人としての信頼感が仕事を生む フロンティアインターナショナル 古井貴さん

皆さんは好きなアーティストやスポーツのイベントにいったことがありますか?
イベントはステージ上のアーティストだけが注目されがちですが、音響・照明・映像・特殊効果・運営など、多数の裏方がいて、それぞれの役割を果たすための準備は膨大な時間を要し、数百人、時に数千人の人々が支えているのです。

株式会社フロンティアインターナショナルは「未体験を開拓し、すべての人の経験にする」というコンセプトを掲げ、そのような人の心を動かすリアルなイベントプロモーションを中心に「体験」に関わる様々な事業を行っております。

今回取材させていただいた古井貴さん(以下古井さん)は株式会社フロンティアインターナショナルの常務取締役、さらにグループ会社である株式会社フロンティアダイレクトの代表取締役を務めています。

創業メンバーとして何を大切にしてきたか、今後の展望についてもお聞きしました。

可能性を信じて、会社を起こした大学時代。

僕が大学生だった1980年代後半は、日本はバブル経済の真っ只中で、日本企業は自信と活力に満ち溢れ世界を席巻しておりました。

そして、多く企業が積極的に大学生に働きかけた時代でした。

大学生は、それまでの高校生から比べて消費力が格段に上がるため、メーカーにとっては最初の顧客で、囲い込むことが成功すれば、生涯指名買いしてくれる可能性を秘めた重要なマーケットでした。

また、当時は、新卒採用は空前の売り手市場でしたので、いち早く大学生を取り込むことは、企業の人事戦略上、極めて重要なテーマでした。

その頃は、スマホはもちろん携帯もなく、ポケットベル普及前夜のような時代でしたので、大学生と接触するには、大学生が集まるイベントくらいしかなく、そんな大学生イベントを主催する学生団体が非常に貴重でした。

そんな中で、若者を集める動員力や、企画力を自負するメンバーが集い、学生団体フロンティアが立ち上がり、様々な学生ベントを仕掛けていきました。その後、広告代理店など企業からの仕事の依頼を受けるようになり、1990年に株式会社フロンティアインターナショナルとして起業することになりました。今も創業時のメンバーは多数残っております。

しかし、その直後、バブル経済が崩壊し、景気が一気に悪化しました。ただ、我々にとってはむしろ好機でした。「成果を上げないと稼げない」厳しい経済環境の中で始まったため、自らを鍛えることができたからです。

究極としては、人としての魅力が大切なんです。

我々はわかりやすくいうとプロデューサーという名のリーダーを育てる仕事を目指しております。
AIやロボットが仕事をする時代になってまいりましたが、人々を集めて感動を生み出す「リアルな体験イベント」を創造するという仕事は、たくさんの専門家やスタッフの力を結集して実現します。

それらの人々をまとめる仕事は人じゃなければできません。

そんなプロデュース業務(プロジェクトマネジメント)が当社のサービスの軸であり、全社員がプロデューサーを目指す組織なのです。

プロデューサーは、自分にないスキルを持っている人に色々教えてもらいながら、多くのスペシャリストを束ねるのが業務の中心です。

ただ、 自分が個々の業務の知識も技術もないと、現場の苦労も理解できませんし、品質管理ができません。広範囲の知識とネットワークが必要となります。また、世の中にないものを仕掛けたいという依頼が多いため、実現の可能性と価格の妥当性を天秤にかけて、様々な専門家と相談しなければなりません。

リーダーが素人では、専門家と渡り合えませんが、最後は信じて任せないとなりませんので、人間的な信頼関係が重要になります。

これからの時代は、こうしたチームをまとめるリーダーの役割が、とても付加価値の高い仕事になります。うちの会社ではチームをまとめるリーダーが務める人、つまり人として信頼されることを最重要な要素として意識しております。

指導者が語る、信頼される方法とは。

イベントを発注するクライアントとそれを運営する現場は、承認する側と承認してもらいたい側です。基本的には相対する立場にあるのです。

時間と予算と人手は、できるだけ減らして効率を上げたいクライアントと、あればあるだけ嬉しい現場の違いです。

良好な関係が築けている場合は、双方の立場を尊重して、ちょうどいいところで落ち着くのですが、仕事は順調なことばかりではないので、時に信頼関係が崩れることもあります。

異なる立場の齟齬は日常的に発生しやすいのですが、間に立つプロデューサーが優秀ならば、双方の事情を論理的に、時に気持ちを込めて、どちらに対しても誠実に向き合うことで、信頼関係を維持することができます。

逆に、立場が異なるクライアントと現場に齟齬が生まれた時、眼の前の相手の応じて微妙にニュアンスを変えて、相手に寄り添うふりをすることをせず、常に、誰に対しても同じように伝わるように心がけており、相手によって言うことを変えないことは、誰に対しても等しく誠実であること。と考えております。

コツコツと地道に積み上げていく、会社も自分も。

新型コロナが流行った時期に、イベント会社は風前の灯火でした。しかし、ワクチン接種のニュースを聞き、多くの国民にワクチンを打つとなったら膨大なリソースが必要なると考えました。

日本中で会場を探し、受付を設置し、スタッフや電源を確保し、滞りなく運営する・・・まさにエンタメのない大型イベントでした。

我々はプロジェクトをすぐに立ち上げて、全国の保健所と自治体にDMを発送し、ワクチン接種会場の提案をしました。結果としては、わずか4件しか受注できませんでした。しかし、そのわずか4件で身につけた ノウハウが、その後大きく開花することになります。

自治体や保健所での接種の後に、政府は民間企業に協力を求め、半年後ぐらいに職域接種がはじまりました。

職域接種は、社員が数万人もいる会社では、万単位の参加者の大型イベントのようなもので、そこでは、4件の受託で身につけたノウハウを生かすことができました。

コロナ禍のワクチン接種を中心とした各種公共系ビジネスに関しては、どんな逆境にもビジネスチャンスがあるという狙い以上に、緊急事態において誰かがやるべき仕事として、我々の得意分野で社会に貢献するというスタンスでの臨みましたが、結果としては、オリンピック需要と合わせて過去最高の売上になりました。

先生に感謝を伝えよう〜教師の日を日本中へ〜

※教師の日…UNESCO(国際連合教育科学文化機関)が制定した記念日。

日頃お世話になっている教師に、日頃の感謝の気持ちを伝える日。

日本では渋谷区からスタートしました。
現在も、当社内に、一般社団法人「教師の日」普及委員会に事務局を設置して活動を継続しております。

教育ベンチャー起業家の松田悠介氏が「教師の地位をもっとあげたい」と相談されたことが始まりで、会社の近くの広尾小と、加計塚小の2つの小学校から始まりました。
初年度は、ありがたいことに、ニュースや新聞などに取り上げられて、そのニュースを見た、全国の生徒やPTAが賛同して活動をしてくれました。

こうして情報が広がることで、少しずつではありますが、全国に広まりつつあります。ただ、油断することなく毎年火を絶やさずに、活動を続けております。常に情報を発信し続けること。これが大切なんです。

「教師の日」は先生にとってのモチベーションが上がる機会になりますが、実は子どもたちにとっても、自分が書いた感謝の手紙で先生を喜ばせることができたという成功体験になり、「人に感謝を伝える」ことの素晴らしさを実感できる良い機会になります。先生と子どもたちの双方にとっても素敵な体験創造の機会になるのです。

私は、今でも毎年母校の先生一同宛に花束とメッセージを贈り続けております。

もはや校長先生は私より年下ではありますが(笑)、母校の出身者が全国に「教師の日」を広める活動をしていることを知って、喜んでくれていると思います。

渋谷で未体験を開拓するフロンティアインターナショナル

僕は渋谷区在住・在勤なので、渋谷区に貢献したい気持ちは大いにあります。
これまでは、109の前の道路を封鎖して行う夏の盆踊りや、ミヤシタパークやスクランブルスクエアの開業イベントをやらせてもらったりしました。渋谷区で色々なイベントを運営してきた経験から、今でも色々な企業の方が依頼をしてくれています。

教育の面で言うと、渋谷区の中学生向けの「e-sports部」という部活動の立ち上げをお手伝いいたしました。渋谷区の区立中学校は8校しかなく、各校の生徒も先生の人数も少ないため指導者や設備の課題があります。そこで当社のスタジオに高速回線を敷設し、機材と講師を手配し、8校から部員に集まっていただくようにいたしました。
これまでの信頼関係や人間関係、ネットワークがあればスムーズに物事がうまく行くと思っています。そう言った意味で実績が実績を呼ぶので、今後も様々な形で渋谷と関わっていくと思います。

インタビューを終えて

当たり前の事を当たり前にできる。文字通り簡単なことのように思えるけど、とても難しい。その当たり前の事を続けてきた古井さんはとてもかっこよく見えたし、「これが大人の余裕なのかなぁ」なんて思った。僕も古井さんのような、余裕のあるかっこいい人になりたい。大人になるにつれて、当たり前の事を注意してくれる人なんていなくなる。自分が大切にしていることを信じて、人にも自分にも嘘を付かないように生活していこうと思う。

◾️古井貴 略歴
19677月 北海道生まれ
19863月 専修大学松戸高等学校卒業
19903月 専修大学経済学部経済学科卒業
19906月 株式会社フロンティアインターナショナル入社
19945月 株式会社フロンティアインターナショナル取締役就任
20005月 株式会社フロンティアインターナショナル常務取締役就任(現任)
20185月 株式会社フロンティアダイレクト代表取締役社長就任(現任)

(その他の参画団体)
一般社団法人「教師の日」普及委員会理事
専修大学校友会渋谷支部事務局長
渋谷区立加計塚小学校おやじの会OB・創立100周年記念事業事務局
渋谷区都市計画審議委員会委員

フロンティアインターナショナル HP : https://www.frontier-i.co.jp/
フロンティアダイレクト HP : https://www.frontier-di.co.jp/

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