渋谷で大島紬を知ってもらい伝統をつないでいく はじめ商事 元允謙さん

鹿児島県の奄美大島で作られている織物「大島紬」

1300年以上の歴史があると言われ、世界三大織物にも数えられる日本が誇る伝統工芸です。

奄美大島で8代続く大島紬の織元であるはじめ商事の元允謙(はじめただあき)さんが、サンロッカーズ渋谷とサステナブルな取組みをしています。

2022年4月24日のアルバルク東京との試合で、その取組みがあるとのことで、サンロッカーズ渋谷のホームである青山学院大学記念館に伺ってみました。

 

バスケットボールのあるものをアップサイクルして、サンロッカーズ渋谷の公式グッズをつくっています

バスケットボールトップリーグのB.LEAGUE。渋谷をホームタウンとしているサンロッカーズ渋谷ということもあって、この日もスタジアムはたくさんの観客で大熱狂。

そのコートサイドで機織りをしているなんともバスケットボールと不釣り合いな光景が。奄美大島から織機を持ち込んで機織りをしているのは元允謙さんです。サンロッカーズのファンの皆さんも初めて見る光景に興味津々でたくさんの人だかりができています。

まずは元允謙さんにサンロッカーズ渋谷との取り組みについて伺ってみました。

 

「我々は、古い生地を裂いたものをヨコ糸として新しい生地を織っていく裂き織りという手法で生地をつくり、『奄美布』という名前をつけて販売しています。

裂き織りである『奄美布』の特徴は無駄にしないこと。また小ロットで作れることが特徴です。そこに、渋谷区SDGs協会が目をつけてくれて、サンロッカーズ渋谷と繋いでくれました」

 

▲サンロッカーズ渋谷のサンディーも機織りを体験してくれました

 

渋谷区SDGs協会は、渋谷区内の個人や団体に対してSDGsに関わる活動をしている団体。サンロッカーズ渋谷がSDGs活動をするにあたり、今回のコラボが実現しました。

 

「サンロッカーズ渋谷では、2019-20シーズンで着用するはずだった3rdユニフォームがコロナ禍の影響でシーズンが中断となり、使用できなくなりました。そのユニフォームをアップサイクルして生地をつくって公式グッズをつくろうという話をもらいましたのがきっかけです。

ユニフォームの生地を織り込むのは初めての体験だったのですが、実際に織り上がったのを見たときに、着物とはまた違った肌触りや、タオル生地のような凹凸がある表情が出たのは驚きでした。

パスケース、がま口、キーケースの3種類の商品を、今回は数量限定で販売したのですが、販売からわずか30分で売り切れてしまいました。今後はサンロッカーズ渋谷さんのオフィシャルサイトで、注文が入った分だけ生産するようにして販売していきます。この販売方法自体がSDGsの取り組みになっていますね」

 

▲当日、会場で販売したキーケースなどのオフィシャルグッズ

1300年の伝統をつなげていくということ

元さんは8代続く大島紬の織元ということですが、3歳からは販売の支店があった福岡で育ったそうです。大学の時に田舎がある奄美大島で実際に織っている現場を見て、やってみたいとのめり込んでいったといいます。後継者として大島紬の世界に入っていった点について聞いてみました。

 

「着物の世界は、製造から販売まで卸問屋さんや小売店さんなど多くの会社が関わってお客様に届けていくのが通常でうちもそうしていました。しかしこれからはもっと直接お客様と繋がりたいと思っていました。

その中で着なくなった着物を、裂いて織りなおして『奄美布』として再生してお客様に届けるということをすることにしました。

また、近年は着物を着る機会が減ってきています。今回のサンロッカーズ渋谷さんとのコラボのようなイベントで、普段着物を着ない人たちに、これをきっかけに大島紬を知ってもらいたいと思っています。

少しでもたくさんの人に大島紬を知ってもらって、伝統を途絶えさせたくないと思っています」

 

 

元さんは、サンロッカーズ渋谷さんの他にも、いろんな業種の会社とコラボをしています。

最近の話だと、フェラーリとのコラボで、シートと床部分の布を奄美布で製作され、NYのフェラーリショールームでのお披露目会に参加してきたそうです。日本の伝統産業と海外のトップ企業とのコラボは素敵ですね。

 

▲ニューヨークのフェラーリショールームでも実演しました

生地に新しい価値を創造する 

「大島紬の特徴は絹100%で、精緻な絣(かすり)模様が特徴です。糸を1本1本染めて細かい模様をつけて手で合わせて織るのが特徴で、全て手作業で行なっています。人間業じゃないとよく言われています。

これからもこの特徴を活かして、着物の生地だけでなくて、あらゆる分野の生地にチャレンジしていきたいですね。

織れるものはなんでも織って、新しい価値を創造していきたいと思っています。とてもクリエイティブな仕事なので、固定概念にとらわれないで柔軟にやっていきたいと思っています」

 

実は、元さん自身もバスケットボール経験者であり、大のバスケットボールファンだそうです。

グッズが完売した後は一緒にサンロッカーズ渋谷戦を観戦しました。

 

 

 

◾️元允謙 略歴

有限会社 はじめ商事 代表取締役社長

1981年 奄美市名瀬有屋町生まれ。

代々大島紬の製造を生業とする家に生まれ、その仕事の関係で幼少期より福岡で育つ。

大学在学中に大島紬の製作に興味を持ち、卒業後、京都の呉服問屋での修行を経て

2007年 島に戻り、本格的に大島紬の製造を学ぶ。専務として家業に携わる傍ら、奄美の伝統と技術を用いた新しい織物の研究を行う。

2018年 社長に就任。

2021年 本場大島紬(染色部門)伝統工芸士認定

    現在に至る。

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