自分の個性を着物にのせて 着付師 高畑なほ子さん

着物は世界に誇る日本の文化です。

内面からの美しさを引き出してくれる着物は、四季に合わせた柄や自分の個性を表現できる良さがあります。最近では成人式や結婚式などの晴れの日くらいしか着ることがなく、種類の多さや自分で着ることの難しさなどから「着物を着るのはハードルが高い」といったイメージを持っている人も多いと思います。文化庁の調査によると18〜20代、30代、40代全ての年代で「今まで着物を着たことはない」との回答が60%を超えています。
筆者(取材当時高校3年生)もこれまで着物を着たことはありませんでした。
渋谷で活動する着付け師の高畑なほ子さん(以下高畑さん)は、そんな着物のイメージを変えるため、SNSでの動画投稿や着付け教室、会社の起業など多岐にわたる活動をされています。今回は高畑さんに着物との出会いや大切にしている考え方などを取材させてもらいました。

▲(左)成人式の時の写真、(右)ご子息の七五三の写真

人生を変えた真っ赤な振袖

ーー高畑さんが着物を好きになったきっかけを教えてください。

「成人式のために呉服屋さんへ行って、着物を選んでいるときに和柄の美しさに惹かれてしまって。それがきっかけです。

成人式の時はちょっと反抗期だったというのもあり、親に勧められた着物ではなく赤色の古典的な振袖にしたんです。今思うと、お花柄とかの着物を着ればよかったなぁと思ったりもします。けれど後悔は全然していないです(笑)」

ーー高畑さんの考える着物の良さは何だと思いますか。

「そうですね、やっぱりメッセージ性の強さかなと思います。日本特有の四季に合わせて柄や小物類を選んだり、行く場所によっても変えてみたり。そういう楽しさがあるのが良さだと思います。

着物の魅力は実際に着てみないとわからないので、是非体験してみてほしいです」

ーー着物の種類や着方の多さなど、着物はやはり敷居が高いな。と感じているのですが、高畑さんはこの敷居の高さについてどう感じられていますか。
確かに着付け教室の先生とか、ちょっと間違えたりとかすると怒られちゃうみたいなイメージありますよね。実際に私も着付け教室の先生に教えてもらったんですが、先生が怖かったです。けれど「型破り」って言葉があるように、そこで基本(型)をしっかりと学べたから今の自由な発想につながったと思います」

 

SNS発展の光と影

ーーSNSが進歩するにつれて、着物業界はどのように変わっていったのでしょうか。
「良い面と良くない面がありまして、良い面としては色々な着物の着こなし方を誰でも知れるようになったことです。私は、様々な着物の着こなし方に個性を出していったほうがいいと思います。その反面、これまで多かった呉服屋さんが次々と廃業してしまったことが良くない面、というよりは悲しいですね。これまで着物を買うとなったら、みんな呉服屋へ行っていたんです。しかしSNSの発展や古着のブームなどが追い風になって、リサイクルショップやレンタルショップに多くの方が流れてしまったんです。その影響で、呉服屋さんとか新しい反物を作る場所がどんどんなくなっているというのが現状です」

ーー高畑さんは、今後SNSとどのように向き合っていく予定ですか。
「私が好きな着物、私らしいスタイルの着物をどんどん発信していくつもりです。そこで共感してくれる方たちがいらっしゃれば、レッスンにきていただいたり、一緒に着物業界を盛り上げていければと思っています!」

ーー自分らしさを大切にしているのですね。高畑さんらしさとは何だと思いますか。
「まずはたくさんの人に着物を着ることの楽しさを知ってもらい、そこから自分の好きなスタイルを見つけていってもらうことが喜びでもあり、私らしさに繋がっているんだと思います」

 

こんな事になるとは思わなかった2020

ーー続いて、高畑さんが代表取締役社長を務める株式会社Minoriについてお聞かせください。
「事業内容としては、着付け教室や出張着付けなどです。あとは、小中学校へ行って着物についての講演会などをしています。また日本の人だけじゃなく、海外の方々にも是非教室に参加してほしいという想いで英語で[Minori]と表記をしました」

ーーコロナ禍でMinoriを起業したと聞いたのですが、大変な時期に起業した理由を教えてください。
「2020年3月に起業をしたのですが、正直あそこまでコロナの影響を受けるとは思っていなかったです。着付け教室を始めたいけど始められない、イベントを開催したいけど開催できない。何もできなかったです。けど、それがあったからSNSへの理解を深められたとも思います」

 

▲渋谷センター街にて(右は筆者)

 

日本の中心で新たな挑戦

ーーシブヤツムギについて教えてください。
「渋谷センター街の中心にある「ギュット」という建物で、外国人観光客向けに着物の着付け体験をしたり、着物をリメイクしたお土産を販売しています。シブヤツムギは、「shibuyabai」というインバウンド事業の一環として行っています。

そのため今は観光客が多いですが、ゆくゆくは若い子たちにも気軽に着物を着てもらって、日本文化の良さを知ってもらえる場所になればと思っています」

ーーシブヤツムギの良さを教えてください!
「シブヤツムギの良さは、日本だけじゃなく世界全体に向けて発信できる条件が揃っているということです。渋谷の真ん中に位置していますし、着物に興味を持ってくれている人も多くいると確信しています。

また多種多様なバックグラウンドを持った大人をはじめ高校生や大学生など、本当に多くの方が関わってくれているので、多角的な意見が出せるのが良さでもあり強みです。今はワクワクしかないですね」

 

▲シブヤツムギで販売している大島紬をリメイクした雑貨

ーーこれからの着物業界にどうなってほしいと思っていますか
「難しい質問ですね(笑)。着物のハードルの高さは依然としてあるので、着物良いなと思ってくれる人が気楽に始められるようになればいいなと思います。そのために、私は着付け教室や講演など、着物と触れられる環境を作っていこうと思っています。その上で、「着物を着ることで楽しみが増えるよ」ということを伝えて広げていくつもりです。着付け教室をやる上で、生徒さん1人1人にあった着物の着方や着姿を見つけていってもらうこともとても大切にしています」

 

 

編集後記
今回の取材では、高畑さんの着物に対しての愛情や今ある課題を見つけ出す力を強く感じることができました。取材中でも強調されていた「自分らしい着物の着方」というフレーズは、着物の着方だけでなく日々の生活においても大切なことだと思います。SNSが発展した現在、自分の意見をしっかり持つことはとても大切でとても難しいことです。自分の意見を持つためには、正しい知識とその中で自分なりの着眼点を見つけ出すことが必要です。それらは決して簡単ではありませんが妥協せず、「自分らしさ」を見つけていきたいと思えた取材でした。

 

◾️株式会社minori https://www.minori-wa.com/

       Instagram https://www.instagram.com/minori.kimono 

◾シブヤツムギ   https://www.instagram.com/kimono_shibuya?igsh=Y2VubGVwdDhwbTRh 

◾️高畑なほ子 略歴

2000年 東京文化短期大学卒業

卒業後、2003年〜2018年 クリニックや病院にてクラーク業務に従事。

2018年よりリユース着物「たんす屋」にて着物のコーディネーターを経て、

2020年3月に株式会社Minoriを開業。Minori着付け教室を主宰。

着物の仕入れ販売・コーディネート・イベントでの着付(成人式や冠婚葬祭等)・

中学生へ職業講話などを行う。

資格:日本和装教育協会師範

   日本理美容福祉協会車いす着付師

   古物商

 

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