“遊び”が仕事をつくる ヘアサロン LECO 代表 内田聡一郎さん

内田聡一郎さん

多くのクリエイターやアーティストのヘアメイクを手がけるだけでなく、DJ活動や書籍の出版などマルチに活動する、ヘアサロン「LECO」の代表 内田聡一郎さん。2020年には美容業界のオリンピックとも呼ばれる「ジャパン ヘアドレッシング アワーズ」でグランプリを獲得しています。

 

さまざまな分野で活動し、新たな美容師像を築き上げている内田さん。「仕事もプライベートも渋谷に集約されていた」と語る内田さんの仕事論とは? お話を聞いてみると、渋谷という街・文化との密接な関係が見えてきました。

「やれることは全部やろうと思っていた」マルチな活動のルーツ

 

――内田さんは多くのアーティストやモデルなどの担当をされていたり、仮想空間でのヘアショーを行ったり、クリエイティブな方面への影響力が高いですよね。どのようにして現在のキャリアに至ったのでしょうか?

 

いろいろな派生で現在の状況があると思います。2004~05年ごろから音楽・ファッションの界隈やサブカルチャーともリンクしていたので。「VeLO/vetica」に入って1年後ぐらいにはモデル活動も始めて、DJもよくやるようになっていました。

 

同時期に下北沢の小さなクラブで身内のパーティーをスタートさせたんですが、そこから原宿で今「アソビシステム*」をやっている中川悠介社長とも出会って。彼もファッションとヘア、音楽を融合させたイベントをやっていたので、一緒に活動するようになりました。その辺りから様々な活動が増えましたね。

*きゃりーぱみゅぱみゅのマネジメントなども行うカルチャープロダクション

 

やっぱり原宿というエリアで名前を売っていくのは難しいんです。いろんな人がいましたから。当時は若かったので、いかに売れるかを凄く考えていて、やれることは全部やろうと思っていました。読者モデルをやり始めたのも、とにかく自分の名前を美容師以外の分野で出していこうと思ったからです。

 

「渋谷だったらどこにでも思い出がある」

LECO看板と渋谷一丁目の風景

 

――内田さんといえば原宿のイメージが強かったんですが、独立の際に渋谷を選ばれたのはどんな理由ですか?

 

「渋谷でしょ」と、ごく自然に考えてましたね。もともと渋谷自体好きな街でよく遊んでいたので、エリアとしての良さはすごく感じていました。

 

――ホーム感みたいなものがあるのでしょうか。

 

そうそう。やはり渋谷は様々なカルチャーがミックスされていて、ファッション、飲食、アート、音楽、全部あるんですよね。休みの日も結局いつも渋谷にいますから。

 

特にお店があるシブイチ(渋谷1丁目)というエリアは、原宿とか青山の匂いを感じさせる渋谷。洗練されているだけでなく、今後も面白いエリアになると感じました。今までやってきた活動とも繋がるところも多いですし。

 

実際に2018年当時はお店もまばらな印象でした。この4年ぐらいで様々なお店が増えてきて、それこそ美容室も凄く増えました。今後の都市開発の流れもあったので、数年かけてここで頑張っていこうかなと。

 

 

――もちろんDJとしても渋谷との関わりは深かったわけですよね?内田さんが掲げている「20代美容師がやっておくべき7つのこと」でも、美容師以外のコミュニティーや音楽の場に触れられていました。

 

渋谷は20代の思い出みたいな場所ですね。円山町のclubasiaの通りも死ぬほどいましたから。VisionやWOMBといったクラブにもよく行っていましたし、渋谷だったらどこにでも思い出があります。

 

美容師をやっていると美容師同士でつるんでしまって、自分が前のめりに行かないと、あまり他の職業の人たちと接点が無い。休みのスケジュールも他の職業と違いますから。

 

でも、ナイトライフに足を突っ込んだ瞬間から、音楽をやっている人、ファッションをやっている人、バーテンダー、といったさまざまな人との出会いがありました。いろんな人が同じ目的意識で集まってるし、乾杯したら「マイメン」みたいな空間が凄く心地よかったですね。渋谷に行ったら誰かいるっていう、渋谷を通したネットワークができたんです。

 

それぞれのいるクラブは違いますが、面白いことをやろうと考えているのはみんな一緒でした。思い返せば、仕事もプライベートも渋谷に集約されていて、みんなの”場所”みたいな感じです。

20代の美容師がやっておくべきことを記したテキスト

――実際にそこで出会った人とお仕事されることも多いのですか?

 

めちゃくちゃ多いですね。

ここ数年は、その当時バカしていた人たちとしか、仕事してないかもしれないなっていうぐらい。クラブにいる人って、バイタリティがある人が多いんですよね。昼間に活動しているのに、夜も遊びに出ているわけですから(笑)。おのずと仕事でもそういう部分はすごく感じますよね。

 

とくにヘアショーなどの作品づくりは表現活動ですから、そうした部分でセッションすることも多い。今も商品開発でDJ仲間たちにパッケージデザインをお願いしています。昔からのノリと同じバイブスで仕事ができるし、かっこいいなと思うものの価値観がそもそも近いので、ツーカーのような関係です。

 

――そうした繋がりで何か印象的なお仕事はありますか?

 

いろいろなメディアに取材してもらうんですが、美容業界の雑誌「Men’S PREPPY」の表紙を中田ヤスタカと一緒に飾ったのが印象的でした。彼は長年一緒にやってきた盟友なので。

 

昔話もしつつ、お互いの仕事観みたいなものを話したんです。美容業界の雑誌の表紙を、全然違うジャンルのアーティストが飾るという、僕ならではのアプローチだったなとも思いますし、面白い仕事でしたね。

中田ヤスタカさんと内田聡一郎さん

業界全体を動かす、内田さんの描く未来像

 

――今後の目標は?

 

美容室や美容師という職業をもう1回盛り上げていきたいですね。美容師が世の中でフィーチャーされていたからこそ、僕も美容師を目指した部分があるので。

 

やっぱり若い世代に、美容室や美容師というカルチャーをクールだと思ってもらうためには、美容師がかっこいい方がいい。そのためにやれることはやる。

 

――様々なカルチャーと関わることで、美容師という職業の価値を上げていくということですか?

 

美容師って、どうしても職業的に軽視されがちな部分があるんです。それでも今は、美容師もすごく考えていて、大志を抱いている人も多い。そうした人たちが個々で動くのではなく、美容業界全体として動いて、多くの人が美容師に注目してくれたらいいなと思います。

 

今は個々に集落があるような感じ、時代性もあるのかもしれないですが、それだと大きなムーブメントは起こせない。僕は、大きなことをみんなで同じ方向に向かってやる、そんなタイミングが育ってほしいなと思います。それこそテレビにもどんどん出ていけるような。

 

ちょうど先日、アメリカのスーパーボウルのハーフタイムショーを見て影響を受けたっていうのもあるんですけどね(笑)。ああいう規模で、何万人もの観客が一堂に会するスターを観に来るって凄い。めちゃくちゃ興奮しましたから。

 

あそこまでは無理かもしれないですけど(笑)、美容師が世間に大きな影響を与えられるようなことがやりたいですね。

 

 

◾️内田聡一郎 / Soichiro Uchida 略歴

LECO 代表 / 神奈川県出身

原宿の美容室にて15年間トップディレクターとして、サロンワークをはじめ一般誌から業界誌、セミナー、ヘアショー、商品開発、ミュージシャンのヘアプロデュースなど多岐に渡り活躍。愛称はsoucuts(ソウカッツ)。

Instagram @soucuts

Twitter @soucuts

 

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