり、女性を性の対象として買っていいという考えが本来おかしいですよね。お金を介することは一番簡単な支配で、お金を受け取れば合意と言われてしまいます。問題なのは、そういう状況に女の子たちを追いやる社会と、買春者の方ですよね。

 

ーーYouTubeの「きもいおじさんシリーズ」を拝見しました。私は見ていて、おじさんをただ単にきもいというだけではなく、女の子からも「きもいおじさん」という固定概念をなくしていかないといけないのではと感じました

 

固定概念ということではなく、おじさんたちがいかに加害者性に無自覚かというのが問題なんです。私たちは「おじさんがきもい」という話ではなく、「きもいおじさん」の話をしているんですけど、まさに「いいおじさんもいる」という言葉も女の子の告発を妨げてきた言葉なんです。性売買が問題だと考えているおじさんは自分のことを「いいおじさん」なんて言わないし、自分の加害性を認識しようとしています。

 

学校、職場、街中など、あらゆる場面で出会う「キモいおじさん」とは?

日常の中で10代女性が出会った「セクハラおじさん」の問題を言葉にし、分析していきます

 

女の子たちがくつろげるラウンジや、仮眠できるベッドルームが設置されている

 

「この世の中が悪い」ジェンダー平等にほど遠い日本

 

夜の街、新宿歌舞伎町で存在感を放つTsubomi Cafeのバス

 

ーー日本で生きていると、広告に女性が水着を着ていたりするのが普通だったりして、女性が性の対象ということが当たり前のように感じてしまうことがあります

 

例えば、日本では議員が買春して問題になっても、「18歳未満とは知らなかった」と年齢の問題にすり替えるなどし、辞職をしないことが多いんです。韓国やフランスのようなジェンダー平等意識が高い国ではそういう議員は辞職して当然だと各国の議員の方が言っていました。政治家の意識から日本とは違うんです。当たり前に感じてしまうのは、性売買店が事実上、合法化されているこの社会の問題です。

 

ーーそういった世の中を変えていかないといけないと思っているのですが、日本には女性支援の法律などはあるのでしょうか?

 

今の売春防止法では女性だけが処罰される法律になっています。66年前にできた法律なんですけど、女性は売春を持ちかけた罪を問われるのですが、買春者は処罰されないんです。今年になって、私も制定に関わっていた女性支援法という法律が国会で可決されました。こういう法律はフランスなどに比べて100年遅れてるんです。そういう現状が知られていないからこそ私たちのような支援団体に対して「嘘をついている」「男性嫌いだからやってる」などと言われてしまいます。これだけ女性支援団体に誹謗中傷や妨害が起こるのも日本の特徴かもしれません。

 

ーー私は来年フランスに留学を予定しているのですが、フランスはジェンダー平等が進んでいるのにも驚きですし、ますます行くのが楽しみになりました!

 

フランスでは、性売買は人身売買であるという共通認識が多くの人にあるそうです。買春者と業者を処罰し、女性は支援するべき対象だという考えをすべての女性議員が持っているといいます。賛成を積極的にしない男性議員は「あなたは買春者なの?」と疑われるため、男性議員もこれに賛成しているそうです。日本とは、人権意識が全然違いますよね。

 

ーー韓国ではバスカフェのような活動がすでに広がっていると聞きました。仁藤さんは今後、日本でどのように広めていきたいと考えていますか?

 

韓国は若年女性支援や、性搾取にあった子の支援、青少年支援がしっかり公的に発達しています。歌舞伎町のような繁華街にも公的なシェルターがあったり、日本とは支援の次元が違います。私たちが行っているバスカフェも韓国を参考にしたものです。韓国は、ソウルだけでも、バスをつかったアウトリーチを専門に行っている団体が7団体あって、色々な公的機関との連携もできているし、女の子たちも安全にバスを転々としてご飯を食べられたり、人との信頼を回復できたりする機会があります。

日本でもColaboだけではなく、色々な団体がこういうことに関心を向けてくれたらいいと思います。全国各地で、こういう活動が必要だと思ってくれている方々が私たちの活動を参考にして、キッチンカーで夜の街を周り、性被害に行き着かなくていいようにしようという活動も増えています。もっと広まっていってほしいですね。

 

注:本インタビューは2022年10月13日に行いました。取材に基づく発言を元に記載しました。

 

◾️仁藤夢乃 略歴

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供などを行っている。Colaboでは、10代の少女たちと支援する/される関係ではなく「共に考え、行動する」ことを大切にしており、虐待や性暴力被害を経験した10代の女性たちとともにアウトリーチや、虐待や性搾取の実態を伝える活動や提言を行っている。

 

WEB:https://colabo-official.net/

Colabo Twitter:@colabo_official

仁藤夢乃さん Twitter:@colabo_yumeno

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