渋谷で生まれる共創のかたち vol.04「渋谷の未来に、余白とバトンを渡すということ」

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渋谷のセンター街で働き始めて20年以上、毎朝、掃除をしながら街を歩き、昼は商談をし、夜は防犯パトロールや商店街の会合。渋谷の空気を、肌で、足で感じてきたこの年月のなかで、「渋谷計画2040」というワーキンググループに参加することになりました。
このプロジェクトは、2040年に向けて渋谷をどうしていくかを、渋谷に関わるいろんな人たちで考えていこうという取り組みです。行政、ディベロッパー、観光、文化、地域の人たち、そうそうたる顔ぶれの中に自分がいることは、正直に言って、嬉しいし、誇らしいです。
渋谷の未来を語る一人として選ばれた、そのことに、ものすごく大きなワクワク感と責任を感じています。

おじさんだらけで未来をつくるのは危ない

参加してすぐに思ったのは、「これ、おじさんだらけだな…」ということ(笑)。
もちろん、経験も実績もある方々ばかり。でもこのまま同じ目線だけで2040年の渋谷を描いてしまうのは危険なんじゃないか、という思いが湧き上がり、若いメンバーや女性の声が絶対に必要だと思いました。
なので、今回、うちのチームからも若いメンバーも参加してくれています。最初は戸惑いながらも、「今はインプットの時期」と言って、会議で真剣に耳を傾けてくれています。「現状は参加して聞く側だけど、いざ自分たちがメインになるときに、今のインプットがすごく役立つと思う」とメンバーも話してくれて、一緒に参加してよかった。これこそ、未来への土台作りになると思いました。

つまり、私たちが今すべきことは、「前に出続けること」じゃなくて、「次の世代に場を開いていくこと」だと思っています。2040年というと今から、15年後、60歳近くなった自分たちがまだ前に立っていたらそれはちょっと違うと思うんです。だから今、バトンを渡す準備をして、将来を担う人材を育成しているような感覚です。

渋谷の“面白さ”が、減ってきている気がする

最近、「渋谷って、なんかつまらなくなったよね」と言われることが増えました。
それは私も実感しています。

かつての渋谷には、路地裏のライブ、個性の塊みたいな店、壁の落書き、ストリートカルチャー…いろんな“想定外の出会い”が転がっていました。でも、今の渋谷にはその余白が減ってきています。現実問題、今は、やりたいことがあっても、やれる場所がない。文化が生まれる余白がなくなってきているなと。それが、いま一番危機感として感じていることです。

いわば、“スキマ”が再開発のなかでどんどん消えているような気がするのです。
文化って、「つくるぞ」と思ってできるものじゃない。
自然発生するものであり、勝手に育っていくもの。
だからこそ、その“土壌”を残していくことが、今の私たちの役割なんじゃないかと思っています。

渋谷センター街の鈴木大輔として認知されてきた

渋谷で仕事をし続けてきた自分にとって、強みをひとつ挙げるとしたら、「いろんなジャンルに関わっている、多面性のある仕事をしているということ」です。
不動産の仕事だけじゃなく、商店街の活動、イベントの企画、学生のサポート、メディアの発信、いろんな顔でこの街と関わっている。そのおかげで、「人と人をつなぐ」ことができる立場に次第になってきたと感じています。

最近では、「大輔さんに相談すれば、場所もあるし、人もいるし、実現までが早い」と言っていただくことが増えてきました。大手なら半年かかるような企画も、2〜3週間で走らせられる。それは、ずっと現場で渋谷という街に根付いてきた自分だからこそのスピード感なのかもしれません。

そう言ってもらえることが増えて、気がつけば、名刺交換もこちらから行かなくても相手から来てくれるようになったほど。点が線になり、やがて面になっている。そんな広がりを、ここ渋谷で感じています。

渋谷を一過性じゃなくて、“また来たくなる街”にしたい

今の渋谷はインバウンドの旅行者が多く訪れています。でも、実はリピーターが少ないのが課題です。
「ハチ公や渋谷SKYで写真を撮ったら終わり」というところがあり、それはやっぱり寂しいところ。訪れた人が、“また来たい”と思ってくれるには、そこに“生きている文化”が必要です。イベントでも、アートでも、人との出会いでもいい。何かしら、記憶に残るような体験を提供できる街でありたいなと思います。

だからこそ、“渋谷でしかできないこと”は何かを考え、どんどん生み出していく必要があるなと思っています。渋谷の街の面白さって、決して一つじゃないんです。雑居感、スピード感、人の多様性、全部が混ざって渋谷という街になると思うんです。

私はずっと、渋谷で不動産業からスタートし、一歩ずつ地元に根ざして仕事をしてきました。
私たちの世代が築いてきた“渋谷の土台”を、次の世代がどう使っていくか。そのための仕掛けや余白を残していくことが役目だなと感じています。渋谷を、面白く、自由で、ワクワクする街にしていきたい、そんな未来を描いていきたいと思います。

渋谷の魅力は、“多様な人と、自由な空気と、想定外が起きる余白”。それを残しながら、次にバトンを渡せるように、これからも一歩ずつ、動いていきたいと考えています。

鈴木大輔のこと、プロジェクトについてもう少し知りたい方はこちらをご覧ください。▶︎▶︎▶︎https://daisuke-shibuya.com/about/

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