温かい渋谷の街で愛され続ける「吉沢利工」四代目 吉沢尚さん

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道玄坂とマークシティーに囲まれた三角地帯の道玄坂二丁目。

駅からも近く、所狭しと雑居ビルが立ち並び飲食店がひしめくこのエリア。その中に周りの店とは少し違った雰囲気の、ガラス張りのショーウィンドーに工具が並び人々の目を引く路面店があります。そこが今回取材にお伺いした「吉沢利工」さん。明治43年創業の老舗大工道具専門店です。

四代目の吉沢尚さんにお話を伺いました。

 

明治時代から渋谷一筋で四代目

「うちは明治43年創業。俺で四代目なんだけど、創業当初の話はあまり知らなくてね(笑)。曾曾祖父さんが大工道具の専門店を始めたって聞いていて、当時は職人さんも店にいたりしたそうだよ。その時はまだ平屋で戦争の時には全部燃えちゃってね。また一から建て直して、その後は木造の二階建てにして、一階で商売をして、二階でみんなが暮らしていたわけ。」

 

 

「俺は別の地域に住んでたからここが婆ちゃんの家だった。渋谷は当時からデパートなんかがあって都会に遊びにくるのが楽しかったよ。今のファイヤー通り辺りには釣り堀なんかもあったりして、よく連れて行ってもらってね。全然釣れなかったなぁ〜(笑)。」

そう話してくださる吉沢尚さん。代々この場所で大工道具店を営み、今もご夫婦でお店に立たれています。

 

 

「婆ちゃんはつい最近100歳で亡くなったんだけど、それでも数年前までは店に立っていてね。その婆ちゃんがいうには、昔はこのあたりは雑木林で何にもなかったらしいよ。俺が小さい頃は八百屋とか普通のお店が沢山あったんだけど……。今は古いお店がなくなって、うちも35年ほど前にビルに建て替えて飲食店が入ったりして、今じゃ周りが全部新しい飲食店だ。なんだか、取り残されちゃったなぁって気がするよ」

少し寂しそうに、変わりゆく街並みについて語られていました。

 

扱う商品は1万点!? 年間400本売れる金槌も

ーー吉沢さんの周りの方は定年退職されている方も多いようですが、それでも尚、この場所でお店を続けていく理由、原動力はどんなところにあるのでしょうか。

 

「お店があるっていうのは、信用を得られるよね。今はネットのお店なんかも多いけど、実店舗があるって取引先もお客さんも安心できるんじゃないかなって。あとは、職人さんも今欲しいみたいなのあるでしょ?そういう時に買いに来てくれる人は多いからね。うちでしか置いていないようなものもたくさん取り扱っていて、大道具さんなんかが使うカナヅチなんかも、取り扱いが少ないから年間400本くらい売れちゃうんだよ」

 

 

そう話しながら、お店にあるものをいくつか紹介してくれますが、取扱商品数はどのくらいなのでしょう?ところ狭しとたくさんの商品があり、どれがどこにあるか、何に使うのかを把握するのだけでも大変そうです。

「取扱商品数は数えたことがないし、考えたこともなかったね!うーん、1万点はないんじゃないかな。でもそれに近いものはあるよ。ヤスリやネジ一つでもものすごい種類があるからね。」

また、最近はどのようなお客様が来るのですかと尋ねてみました。

「最近はDIYを趣味で始めるアマチュアの人が増えてきたね。またコロナの影響なのか、職人さんへの転職者なんかも良く来てくれて、使い方とかの相談なんかも多いんだ。俺は職人ではないけど勿論一通り道具は使えるし、ちょっとした家具なんかは作れるよ。」

インタビュー時にお借りしたお店のレジテーブルや棚などは吉沢さんの手作りで、その完成度の高さに驚かされました。

都会でも人の温かみが感じられる街

最後に昔から渋谷を見てきた吉沢さんが思う〝渋谷の好きなところ〟と〝これから渋谷がどんな街になって欲しいか〟を聞いてみました。

 

「渋谷って都会になっちゃったけど、下町っぽい側面もあって今でも商売する者同士が仲が良いんだよ。町内会とかが活発で、人と人とが温かく繋がってるんだよね。お祭りとか餅つき大会、盆踊りなんかもやるんだけど、神輿担ぐのも昔からの人と新しい人とで仲良くやるんだ。ビルなんかも多くて、人の出入りも多いけど、新しい人との出会いがあって楽しいよ。狭い地域だからこそ、顔を合わせることも多いし仲良くやりたいもんだよね。こんな時代だしさ」

 

 

「再開発とか、新しい人が来る街は嬉しいけど、ビルだらけの無機質な街にはなって欲しくないね。大通り沿いは最新!でも一つ路地に入ったらうちみたいな昔ながらの店がある。そんなのが良いね~。すべて新しくする必要はないんじゃないかな~。」

ますます進化を続ける渋谷。〝COOL JAPAN〟の象徴であり、若者はもちろん外国人観光客が絶えない街です。そんな渋谷のCOOLなところは、高いビルやネオンの光だけでなく、吉沢さんのような温かい地域の人たちによって作り出されるものなのかもしれません。

 

◾️吉沢利工

〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2-6-12 道玄坂トロワービル

WEB http://yoshizawa-rikou.sakura.ne.jp/

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