2022年4月26日、青山学院記念館で行われたサンロッカーズ渋谷の試合イベントで巨大Shibuya SDGsポスターが展示されました。
Shibuya SDGsポスターは、2020年Social Innovation Week Shibuyaの「NOVUS FUTURE DESIGN AWARD」で最優秀賞およびSocial Innovation部門賞を受賞。
▲Shibuya SDGsポスターの作り方の紹介動画
今回はSDGsポスターのデザイナーである田口博基さんにお話を伺いました。
「世の中にいいことがしたかった」 SDGsポスター
ーーShibuya SDGsポスターとは何ですか?
渋谷区の企業が、SDGsの取り組みを発信できるポスターです。
ポスターに自分たちの取り組みを書き込んで表明することができます。
アクションはどんなものでも大丈夫で、「電気をこまめに消しています」とか「メニューに再生紙を使っています」といった小さな活動から可視化していくというのが目標です。
ーーカラフルで可愛らしいポスターですね。形も特徴的で面白いですが、どういったコンセプトでデザインされたのですか?
SDGsのデザインを見てみると、目標のロゴが正方形の形なんですよね。
僕の中でそれが単調で、つまらないなという印象があったんです。
そこから着想を得て、正方形を回しひし形にして、空いたスペースにそれぞれのSDGsへの取り組みを書き込めるというデザインにしました。
さらにそのデザインによって、自分の好きな形に組み合わせられるようになりました。
組み合わせることで、みんなのアクションが広がっていくところを可視化できる面白いアイデアになったと思います。
ーー最近は至るところで話題となっているSDGsですが、田口さんは SDGsについてどう考えられていますか?
僕自身、世の中で謳われるようになる2〜3年前から、SDGsに関心がありました。
「誰一人取り残さない」というSDGsのテーマと、僕が小さい頃から持ち続けている「世の中にいいことをしたい」という思いとが、どこかリンクしたのかもしれません。
なので、デザインを通じてなにかSDGsと関わりたいなと考えていた時に、ちょうどこのポスターに携わることができたという感じでしたね。
▲サンロッカーズ渋谷試合イベントでお披露目された計210枚に及ぶ巨大SDGsポスター
「色々なことをデザインしたい」
ーー田口さんはいつもどんなお仕事をされているのですか?
普段はパッケージやロゴマーク、駅に貼られるポスターなどのデザインをしています。
一言で言うと、グラフィックデザイナーやアートディレクターといった肩書きにあたる仕事をしているのですが、僕の場合あえて肩書きは “デザイナー” としています。
グラフィックだけでなく、もっと幅広い “デザイン” に挑戦していきたいという思いがあるからです。
ーーなるほど。そもそも田口さんがデザイナーになったのにはどういった経緯があるのですか?
実は、デザイナーという職業を意識しだしたのは大学に入ってからなんです。
それまでデザインの道に進むことは全く考えておらず、中学・高校と進学校で勉強がメインの生活を送っていました。
大学にもデザインとはかけ離れた物理学の専攻で入学し、しばらくしてから将来の職業について改めて考え始めました。
その時に、ふと思い出したのが図工の授業です。
ーー小学校の図工の授業ですか?
そうです。
図工の授業でアイデアを考えてそれを形にするという作業が好きで、楽しかったのを思い出しました。
そこから、自分の強みはそういった “デザイン” ではないかと考えるようになりました。
実は、最初はデザイナーだけではなく企画やプランナーといった道も候補にあったんです。
ただ、そういった職業は、自分でアイデアを形にすることができないんですよね。
自分は、1人で0から作り上げられるようになりたかったので、デザイナーの道を選びました。
「面白いことは誰にでもできる」
ーーデザイナーと聞くと、どうしても難しそうな職業だと感じてしまうのですが……
やはり、そう言われることは多いです。
飲み会の席でも、デザイナーというと毎回珍しがられますし、世間には馴染みが薄い職業だといつも感じています。
ただ、デザインというのは勉強さえすれば誰にでもできる仕事だと僕は思っています。
「センスが必要」と思われることも多いですが、センスも努力次第で身につけられます。
なので、若いみなさんにはもっとデザイナーという職業を目指してほしいですね。
ーー若い人にデザイナーを目指してほしいというのはどうしてですか?
「面白いことは誰にでもできる」というのをもっとみんなに知ってほしいからですかね。
僕のまわりでも、お金を稼ぐために渋々就職するという人が多かったのを覚えています。
けれど、面白いことをしながらお金を稼げる職業もある、ということを若い子にはもっと知ってほしいです。
ーー田口さんが今後やってみたいと考えていることはありますか?
今の話の延長線上になるんですが、若い子、特にデザインに関心がある人たちへの教育に携わりたいと思っています。
何かを継続して学ぶことはとても難しい、というのは僕が昔から感じていることです。
デザイナーは特に、数学や英語のように教科書があるわけではないので、何から手をつければいいか分からなくなってしまうという人はかなり多いです。
僕の専門学校でも勉強が続かず、辞めてしまう人が何人もいました。
そういった人にデザインの楽しさを教えて、サポートできるような仕事ができたらいいなと思います。
ーー今回渋谷で活動をして様々な出会いなどあったと思いますが、田口さんは渋谷にどんな思いがありますか?
僕自身元々渋谷にそこまで関わりがあったというわけではないんです。
ただ、こうやっていろんな縁が繋がって、SDGsポスターを通して渋谷の方達と関わることができました。
僕が今、力を入れたいと考えているのはクランクストリートです。
ーークランクストリートとは何ですか?
渋谷のセンター街にある細い路地です。
以前そこでマルシェを開催させていただいたのですが、たくさんの人に来ていただいてとても楽しいイベントになりました。
今はまだタバコやゴミのポイ捨てだらけのクランクストリートですが、今後もっと良い場所にしていきたいと考えています。
◾️田口博基さん 略歴
1992年生まれ、埼玉県出身。デザイナー。
大学では物理学を専攻するも、卒業後はデザインの道へ。
2018年 東京ミッドタウンデザインコンペ ファイナリスト
2021年 NOVUS FUTURE DESIGN AWARD グランプリ受賞
◾️ Shibuya SDGsポスター
Website:https://www.shibuya-sdgs-poster.com/
Instagram:https://www.instagram.com/shibuyasdgs/