渋谷センター街にアーニャ出現? “シブヤキャンバス”が描く新しい街の景色

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渋谷の街を歩くとき、私たちの視界は常に飽和状態にあります。巨大ビジョンから降り注ぐ映像、無数に点滅するネオン、ひしめき合う店舗の看板と人々。あらゆる色彩と情報が渦巻くこの「雑多さ」こそが渋谷のエネルギーであり、同時に、自らの声を届けることが最も難しいエリアとも言えるかもしれません。

そんな色彩の洪水とも言える渋谷の風景ですが、通り過ぎるセンター街の入り口、ビルの側面、ふとした路地の壁面から感じる気配。なんと、街のあちこちからこちらを見つめるのは、人気アニメ『SPY×FAMILY』のアーニャ・フォージャーと仲間たち!
単にポスターを貼り巡らせただけのキャンペーンではなく、センター街周辺の13カ所で一斉に展開する『SPY×FAMILY』による「渋谷ジャック」が2025年11月22日から展開されました。これは「シブヤキャンバス」という都市の「遊休スペース」を活用するプロジェクトと、私たちの手元にある「スマートフォン」を、かつてない精度で接続しようとする野心的な試みでもあるのです。

「真っ白」ではないキャンバスに描く戦略

「シブヤキャンバス」が取り組むのは、渋谷の街の看板の隙間に残されたシャッターや、工事現場の仮囲い、あるいはビルの側面に生じたわずかな平面といった「遊休スペース」を宣伝広告やアーティストの作品紹介の場に転換するというプロジェクトです。

それも、単発の掲示では街のノイズにかき消されてしまう情報を、エリア全体をジャックすることで、通行人の意識に強制的に「違和感」と「発見」を植え付けるというアプローチ。
都市の中に眠っている、一見すると価値の低い、あるいは扱いづらいスペースを掘り起こし、それをクリエイティブの力で「特等席」に変えること。企業のプロモーションにとっても、あるいは新進気鋭のアーティストの作品発表にとっても、渋谷という巨大なメディア都市で「埋没しない」ための、極めて有効な手段になります。
雑多な街中で、確実に行き交う人々の視線を奪うことができる「舞台装置」としての機能が、シブヤキャンバスには備わっているのです。

壁面からスマホへ。0秒で作品世界と繋がる

今回の事例が特に興味深いのは、その先に用意された緻密な導線設計があるという点。
センター街でアーニャの愛くるしいビジュアルに出会い、足を止める人々。彼らの多くは、その場でスマートフォンを取り出します。写真を撮ってSNSにアップするためだけではありません。彼らは、その場から「作品の世界」へとダイブできるのです。

この渋谷ジャックは、新しい未来のテレビ「ABEMA」における『SPY×FAMILY』公式無料チャンネルの開設と完全に連動しています。スマートフォンをQRコードにかざすと、Season 3の放送期間に合わせ、Season 1から最新話までが毎日無料で楽しめるという情報が、ビジュアルと共に提示されます。
「あ、アーニャだ」と認識し、ポケットからスマホを取り出し、QRコードを読み込むとそこには既にアニメ『SPY×FAMILY』の世界が広がっている。
これまで、屋外広告の課題は、認知から行動までのタイムラグにあったといいます。街で広告を見ても、家に帰る頃には忘れてしまう。しかし今回は、街中の壁面が「サムネイル画像」の役割を果たし、渋谷の街が一瞬にしてアニメを楽しむためのプライペートな空間へと変わるのです。

シブヤキャンバスが描く、都市とコンテンツの幸福な関係

シブヤキャンバスが面白いのは、広告やアートが街のノイズになるのではなく、街を歩く楽しみになるということ。


センター街の雑踏の中で、ふと壁面のアーニャと目が合う。その瞬間、喧騒が少しだけ遠のき、手元のスマホを通じて物語の世界へと繋がっていく。そんな「魔法」のような体験を生み出せる場所が、渋谷にはまだ無数にありそうです。
そういったスペースを活用し、渋谷の街全体を「アートとプロモーションの融合する場」として進化させ、取り組みによる利益の一部を参加アーティストに還元する仕組みを導入していくといいます。今後、映像・アート・ファッションなど、さまざまなジャンルと組み合わせたプロジェクトを予定しているとのこと。センター街の「空き」がこれからどんな物語で埋まっていくのか、渋谷新聞としても追いかけていきたいと思います。

プレスリリースはこちらから。

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