人間とAIの協調を目指して ーAIで渋谷、そして日本で新たな価値を創出 現役東大生池田蒼さん

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現在、東京大学1年生で、生成AIを活用したソリューション開発に携わる池田蒼さん。高校時代には、生徒会長として学校内の改革に取り組み、学校外でも様々な活動を行い数々の賞を受賞してきました。私、日野将英にとって高校の先輩である池田蒼は憧れの存在であり、この渋谷新聞を知るきっかけになった人。渋谷への想いや今後の展望について、渋谷新聞3周年イベントの公開取材にて伺いました。

プログラミングとの出会い

ーーまずは今までの経歴について教えてください。

高校時代には「学校をより理論の通ったものにしたい!」という想いから生徒会長を務めて色々な規制改革を進めてきました。その中で生徒の声が届きやすいようなオンライン目安箱の開発などを行いました。また、高校の仲間たちとともに日本経済新聞社主催の「日経STOCKリーグ」に参加し、高校部門優秀賞受賞を果たしました。そこで知り合った方に紹介していただき、渋谷では「まなぶやカレッジ2023」に参加しました。初めて知り合った仲間たちと紆余曲折を経ながら優勝する事ができました。これらの経験から経済の魅力を知り、今年春には東京大学の経済学部に推薦入学する事となりました。

ーー今まで多岐にわたる取り組みをされてきたのですね。大学入学後の現在はどのような事をされているのですか?

教養学部に所属し経済学部に進学する予定なのですが、最近はもっぱらAIに興味を持ち出して、 東京大学のAIサークルを立ち上げ、「AIをみんなで学ぼう!」というような活動をしていますね。現在はAI技術を売りにした人材紹介や、起業の計画をしている段階です。

ーー現在はAI技術を核とした活動をしているということですが、どのような経緯でIT領域に興味を持ったのでしょうか?

中学3年生の時に初めてプログラミングに興味を持ちました。コロナ禍で全く授業なし、登校なしっていう状態になった時に、何かやってみようって事でプログラミングを始めてみたんです。

そこからhtmlやCSS、JavaScriptなどを学んで、「こういう風に動くんだ、ちょっとゲーム作ってみたいな」というようなところから、コンピューターの面白さに気付きました。特に書いた通りに動いてくれる所が面白いなっていう風に思いました。

高校で生徒会長を務め、 学校の改革を進めていこうと考えたときにこのプログラミングで培った考え方や技術が活きてきたと感じています。例えば高校で生徒の意見を回収するためのオンライン目安箱を実装したことですかね。生徒が学校に対する意見を提起したら、それがネット上に表示され、生徒みんなで議論できるSNSのようなものをつくり、デジタル民主主義を実現しようと目指していました。コメントで議論するという部分は学校の規制によって実現できませんでしたが、それ以外の部分は日野くんなどみんなに手伝ってもらいながら実装させることができました。

▲取材に答える池田さん

AIの社会実装と現在の取り組み

ーー高校時代のプログラミングの活動から、大学生になってなぜAIに関心を持ったのですか?

東京大学には、日本で最先端のAI研究をしている研究所のひとつ松尾研究所があります。東京大学グローバル消費インテリジェンス寄付講座という無料講座で松尾研究所の講義を受けたのが、僕とAIとの出会いですね。また、東京大学では1、2年生は教養学部生として様々な授業を受ける事ができるんですよね。そこで言語構造論という講義を受けました。言語をどういう風に数学で置き換えて計算していくかというような内容のもので、「あれ、ちょっとこれって面白いな」という風に思ったんですよ。具体的には、皆さんご存じのchatGPTとかあると思うのですが、chatGPTは計算して確実に答えが出るコンピューターでありながら、不安定な要素をはらんでいる言語も用いる。僕はその点に興味を持ち、それを基にしてLLM(大規模言語モデル)の研究をしていきたいなと今は考えています。

ーー言語とAIの関係性についてですが、どのような場合に活かす事ができると考えていますか?

現在、僕は渋谷にある企業でインターンをしています。そこではお客様の声をもとに、どのようなプロダクトを提供できるかというところを考えていて、一部プロジェクトでは社内起業という形で仕切らせていただいているものもあります。その中で特に面白いと感じたのがAIによる小テストの作成と添削です。小テストはほとんどの学校で行われていると思いますが、ほとんどの小テストは先生が自作しているものであり、仕事の負担を大きくする要因となっているため、AIが役に立つと考えました。このAIの機能について具体的に説明すると、 教科書をまず読み込ませて、その教科書の何ページのこの部分の理解を確認する問題を作ってくださいみたいな指示を与えると、その範囲の内容をAIが理解し、それに対する適切な問題を作ってくれるものです。

▲東京大学入学式に臨む様子

これからの渋谷について

ーーこれまで池田さんが渋谷で取り組んできた事を教えてください。

僕自身、この渋谷には色々関わりがあって、昨年の「まなぶやカレッジ」では、渋谷のゴミ問題に取り組みました。ゴミの散乱を防ぐためにゴミ箱を設置すると、ゴミの回収や管理・維持にとんでもない費用がかかるんですよね。そこで、ゴミ箱にサイネージ広告をつければよいのではないかと考えました。渋谷には多くの広告が設置されていて、需要があるため、広告を設置した企業にスポンサーとなってもらう事で維持や管理を可能にするという新しい広告のモデルでゴミ箱が活用できるんじゃないかというビジネスモデルです。このアイデアで、昨年の「まなぶやカレッジ」で優勝させていただきました。最終的にはこのアイデアの実現は断念しましたが、この経験を通して、この渋谷の街は外国人観光客を含めた多くの人に受け入れられるようなものを作っていく事が大事なんだという様に考えるようになりました。また、「まなぶやカレッジ」ではチームメンバーと色々問題はありましたが、みんなで意見を出し合っていく中で、話し合って考えていく場はすごく大事なのだとも改めて思いました。

ーーこれから池田さんはどのような事に取り組んでいきたいと考えていますか?

現在は大学でAIの技術を学んで研究して、そして、例えばSNSのマーケティングの自動化を生成するAIなどの機能の実装をインターンで手伝いつつ、今起業の準備を進めているところです。これからは、デジタル全般に取り組んでいきたいと考えているのですが、その中でデジタルを活用して、人がやらなくてもいいような単純作業とかをAIに代替させていきたいという軸が僕の中にあります。

僕は、人間は様々な人と関わりながら新たな価値を創出していける、つまりクリエイティブなところができる点が強みだと考えています。近年、AIに人間の職が奪われるのではないかとよく言われますが、そういった極端な話ではなく、人間とAIが協調していくような社会をつくる事に貢献できたらなと考えています。

▲取材後の池田さん(右)とライターの日野(左)

編集後記

今回のインタビューは高校時代の先輩であった池田さんの現在の思いを聞く事のできた良い機会となったと思っています。高校時代から様々な事に取り組んできたことは知っていましたが、大学入学後にそのスケールが大きくなっている事に気づき、衝撃を受けました。激動の現代の社会をどう生き抜いていくのか、池田さんのように私もそれをしっかりと考えて人生の新たなステージに進みたいと思います。

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