2021年12月14日、SHIBUYA109を始め、渋谷のさまざまな場所に 12種類の「#しかたなくない」というハッシュタグが書かれたポスターが貼り出されました。
カラフルなポスターは、社会実装プロジェクト「#しかたなくない」プロジェクトが風通しの良い社会を目指して展開したもの。
今回はこの 「#しかたなくない」 プロジェクトの仕掛け人、株式会社ネクイノ代表取締役の石井健一さんにプロジェクトとその背景についてお話を伺いました。
▲渋谷109前に展開されたポスターの様子。任意の言葉を入れられるの長方形の下には「#しかたなくない」の文字がある
〝しかたない〟んじゃない、みんな目を覚ませ
株式会社ネクイノは
「世界中の医療空間と体験をRe▷designする」をミッションに
「Get Wild(異端であろう、先導しよう)」
「Activation,Velocity(驚異的なスピードで世の中を驚かせよう)」
「Give it forward(正しいことをしよう)」
をVALUEに掲げ、ヘルスケア分野において事業を展開しています。
ーー「#しかたなくない」プロジェクトは何がきっかけでスタートしたのでしょうか?
スマホからオンラインでピルの相談、診察、処方を行うsmaluna(スマルナ)というサービスを2018年6月に立ち上げたんです。ピルを服用することで、生理痛の緩和や避妊にも効果があることが広く認知されるようになり、この3年で多くの方に利用いただいています。
一方で「生理は病気じゃない」「避妊のことを女性が口にするのはけしからん」という価値観を持った人たちもいます。残念ながら、生理や避妊にまつわるカラダの悩みを〝しかたない〟で片づけられてしまうことがあるんです。
そこで
「〝しかたない〟んじゃない、そういう時代じゃないんだ、みんな目を覚ませ」
という思いでこのプロジェクトを立ち上げました。
普段の生活で「しかたないよね」と我慢したり、話題にするのを避けるカラダのこと、性のこと、働き方、などに向き合うこと。それをどう言語化したらいいか、どんな言葉が伝わりやすいかを考えて出てきたのが 「#しかたなくない」という言葉です。
女性が自分のココロとカラダと向き合いながら、人生をどう選んでいくかを考えるきっかけになったらいいと思っています。
渋谷には新しい価値観への土台がある
ーー#しかたなくない プロジェクトを渋谷で始めたのはなぜですか?
渋谷は文化の発信地というイメージがあり、価値観をアップデートしていく、というプロジェクトの世界観と合っていました。
また、渋谷区は(パートナーシップを組んでいる)渋谷未来デザインさんのようなイノベーションプラットフォームがすでにあったり、国内最大級のソーシャルデザインをテーマにしたSOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYAを開催したりしています。新しい価値観への土台が既にあるので「 #しかたなくない」プロジェクトが目指すゴールに近づきやすいと思いました。
ーー渋谷の街中に登場した12種類の 「#しかたなくない」ポスターはカラフルで魅力的ですよね。
ネクイノの得意分野かつ事業領域であるカラダと性の領域にフォーカスしていく中で、編集部も含めたメンバーと会議を重ねて、言葉とイメージを選びました。
ネクイノだけで世界中の問題を解決するのは難しいので、これからもたくさんの企業にそれぞれの得意分野でこの「#しかたなくない」 プロジェクトに参加してほしいです。
誰かに強制される我慢をなくしたい
ーーsmalunaや「#しかたなくない」プロジェクトが目指しているゴールを教えてください。
smalunaのゴールは簡単で、smalunaが不要になる未来です。
例えば、世界中の女性がピルを無料で手に入れられたり、かかりつけの産婦人科があるようになったら、目的は達成したことになります。
「#しかたなくない 」プロジェクトについては〝しかたないよね〟と、諦めることがなくなれば良いなと。合理的に、時代と共に変わっていくことが このプロジェクト の目指す未来だと思っています。
SNSで実際に寄せられた声の中には
「我慢をしろ、我慢は素晴らしいんだ」
という意見もありました。僕は決して我慢が悪いことだとは思わない。ただ、誰かに強制される我慢は良くない。ここは仕分けをしていく必要があって、苦労の再連鎖はいらないと思うんです。
ーー続いて、ネクイノの起業理由を教えてください。
起業というのはやりたいことや解決したい課題が先にあって、それが既存の会社や組織では解決できない場合に自分で旗をあげることだと思います。
「患者と医者のコミュニケーションを最適化したい」
「最高の医療水準の治療を維持したまま予防的なアプローチができていない」
という課題を解決するためには、日本の社会に実装させることが1番の近道だと思い、起業しました。
ーーその中でウィメンズヘルスに特化した「smaluna」を立ち上げた理由を教えていただけますか?
これも起業の理由に近いのですが
「コミュニケーションの問題を解決したい」「治療じゃなくて予防的アプローチをしたい」という2つの軸で日本の医療を俯瞰的に見たときに、社会実装が遅れている領域がいくつか存在します。その中の1つがこの〝ウィメンズヘルス〟です。
僕は薬剤師でもあるので、ピルという薬をビジネスの中心に据えました。ピルは世界で何億人もの人が飲んでいます。避妊という予防にも繋がります。しかし、日本ではあまりポジティブなイメージを持たれていないため、使用しにくい印象があります。
そこで、最初に着手するプロダクトとしてフォーカスを当てました。つまり、ビジネスサイドのやりたいことから絞り込んでいったときにこの課題が浮き彫りになってきたんです。
勉強すればするほど問題が根深いことに気づき、単純なビジネスではなくて、この課題を一緒に解決してくれる仲間を作りたいと思いました。
ーーコミュニケーションと予防を世の中に浸透させていくための手段なんですね。
はい。これからも、ネクイノの3番目のVALUE「Give it forward(正しいことをしよう)」にある〝正しいことをしよう〟という文脈と共に社会の問題を解決していきたいと思っています。
◾️石井健一 略歴
株式会社ネクイノ 代表取締役
薬剤師・経営管理学修士(MBA)
2001年に帝京大学薬学部卒業後、外資系製薬会社アストラゼネカに入社。
2005年よりノバルティスファーマにて、医療情報担当者として臓器移植のプロジェクトなどに従事。
2013年に関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科院を卒業後、医療系コンサルティングファームを経て、2016年6月、「世界中の医療空間と体験をRe▷designする」というミッションのもと、株式会社ネクイノ(旧ネクストイノベーション株式会社)を創業。
◾️株式会社ネクイノ 概要
2016年6月に「世界中の医療空間と体験をRe▷designする」というミッションのもと創業。
ICTを活用したオンライン診察をはじめ、健康管理支援・未病対策など、一人ひとりのライフスタイルや健康状態に合わせて選択活用できる医療環境を生み出す。メディカルコミュニケーションカンパニーを掲げ、テクノロジーと対話の力で世の中の視点を上げ、イノベーションの社会実装を推進。