誰もが巣立ちゆける世界を スダチ小川涼太郎さん

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株式会社スダチが提供するサービス「スダチ」は、不登校の子どもを抱える親御さんへのサポートを通して3週間で不登校を解決するプログラムです。教育を通して、“巣から飛び立つ鳥のように、誰もが社会という大空へ羽ばたけるように”という想いが込められています。

年々増加傾向にある不登校児童数は、今や社会で大きく問題視されています。学校に行かないという選択肢も寛容になってきていますが、学校に行かず、他に属するコミュニティもない場合、早い段階で社会での集団生活を経験するという機会を失ってしまいます。不登校の子どもの中には、学校に行きたいのに行けないという子や、馴染み方がわからない、居心地が悪いなどさまざまな理由があります。今回は、大学で心理学を専攻する筆者の私が、スダチ代表の小川涼太郎さんに迫ってみたいと思います!

きっかけ

ーー小川さんがスダチを立ち上げたきっかけを教えてください

「僕はもともとコンサルティング会社で働いていました。その中で、幸せに働いている人もいれば、そうでもない人もいると気づいたんです。結局、職場環境や人事を調整して会社を変えるだけでは、全ての人が幸せに快適に過ごせるわけではないんですよね。一人一人が自己実現的な感じで幸せだと思えるような仕組みが必要で、そのためにはまず人間の根幹を作っている『教育』を変えなければと思ったんです。最初は学校を作るところからスタートしたんですが、うまくいかず…。改めて教育について調べる中で、不登校が大きな社会問題になってるということがわかって、じゃあまずはここから始めなきゃって思ったんです。まだ誰も解決できていない問題だし、社会全体の子どもの数は減っているのに不登校児童数は増えていますよね。不登校の問題を解決していくことが社会の土台作りという意味でも重要なんじゃないかと思ったんです」

スダチの取り組み

ーースダチではどのような取り組みをされているんですか?

「僕らは対象となるお子さんには一切会いません。親御さんにアドバイスをして家庭で実践していただく形です。生活習慣の改善や、スマホやゲームなどのデジタル機器から離れて、親子でコミュニケーションをとる時間を増やすなどの基本的な部分の改善をご提案しています。そうすることで、不思議といろいろな問題を乗り越えられるようになるんです。2020年からこの活動を始めて、これまで累計850名くらいのお子さんを再登校へと導いてきました」

教育から人を幸せにしたい

ーー小川さんはスダチの活動を通してどんな世界を目指しますか?

「教育を通してひとりひとりが幸せに生きていける世界を作りたいです。再登校したお子さんたちは劇的に変化しましたし、幸せにできたのではないかと感じています。これは究極論ですが、不登校の子どもが増えた場合、将来的に引きこもることも想定できますし、そうなると労働生産人口が低下して、国力も低下してしまいます。1人の人間が社会に出るってすごく大きな価値があるんです。この活動を通して不登校をサポートすることで、より良い世の中へと変えていけると思っています」

子育てに正解はない

ーー小川さんが考える子育てとは?

「スダチに相談に来る親御さんの中には、お子さんの不登校は自分のせいだとご自身を責める方もいらっしゃいます。でも、子育てに正解はありません。何もわからない状態から子育てが始まって、目の前の子を育てていかなくてはならないんです。子育てってできなくて当たり前じゃないですか。不登校になってしまうのは決して育て方が悪いからではないし、誰もが不登校になる可能性があるんです。それを共通認識として事前に知っておくことがまず重要なんじゃないかと思っています。僕らの活動を通してより居心地の良い親子関係を築くことができれば、結果として、トー横キッズ、リスカ、オーバードーズ、自殺などの問題も減っていくんじゃないかと思うんです」

ここからは小川さんの素顔に迫っていきます…!

趣味は仕事

ーー小川さんの趣味を教えてください
「僕の趣味は仕事です。サウナやランニング、筋トレ、読書とかもするけど、それらは全部仕事のパフォーマンス向上を目的にやっているので(笑)。結局は仕事が好きで、趣味を問われればやはり仕事かなと。人間として生きる上で、世の中に対して何かアクションしたり、社会的に価値を生み出すことで、“生きたしるし”を残したくて、仕事は一番それらを実現できる手段だと思うんです。」

世の中を幸せにしたい

ーー生きていく上で大切にしていることはありますか?
「僕は生きているうちに、自分のためではなく、世界や後世に何か残したいという思いが強くあります。他者に何かして感謝されたり影響を与えられたときすごく嬉しいし、その嬉しさっていうのは、例えば趣味を楽しんでいる時の嬉しさとは全く異なるものです。自分だけが喜ぶことをするよりも、せっかくなら他の人も喜ぶようなことをしたいと思っています。漫画の主人公って当たり前に世界を救って、すごくかっこいいじゃないですか。僕もこうなりたいみたいな憧れが幼少期からある気がします。その憧れを実行に移して実現を目指している感じですかね」

死生観

ーーなるほど…。それはいわば自分よりも他者のために生きるということなのでしょうか?

「僕は、ただ生きて、ただ死にたくはないです。何もせず自分のためだけに生きるというのは、僕にとって意味がないというか。生きているうちに誰かを幸せにしたり、困っている人を助けたり、後世で役に立つシステムや考えを世に発信できたら、僕が生きた意味というか、存在意義がそこで生まれるように感じています。

自分の幸せや命をいちばん大事に思うのが、本来人間に備わっている感情だと思います。そういった意味ではこの考え方って機械的かもしれません。僕には身体と精神が分離しているような感覚があって、今の自分の顔や体はアバターで、それをコントロールするような感じ。精神面にフォーカスしている分、別に自分が死んでしまってもどうでもいいっちゃどうでもいいというような考えですね」

満たされなくて良い

ーー生きていてツラい瞬間とかないのでしょうか?

「自分が満たされる瞬間って、恋愛とか、好きな人といる時間とかじゃないかなあ。失恋した経験は、人生でいちばん辛かったことです。当時の僕は、世界でその人以外、全く興味がないってくらい、その人のことがめちゃくちゃ好きで、でもその人は僕に全く興味がないっていう状況でした。他のことじゃ全く満たされなくて、かといって相手の感情を動かすこともできないから、ただただめちゃくちゃきつかったです」

ーーとはいえ、自分が満たされたいと思うことはないんですか?

「今の僕は満たされたらダメかなと思いますね。どれだけ乾き続けられるかの方が重要です(笑)。例えば、お金が 1億、20億、300億って増えていったとして、そこで満足してしまった瞬間、終わりじゃないですか。活動を続けて目指す未来を実現するために、常に自分をどれだけ追い込めるかがポイントだと思っています。人ってラクしようと思ったらいくらでもラクできちゃうんですよね。僕は今このアバターを操作しているわけで、これをどれだけ働かせるかが重要なので。満足させちゃダメです」

今の自分

ーー最後に今の小川さんの活動について一言お願いします。

「僕は今の活動や事業に誇りを持っています。お金儲けを目的としていたら、この事業をすることはまずないと思うし、世の中にどう価値を出すかっていう部分では、正直、GAFAよりすごいことやっているなって自信があります。自分が世の中に対して最大の価値を見出すために、起業するという選択をしました。仕事を通して友人や仲間と一緒に成長したり、それをお客さんにサービスとして提供して喜んでもらえて、僕は今の事業や活動がすごく楽しいです」

インタビューを終えて

私は大学で心理学を学ぶ中で、世の中には生きづらさを抱えている人が多くいることを実感しています。特に同世代の間では「だるい」「疲れた」「しんどい」などのフレーズが口癖となっていて、私自身も毎日無意識に言ってしまうし、社会で生きていくにはなぜこんなにも疲れなければいけないんだと、どこか満たされていない感があります。経済的な豊かさは安定してきたのに、心の豊かさは安定しにくく、何のための経済成長なのだろうと思うばかりです。今回インタビューの中で小川さんが何度も口にされた「世の中を幸せにしたい」という言葉は私の目標でもあり、こころという視点から、誰もが当たり前に疲弊している社会構造を変えていきたいと思っています。人を作る根幹となる「教育」の分野から活動されている小川さんの姿に感銘を受けるとともに、私も頑張ろうとモチベーションになりました。

小川さん、この度は書籍のご出版おめでとうございます!今後のさらなるご活躍を楽しみにしております。

著書:不登校の9割は親が解決できる

 

◾️小川涼太郎

1994年3月26日生まれ、徳島県出身。2012年に関西大学経済学部へ入学。2016年4月 新卒でアビームコンサルティングへ入社。1年目からプロジェクトリーダーに抜擢。2年目には新規部署の立ち上げメンバーを経験し、約2年間で0から50人規模のチームへと拡大。日常の業務の中から『教育が変われば人も変わり社会も変わる』ことに気づき、『教育へ人生を捧げたい』と強く思い、2019年5月退職し、株式会社スダチを設立。不登校の子供達に向けたボランティア活動を通して、多くの不登校の子供達と関わる中で、「本当は学校に行きたいけど行けない、自分でも行けない理由が分からない」という”目的意識がない不登校”で悩んでいる子供達や親御さんが多くいることを知り、その現状に危機感を感じて、「不登校で悩んでいる人たちを1人で多く救いたい」という想いから、2020年4月不登校支援事業開始。2024年4月時点での再登校人数は900名を超え、平均再登校日数は17日。再登校率は90%を超える。

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