Shibuya Sakura Stageの竣工から早くも約半年が経ちました。
皆さんはもう訪れてみましたか?
このShibuya Sakura Stage、オープン時から桑沢デザイン研究所とのコラボで卒業生・在校生のみなさんが描いた絵や写真が様々な場所に展示されています。
この度、展示開始時在校していた2023年度生の作品を対象に、優秀賞を選定し、その授賞式が行われました。受賞された作家5名にインタビューをしてきました。
前半では「Shibuya Sakura Stage賞」を受賞した吉崎亜希さんと「さくら賞」を受賞した柳沢葵さん、さらに本プロジェクトにアートディレクターとして関わった桑沢デザイン研究所講師の髙谷廉先生にお話を聞いてきました。
Shibuya Sakura Stage賞を受賞した 吉崎亜希さん
今回の絵は、髙谷先生の授業で行った、世田谷にある「マルショウ アリク」という硴(牡蠣)とおばんざいのお店をイメージして作りました。牡蠣は花ではないですが、岩にくっついて花のように見えることから「硴」と表されることがあります。この絵は、そういった石に咲く花、硴を想像してみました。
「マルショウ アリク」は髙谷先生のご友人が開いたお店です。初めてそこに行った時、茨城から渋谷に来ていた私には、気後れするほどすごくおしゃれでした。でも、その場の雰囲気はとても心地よく、落ち着いた感じがしました。なんとも言えない温かさと、隠れたやさしさを感じ、それがこの作品の色合いに影響を与えたかもしれません。
私はテーマを決めてキャンバスに向かうということが苦手で、髙谷先生から「いろいろなものを描いてみたら?」と助言をいただき、いくつか描いてみた中からこの絵を選びました。
この作品には中心に割れ目のようなものがあります。なぜ破ったのか、言葉で説明するのが難しいですね。でも、何かを破壊しないと、ただかわいいだけのものになってしまうと感じました。だからこそ、破ることで新たな美のようなものを見出そうと試みました。お店で感じた何か言葉にできない感覚を、破いたことによって表現しようとしました。
私の芸術との付き合い方ですが、とにかく、私にとってアートは自分自身を解放する場所です。何かを強く感じたとき、それを形にすることで、自分自身も理解できるようになるんです。それが私にとってのアートです。
普段、色んなことから影響を受けています。今回の場合はお店の雰囲気や、街の空気、人々の交流からインスピレーションを受けました。特に渋谷みたいな、エネルギーが溢れる場所は、すごく刺激的です。そういうところで感じたことが、絵に反映されるんです。
今回感じたことはコミュニケーションの概念です。「外」とのコミュニケーションが私は苦手なんです。しかし渋谷でも「アリク」でも「自分とのコミュニケーション」だったり、「作品とのコミュニケーション」という「外」以外のとのコミュニケーションの在り方を知ることができました。
私の制作スタイルは、かなり即興的なんです。計画を立てて…というよりは、その場の感情や直感に従って絵を描くことが多いですね。そのほうが、何というか、作品に自分の生の感情が反映されると思うんです。直感に従うことで、作品に新しい命が吹き込まれる感じがします。
ちょうど1年前、 入学して1年経った辺りから、こういう描き方をはじめました。まだ手探りなのですがこれからもこの創作スタイルで絵を描き続けていきたいです。
さくら賞を受賞した柳沢葵さん
この作品では、目では見えない存在、普通では見過ごされがちな人々をイメージして描いています。それは男性でも女性でもなく、その区別を超えた存在です。作品には髪の毛のようなものが表現されていますが、それがまたオーラのようにも見えるんです。絵の中心に人を配し、雰囲気や感情を色や形で表してみました。
私は、普段からイラストを描いていて、その中でも性別を問わずに、目では捉えられないような人を描くことにしています。この作品を描いた時は、心が少し沈んでいて、自分を高めようと思って、明るくて暖かみのある色を選びました。ピンクと緑の配色で、自分の心を癒したかったんです。ピンクは自分自身を癒す色ですね。
最初は女性を基準に描こうと思っていましたが、世間でよく言われるジェンダーについて考えてみたときに、ジェンダーという言葉が差別をしないことが正義、みたいになっている現状に対して、それを超えたものを表現したいと思いました。だから、性別などの型にはまらないようなイラストになっています。
この作品は色鉛筆で描きました。油性色鉛筆で、ゴリゴリ描いたんですけど、周りの青い背景の方はクレヨンで描いています。それも波があるように、実際にクレヨンで波のテクスチャーができるように描きました。
創作活動は、私にとってリフレッシュの方法です。暇があったら絵を描いて、自分のインスピレーションを動かしてからまた作品づくりをします。特定の展示とかのために絵を描くんじゃなくて、自分が見返して「あの時こうだったな」と感じられるように、日付に沿って色々ファイリングしています。創作って、結構リフレッシュできるんですよ。
最近はポスカとか水彩とかも使っていて、いろんな画材を使うことで新しい発見があったり、結構楽しく制作できています。500本ぐらい色鉛筆があって、それぞれグラデーションもあるので、いろんな色を使っています。廃盤になったものも多いので、大事に残しつつ、どんどん増やしています。
気分が落ちてた頃が去年の4月あたりだったんですけど、そのあたりから雑誌のような出版物をつくるZINEフェスなどのイベントに出展し始めました。このフェスは大体B6とかA5サイズぐらいの手軽に作れる自費出版の作品集を集めたものです。そこに出始めて、いろんな方と出会って、いろんな表現方法を見てすごい楽しいなって感じてます。
これらを自分のお仕事に繋げられたらなと思っています。たくさん展示もしてみたいです。だから今回の展示にも参加しましたし、今後もZINEフェスとかいろんな企画に参加をしながら活動を続けていこうと思ってます。
髙谷先生からの受賞者5人へのメッセージ
渋谷はもともとワシントンハイツがあった代々木公園に近い場所にあり、GHQの影響を受けた地域です。戦後当時はアメリカ兵が遊びに来ていたり、多様な文化が混在していたため、変化を受け入れるのが当たり前の街です。デザイナーや文化人が集まるのも、その多様性と変化に富んだ環境が理由の一つではないかと思います。
今回、桑沢デザイン研究所がShibuya Sakura Stageで展示を行うことができたことは、学生と社会が繋がる良い機会になりましたし、学生が渋谷の街を改めて見直すきっかけにもなりました。自分の生き方を考え直す機会として、この街のクリエイティブな環境に触れることは大いに刺激になるはずです。今回の賞を受賞した5人には変化を恐れずに挑戦し続けてほしいです!
ーー後半では髙谷先生の名前を冠した「髙谷賞」を受賞した3名にお話を聞きました。そちらもぜひ合わせてご覧ください。
後半はこちら:Shibuya Sakura Stage×桑沢デザイン研究所DESIGN WALL PROJECT受賞者インタビュー(後編)福井一平さん ポラード碧さん 丸山廉太郎さん