渋谷センター街から着物に触れる手助けを シブヤツムギ

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今回、渋谷センター街のど真ん中にあるヴィンテージ着物ショップ「シブヤツムギ」。アップサイクルしたオリジナルデザインの着物も扱っています。お店に訪れるお客様の99%が海外からの方。インバウンド色の強いこのお店で働いている、着付け師の高畑なほ子さんに、渋谷でお店を経営することの難しさや楽しさを中心に様々なお話を伺ってきました。

高畑なほ子さんを取材した記事はこちら

渋谷から新しい着物文化を発信

取材に行ったこの日も、様々な国の方がお店に訪れていました。

ーーほとんどのお客様は海外の方と聞きましたが、日本人の方はいらっしゃらないですか?

「日本人の方は、若い方だけではなく、年配の方などいろいろな年代の方がいらっしゃいますね。普段海外のお客様が多いので日本人の方がいらっしゃると少し緊張します。
『どうやってこの着物をアレンジしているの?』『どうして着物を切ってしまったの?』と聞かれることがあるので。そういう時は、着物が敷居が高いと感じられやすいからこそ、身近に感じられるようにアレンジしている。渋谷という街から、新しい着物の文化を発信したいという思いがあるからだと説明しています」

ーー海外のお客様が多いなかで、苦労されていることは?

「やっぱり言語ですね。英語圏の方はなんとか通じるんですけど、全く英語が通じない方とのコミュニケーションは苦労しますね。そういう時は翻訳アプリを使って出身を聞いて話を広げていったりしています。学生アルバイトの子は英語を話せることが多いので助かっていますが、着物の知識がまだないので私や年配のスタッフがフォローすることが多いです」

反応を見ることのできる面白い仕事

▲お客様にお配りしている10%オフクーポン

ーー今までで一番大変だったことはなんですか?

「開店当初、全然売り上げが立たなかったことです。コロナの影響で嗜好品が真っ先に削られて、お店を始めて半月くらいまでは売り上げが10万円にも達さなかったので。心が折れて、『いつまで続けよう』と周りの人や、一緒にお店を始めた方に聞いていました。でも『やめません』と言ってくれたので私も頑張って続けようという思いになりました」

ーーこの仕事をするうえで一番嬉しいことはなんですか?

「お客様が笑顔になってくれることが一番嬉しいです。日本にくるお客様の多くが日本が好きで来ていただいていると思うんです。そのような方に伝統的な着物を紹介したり実際に着付けたりするとやはりすごく喜んでくれて。クーポンを渡しただけでもありがとうや、明日また来ますと言っていただくこともあってとても嬉しいです。直に海外の方たちの反応を見ることができるので、すごく面白い仕事だと思っています」

着物を着る素敵な体験

ーー他のお店とコラボしていたり、これからしようと思っていたりすることはありますか?

「現在はインバウンド事業の『shibuyabai』の一環として活動していて、同じ事業の中の『wapiwapi』とコラボしています。そこでは漫画やフィギュアを販売していて、そこでワンピースのロロノア・ゾロに着物を着させました。今は”観光体験事業”を立ち上げていて、このお店、wapiwapi、shibuyabaiのバーや民泊などを循環できるような仕組みを作っています。民泊に泊まりにくる方も海外のお客様がほとんどですので、浴衣や着物を着る体験をしてほしいです。着物を着てそのまま少しどこかへ出かけるだけでももちろんいいですし、寝るときに着るだけでも大歓迎です。いろいろな方に実際に着物を着る体験をしていただきたいです。
他にも海外の方向けにワークショップの開催を考えています。渋谷に来てもやることがないという意見もあるので、簡単に作れるものでも日本の思い出にしていただきたいです」

ーー1年を通してどのシーズンが一番忙しいですか?

「4月と12月が一番忙しいです。4月は桜シーズンで、着物に触れたいというお客様が多くいらっしゃいました。12月31日はお客様が止みませんでした。気持ちが晴れ晴れして、新しい着物を手に取ってくださった方が多いように感じます」

いろいろな人の案をもとに

ーーお店の中を見せていただいてもよろしいですか。

「もちろんです。4階が縫製室になっていて、そこで実際に作成が行われているのでぜひ見てください。お店の1階にあるタイはベルトやカバンに巻き付けてご利用いただいていて、それらは全て大学生の考案なんです。いろいろな人の案をもとに作成しています。地下にはフォーマルな着物がいくつかあります」

実際にお店の中を見学させていただきました。地下には振袖が多くあり、成人式などでよく利用されるそうです。2階は主にキッズ用の着物とメンズ用品がありました。キッズ用のものは七五三で着ることのできるものや1歳・2歳向けの小さな着物まであり、全て子供が好むような色や柄をしていました。3階は土足厳禁のエリアで、実際に着物の着付けができるスペースになっていました。ご紹介いただいた4階はミシンが1つだけ置いてあり、たくさんの布やハサミなどが置いてありました。実際に作成している姿が想像できるとても素晴らしいスぺースでした。

編集後記

今回取材させていただいた中で、新しい着物の可能性を感じました。着物を切ったドレープや羽織りなど見たことがないものがほとんどで、これらを多くの外国人観光客が集まる渋谷から発信することは、日本の魅力を海外に知ってもらうことにつながるのではないかと思います。やはり海外のお客様に伝えることはとても大変そうでしたが、伝えたいことを正確に伝えようとする姿が印象的でした。に

これからのコラボ展開や、海外にどんどん広まったりすることがとても楽しみになる取材でした。

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