街の治安や地域との繋がりを大切にする 渋谷中央街 道玄坂1丁目町会理事 舩坂貴彦さん

渋谷西口を出ると目の前に入口がある渋谷中央街。渋谷マークシティ、渋谷フクラスという大きなビルに挟まれたエリアで、多くの飲食店が立ち並んでいます。今回は、コロナ禍でのストリートテラスの試みや夜間パトロールなど、常に街の活性化と人々のつながりを大切にする渋谷中央街理事の舩坂貴彦さんにお話を伺いました。

愛着と馴染みのある街、渋谷


ーー舩坂さんと渋谷の出会いについて教えてください

「東京出身で中高大を出た後、東急コミュニティーという会社に新卒で入りました。2021年に退職して、現在は父の後を継ぐ形で不二美書院(渋谷区道玄坂)の取締役を務めています。それと同時に2022年4月から父が道玄坂一丁目町会の町会長、私が商店街の理事という形で街の方に携わっています」

「曽祖父の代からこのあたりでお店をやっておりまして、祖父が中央街の理事や町会連合会の会長をやっておりました」

ーー東急コミュニティーに入ったきっかけはなんですか?

「元々就職活動するつもりがあまりなく、実家の商売に携わる予定だったんですが、再開発による本社ビル建て替えもあって、どこかに就職しなきゃいけないってことになりまして。急遽、頭の中で軽いパニックを起こしたというか(笑)とにかく知っている企業で愛着のある企業が東急だったんですよね。昔から渋谷に関わっているし、東横線沿いに住んでいた時期があり思い入れがあったので東急関連の会社を受けていました」

「現在、渋谷フクラスの1階に不二美書院の事務所を構えさせてもらっているのですが、もともとは、以前の東急プラザ渋谷があったときにその真裏にFBビルという不二美書院のビルがありました。東急プラザ渋谷の建て替えの際に、東急不動産さんから協力してほしいという話を受けて、FBビルも一緒に再開発をすることになり、渋谷フクラスができました。たまたまなのですが今渋谷フクラスの管理も東急コミュニティーさんがやっていて、担当の方は、私が務めていた時によく知っている人なので本当にご縁だなと感じています」

ーー街に関わることでの発見などはありますか?

「今までなかなかできなかった体験というか、見えてなかった部分が見えてくるというのはありますね。父親が元々理事をやっていて何となく話をたまに聞くことはあったのですが、例えば必ず参加している月に2回夜の客引き防止のパトロールに参加することで、今の渋谷の夜の客層がこういうふうになってるんだなとかあるいは外国の方が増えてきたなとか、こういう問題があるなっていうのを自分の目で見られるという点では勉強になります」

「普段の生活の中でも今まで渋谷に来るときは大体父親の会社に何かで来るとか、あるいは遊びに来るとかっていうことが多かったので、街を見るという目線はあまりなかったのですが、街の中で実はここの電灯がちょっと暗いなとか、ここはゴミが多くなっちゃっているなとか路上喫煙の人多いなとかという違う目線で見られるようになってるので、そういうところが自分の中でも変化はあったのかなというふうに思っています」

ーー道玄坂はコロナ禍に臨時の条例を出しましたよね。

「理事長の方にもだいぶご尽力いただいて、ストリートテラスという名称で、飲食店舗前の路上でもある程度飲食ができるという臨時の条例ができました。コロナが終わって特例措置がもうないのですが、もう一度実施して欲しいという声がありまして。やっぱり相当効果として大きかったんだな強く実感しますね」

「コロナ禍も負の遺産はたくさん残ってしまっていますけど、数少ない良かったことというか改めて見直すきっかけや人と人との繋がりがより力強いものになった気がしています」

理事長の本間さんにも同席していただきました

ーー中央街の好きなところはなんですか?

「第2の地元になっているので、個人的にはもうどこが好きというよりは街として何となく愛着があるっていうレベルです。中央街だけでなく、渋谷駅周辺は再開発で街の様相ってかなり変わってきてると思うんですけど、変わってもそこにいる人が変わっているっていうわけではないので、中央街という空気感というか、安心感みたいなものが、私の中には強くあります。」

「特に私が子どもの頃は、渋谷全体は少し治安も悪く、あまり子どもが1人で歩くのは危ないよっていうぐらいの感覚だったと思うんです。けど、最近は全然そんなことがなくて、空気感が変わらないまま、治安は良くなってるし特に問題が起こらないまま、どんどんいい方向に向かっているのはすごく好きなところです」

これからの中央街は?

ーーこれから中央街のビジョンは?

「中央街だけではないですが、商店街に携わる若い世代が増えていくことは、ちょっと現状では考えづらいかなと。渋谷には商店街がいくつかありますが、将来的には商店街という枠に囚われすぎずに垣根を越えて一緒にやって、細かい小さな地域の対応は商店街ごとでやりましょうみたいな形で協力をしてやっていけるといいのかなとすごく感じてます」

「町の外から来る人にとっては、どの商店街だろうと別に関係ないので、例えばこっちの商店街はすごく汚いです、こっちの商店街はすごく綺麗です、何でこことこことで急に汚くなるんだろうとか、何でここまではキャッチがいないけどここからはいきなり客引きが立ってて・・・って、ちょっとやっぱり見た目としておかしなことになっちゃうと思うので、そういうところは足並みを揃えてというか、今後はそういう商店街同士の連携が求められてくるのかなと思うんですね」

ーー商店街の存在はとても大きいですね

「実際商店街活動とかって、若い世代だと煩わしいなって思う人も結構多いと思うんですよね。私よりももっとこの下の世代になってくると、そういうのがもしかすると顕著になってくるのかな。いわゆるZ世代とかと呼ばれるような世代の方々がまだ商店街活動に携わってくる年齢ではないので、これからも10年20年30年先の話なるとは思うのですが、そのときに、この町が町として商店街が商店街としてちゃんと機能することを目指していくのは一つ大事なことなのかなと感じます」

「ニュースを見てると、コロナ禍で大きなお祭りに幕を閉じることがあるなど、街の人との繋がり・地域の繋がりがすごく希薄になっているなと感じることがあります。どういう人がこの街で商売をしていて、どういう人がこの街で活動してるんだっていうのがわかるのとわからないのって、1年2年では多分大きな差は出ないと思うのですが、5年10年、あるいは渋谷の未来を考えたときには絶対に大きな差になってくると思うので、ちょっとした活動でも定期的に街の人間が集まる輪を保っていかないといけないなと感じています」

ーー再開発とともにある中央街ですが、いかがですか?

「渋谷の街の中でもうまいこと昔のお店も残ってる感じはありますね。再開発が進んで昔のものがなくなって、新しいものが結構多いなとは思っているのですが、それも悪くはなくて昔のいいものは残しつつ、良くない部分や安全上問題があるものはアップデートして徐々に変化していくバランスがうまくできてるのかなっていうのは見ていて思います」

ーーエリアを広げて、今後の渋谷に期待することはありますか?

「日本を代表する街になって欲しいですね。海外の方からの視点だと、日本といえばで思いつくのが渋谷ではないような気がするんですよね。日本に来たなら渋谷に行かなきゃ、という感じになって欲しいです。それと昔は結構ありましたけど、地方から出てくる人の目標みたいなものが渋谷であると嬉しいですね。憧れの町になるのは良いのかなとすごく思います」

中央街や渋谷に関わる人たちだけでなく、訪れる人や渋谷の未来を担う人のことを第一に考え、日々街を良くする活動をされている舩坂さん。笑顔から滲み出る優しさと強く芯のある思いをお持ちで、インタビューをしていてとても温かい気持ちになりました。

▪️舩坂貴彦

1990年9月、東京に生まれる
大学卒業後は不動産管理の仕事に携わり、2021年に退職、家業を継ぐ。
2022年度より渋谷中央街の理事を務め、客引き防止パトロール等の商店街活動や「渋谷計画2040エリアビジョン委員会」の委員会活動などを通じて、安心安全な街づくりをはじめとした渋谷の未来へつながる取り組みを行っている

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