子どもが安全に暮らせる社会を セコム 舟生岳夫さん

「セコム子ども安全教室 教材」。2021年7月に提供を開始し、2023年には第17回キッズデザイン賞を受賞しました。
今回はその開発に携わり、長年子どもの安全のための活動を続けているセコムの舟生岳夫(ふにゅう たけお)さんにお話を伺いました。

「ならべく手間がかからないものがいい」

ーー「セコム子ども安全教室 教材」とはどのようなものですか

小学生以下の子どもを対象にした安全教室や防犯教室で活用できる配布型のオリジナル教材です。
テーマは全部で5つ。それぞれに高学年用・低学年用があり、身につけてもらいたい安全教育の内容を厳選し、DVDにまとめています。
教材はお申し込みいただいた小学校などに無償で提供しています。

▲教材はDVD、指導教本、パンフレットから構成されています。授業の所要時間は1回15分と、朝会などの短い時間でも実施できるのが特徴です

ーーどうして配布型のオリジナル教材を開発しようと考えたのですか

セコムは2006年から、社員や警備員が小学校を訪れ、子どもを対象とした安全啓発活動として、訪問型の安全教室を行ってきました。身振り手振りを交えたり、先生に不審者役をやってもらったりと、子どもも楽しめるよう様々な工夫を凝らしていました。
しかし、年々依頼件数が増えてきたことやコロナ禍の影響を受け、すべての依頼に応えて訪問することが難しくなり、配布型のオリジナル教材を作ることになりました。

▲当時の訪問型の安全教室の様子。始めたきっかけは、先生方からの依頼でした

ーーどのような点に気を配りましたか

開発にあたり、学校の先生方へヒアリングを行ったところ「スライドと映像を組み合わせた教材が便利」といったコンテンツへの要望に加え、「なるべく準備や実施の手間がかからないものがいい」という声をたくさんいただいたんです。
そこで創り出したのが指導教本です。
指導教本には各テーマの狙いや、授業の進め方を分かりやすくまとめ、忙しい先生でも簡単に安全教室ができるようにしました。
また、低学年向けのスライドには答えやすいように4択クイズを入れたり、高学年には自ら考えて答える発表形式を取り入れたりするといった工夫もしました。

真に求められているものを作らなければ、社会に貢献することはできない。
その言葉を胸に、より良い教材を目指して開発に取り組みました。

▲子どもの安全対策の研究を行っている“セコムならでは”の視点で内容を厳選した5つのテーマが用意されています

子ども事故の「仕方ない」をなくす

ーーキッズデザイン賞とはどのような賞ですか

キッズデザイン賞が設立されたのは2007年のこと。度重なる子どもの死亡事故を受けて、子どもの安全に目を向けたデザインが重視されはじめた時期でした。

「子どものけがは仕方ない」
「大人が甘やかしすぎるのもよくない」

キッズデザイン賞ができる前、世の中にはこんな風潮が当たり前にあったんです。ですが、どんな事故やけがにも必ず原因があります。
また、「子どもはけがをしながら学ぶもの」という考え方もあります。擦り傷や小さなやけどなどの治るけがであれば、大いに経験して学んでもらっていいと思います。しかし命を落としてしまったり、重篤な後遺症が残るようなけがについては、社会がその事象の要因について検証し、対策をおこなってそれがまた起こらないようにすることが必要です。
そういった原因を取り除き、子どもや子育てに関わる社会課題解決に取り組む優れた作品を顕彰する取り組みがキッズデザイン賞です。

▲キッズデザイン賞授賞式の様子。キッズデザイン賞には「子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン」「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン」「子どもたちを産み育てやすいデザイン」という3本の柱があります

ーーキッズデザイン賞がスタートしてからの18年間で、何か変わったことはありますか

分かりやすいものでいうと、電気ポットがあります。以前は、熱い蒸気や倒した時にこぼれる熱湯で子どもがやけどを負う事故がよくあったのですが、今では対策されたデザインが一般的になりました。
他にも、シュレッダーに子どもの指が巻き込まれる事故を防ぐため、すき間を狭くした製品が販売されています。
子ども用ではない製品にも、子ども向けに配慮した安全対策が増えてきたのはとてもいいことだと感じています。

ーー舟生さんは、キッズデザイン賞を主催するNPO法人キッズデザイン協議会の理事も務められています

私は2005年から、子どもの安全に関する研究と活動を始めました。
当時は、私の子どもが幼稚園に通っており、これから小学校に上がるというタイミング。親として、子どもの安全に関することを日々不安に感じていました。
そんな時にキッズデザイン協議会の話を聞き、真っ先に手を挙げたんです。
自分の不安、そして社会の不安を解消したい。
そんな思いで、これからも子どもが安全に暮らせる社会に貢献していきたいです。

▲(手前、画面右から)セコム 舟生岳夫さん・中川翔平さん (奥、画面右から)キッズデザイン協議会 渡邉洋己さん・吉岡麻衣さん、渋谷新聞 太田可奈・鏡理吾

第18回 キッズデザイン賞は2024年3月1日(金)から5月13日(金)13時まで公募を行っています。
子ども本人はもちろん、子どもを取りまく家庭や社会の成長をサポートし、子どもや子育てに関わる社会課題解決に取り組む優れた作品を幅広く募集しています。
東京都内の中小企業は、申請により都から審査料 ¥60,500の全額補助を受けることができるようになる予定です。(2024年3月の都議会をもって決定となります)
審査結果に関わらず無償で応募できるこの機会に、みなさんぜひご応募ください!

第18回 キッズデザイン賞について:https://kidsdesignaward.jp/lp/
東京都審査料補助について:https://kidsdesignaward.jp/outline/auxiliary.html

◾️舟生岳夫さん
セコム株式会社 IS研究所 リスクマネジメントグループ 主務研究員
特定非営利活動法人 キッズデザイン協議会 理事・研究開発部会長

子どもの安全ブログ:https://www.secom.co.jp/kodomo/

◾️セコム子ども安全教室 教材
Webサイト:https://www.secom.co.jp/corporate/anzen/kodomo_kyozai/
キッズデザイン賞受賞ページ:https://kidsdesignaward.jp/search/detail_230010

◾️特定非営利活動法人 キッズデザイン協議会
Webサイト:https://kidsdesign.jp/
Facebook:キッズデザイン協議会
X:@kidsdesignjp
Instagram:@kidsdesign0808
YouTube:@kidsdesign4112

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