
今回は渋谷新聞、そして&&のロゴを作ってくださったデザイナーの田口博基さんに取材をさせていただきました!田口さんは去年から約1年間、45カ国を回っていたそう、、
現地でのエピソードや世界一周をした経緯、また田口さんが捉えるデザインの視点について沢山お話頂きました!!
世界一周のきっかけ

ーーまず初めに自己紹介をお願いします。
&&でデザイナーをしています。前に勤めていた会社を2023年9月に退社して、2024年4月から今年の4月まで世界を回りながら、フリーランスで仕事をしていました。そのあとにここで働くことになりました。元々ここには仕事の繋がりがあったのでそれをきっかけに&&に入社しました。
ーー世界一周しようと思った経緯を教えてください。
きっかけは、前の会社をやめたタイミングで、新しい環境に身を置いてスキルアップしたいと思ったことです。初めは、語学留学として一年間海外にいくことを考えていたんですが、一年海外にいてもなかなか喋れるようにならないという話や、色んな国を回って様々な景色を見ることのほうが価値があるんじゃないかとアドバイスをもらったりもして。
その結果、スキルアップよりも、色んなことをインプットしたり人として一回り大きくなりたいと思うようになりました。あとは日常生活の中で気になったモノの写真を撮ることが多いんですけど、海外でも写真を撮りたかったので、それも含めて考えた結果ですね。
田口さんが捉えるデザインとは
ーー先ほど写真をとるのが趣味とおっしゃっていましたがどんな写真を撮るんですか?
景色を納める、綺麗な部分を写すというようなことはしていません。自分が面白いなーと思ったり街中を歩いてて見つけた・気づいた部分を写真に収めています。
ーー凄く興味深いです。具体的にはどんな写真を撮られているんですか?
そうですね、これはマンションの玄関にポツンと放置されたクマのぬいぐるみを撮りました。ほんとに日常を切り取ってる感じです(笑)。

あとこれはロエベとゴミの山、高級ブランドと廃棄物の対比が面白いなと思って撮りました。この切り取り方を前に勤めていた会社の社長に評価していただいて、海外でも撮ったほうがいいといって下さって。

これはスリランカダンブッラ石窟寺院の涅槃物の足元を撮りました。この足裏の模様は凄く特徴的ですよね。これを調べるとそこの気候や風土、宗教的背景を知ることができてすごく興味深いです。

視野を広げる・俯瞰する

ーー約1年間海外を回られて気づいたことはありますか?
日本で感じた街の汚さや空気の悪さは、海外の汚い所に比べたらまだましだなあと(笑)。日本で見る綺麗な景色や自然ももちろん良いですが、海外では想像をはるかに超える絶景に出会えました。特にマルセイユの夕焼けなんかはとても綺麗でしたね。
もうひとつは自分を俯瞰して見つめなおすことができたことです。
沢山の国を訪ねて色んな人・景色に出会って。地球儀感覚で自分を上から見ている感覚になったというか。地球はとても大きくて丸いけれど自分はその中でただ生活している一人の人間に過ぎない。そんな感覚ですね。
ーーなんだかとても深い、、田口さんは海外での体験をYoutubeに投稿されていますよね?
はい、記録のような感じで残しています。旅での生活を動画で収めたことで自分の表情や口癖、しぐさを良く知ることができたのはすごい良かったと思っています。この時もっと楽しそうな表情すればいいのに、とか声もっと張れないのかななんて思ったり(笑)。実際旅をするなかで言語が通じなくても笑顔や身振り手振りでコミュニケーションが取れていたことが多かったと思います。特に笑顔が大事です!というのも、恐る恐る真顔で話しかけるよりも、笑顔で話しかけた方が、よく話を聞いてくれる方が多かったです。
youtubeチャンネル▶︎https://youtube.com/@hirotagumakers?si=r3VJEhmS6inRJByk
ーーええ!驚きです。言語が喋れる前提で旅をするものだと勝手に思ってました。
そんなこともないと思いますね。あとは人相が大事だと思います。ほんとに沢山の人と出会って、この人いい人そうだなとか悪そうだなとかわかってくるんですよね。
人相はその人の経験してきたこととその結果が顔として現れてくるから人生で沢山笑って来た人は凄くにこやかな表情をしている。それと逆に悪口や文句ばかり言ってきた人は凄くネガティブでマイナスな印象を受ける。そんな話をきいてやはり大切だなと思いましたね。
ポジティブに変換する

ーー田口さんはこの旅を通じてなにか身の変化はありましたか?
そう言われて考えてみると、特になにか劇的に変わったことはないですね。一つ挙げるなら、“何事もポジティブに考えられるようになったこと”だと思います。
旅をしていると嫌な想いもたくさんするんですよね。でも、そこでずっとその気持ちを引きずってても旅は続くし、その度に下を向いていたら前に進めなくなっちゃいます。なので、嫌なことがあっても、すぐポジティブに変換する力がつきました。
ーーなるほど…!何か具体的なエピソードなどありますか?
普通の生活をしていたら、仕事してご飯たべて、寝るというような決まったサイクルがありますけど、海外での生活はそんなに上手くいくようにはいきませんでしたね。例えば、ネパールの山小屋に泊まったときなんかは、虫がたくさんの部屋の中で寝なくちゃいけなくて・・あとはインドのタクシーで当たり前にぼったくられたり、エジプトで仲良くなった青年に現金盗まれたり(笑)。そういう経験って、日本の生活軸の中では良くも悪くもできないですよね。
だからこそ、どんな経験がふりかかってきてもずっと引きずっているわけにはいかないし、“自分自身で上手く切り替えて考えていく”っていう力を養うことが出来たように思います。出来事を受け入れて、「しょうがない」と思うしかないんですね。その後どうするかだと思います。これは変化というより“自分が変わるためのきっかけ”を掴んだというような感覚ですね。
ーー最後に大切にされているモットーや考えがあれば教えてください。
旅をしながら考えていたんですけど、やっぱり改めて感じたのは日常的に楽しい、面白いって感じることより、何かを成し遂げたときに感じる達成感が自分にとって一番大事だなと思いました。なので、これからも短期的な楽しさというより、大きな課題に向かって挑戦して、それを解決できたときの快感を求めてやっていきたいですね。あとは、シンプルにいい人相で死にたいです(笑)。
インタビューを終えて
自分はなにもかも、求めすぎていたのかもしれない。
お話を聞いて真っ先に頭に浮かんだことがこれでした。世界一周というと、凄く壮大なことのように私は思います。旅をした後には自分が別人のようになって帰ってくる、そんな感じのイメージです。ですが実際にお話を伺うと、田口さんは劇的な変化はなかったと仰っていました。自分を変えるきっかけにすぎないと。そもそも自分を劇的に変える方法などないのかもしれません。少しずつ少しずつ、人間は思考や身体を形成されて大人へと、自分らしい姿へと、成長していくのかもしれません。赤ん坊からいきなり大人へと変わる人間はいません。
心も同じで急激に変わるなんてことはないのだと思います。無理に変わる必要はない。ありのままの自分と今の状況を受け入れて、目先のことよりもっと遠くを見つめる。
今回のお話を通じて、自分自身を見つめなおすことができたように思います。一歩ずつ一歩ずつ、楽しみながら私も挑戦していきます!!
◾️田口博基
1992年9月28日生まれ、埼玉県出身。デザイナー。
◾️受賞歴
Japan Typography Annual 2024入選
ADC 2022 CI部門 入選
NOVUS FUTURE DESIGN AWARD 2021 最優秀賞
TOKYO MIDTOWN AWARD 2018デザインコンペ入選
◾️旅で見つけたデザインまとめ
◾️Portfolio