ダイバーシティー渋谷で出会う ゲイ専用結婚相談所「ブリッジラウンジ」田岡智美さん

2015年に、渋谷区と世田谷区から始まった「パートナーシップ制度」。男女平等、及び多様性を尊重する社会への大きな一歩となりました。また、その一歩をきっかけに広がりを見せ始めたのがセクシャルマイノリティに向けた“パートナー”探しのツールです。それまではマッチングアプリなどが主流でしたが、新たに登場したのがゲイ専門の結婚相談所でした。

 

今回はゲイ専用の結婚相談所「ブリッジラウンジ」で店長をされている田岡智美さんにお話を聞いてきました。多様化した婚活事情、気になりませんか?

大切なことはお客様から教えてもらった

「元々は教育関係の営業の仕事をしていましたが、30歳手前に“この仕事を一生続けるのか?”と疑問を持ち、転職。人の幸せに携わる仕事がしたいと、男女向けの結婚相談所に就職しました。当時はほとんどのお客様が年上で、結婚をしていない私には説得力がないと悩んだりもしたものです。今日まで結婚相談の仕事を通してたくさんの方とお会いしてきましたが、みなさんに感謝の気持ちしかありません。大切なことはすべてお客様に教えていただきました」

 

そう話す田岡さん。一人一人との出会いで、学ぶことや感じることがあり、人としてもたくさんの成長があったそう。その後、彼女にも運命の瞬間がやってきました。

「男女の結婚相談所でキャリアを積んできて、ゲイ専門の結婚相談所を立ち上げるけどやってみないか? と誘われ、“あぁ、私はこの仕事をするために生まれてきたんだ!”とビビっときました。その場でやります! と言い、立ち上げから携わりました。そこから同じ業種での転職を経て、今は『ブリッジラウンジ』で店長として働いています」

 

「ブリッジラウンジ」を運営するxxx(エイジィ)株式会社は2015年に中野で設立、2018年に新宿に移転、そして2021年に渋谷へと拡大移転を続けています。愛称(あだ名)制度や家族休暇制度など、新たな取り組みを行う会社の方針と渋谷区の取り組みや雰囲気がマッチしているといいます。

 

xxx(エイジィ)株式会社はアナログな業界や日本の産業全体を俯瞰し、テクノロジーによって自由で公平な機会がある社会の実現を目指しています。他社でのゲイ専用の結婚相談所の設立を経てこれからのことを考えた際に、xxx(エイジィ)代表の髙田と話す機会があり『社会問題の解決』と『人のために働く』という点に共感をして転職を決めました。実際に働いてみたらとても風通しの良い会社で、結婚相談所部門以外の部署でも多様性を感じています」

おしゃれなオフィスは、自社のリフォーム部門が手掛けており、エントランスの壁には一人の社員さんが手掛けたという、多様性を感じさせる絵が飾ってありました。

気になる彼らの婚活事情

「ゲイ専用の結婚相談所と言っても、基本は男女の場合とまったく変わりありません。あ、でもすごくいいなぁと思うのは、双方からの年齢による足切りがないことです。男女ですと、子どもが欲しいから20代の女性がいい! など、年齢の縛りがあることも多く……。30代40代でもすごく素敵な方が多くいますし、結婚の意味や女性としての価値は子どもを産むことだけではない! と、自分と重ねて心が苦しくなることがありました」

 

今まで何百人ものカウンセリングを行ってきた田岡さんですが、一番印象に残ったのはどんな方なのでしょうか?

 

「カウンセリングで『初めて自分のセクシャリティを人に話せました』と言ってくださった方がいらっしゃって、その言葉を聞いたときに、“私たちが当たり前に通ってきた、初恋や恋バナ、バレンタインの告白や初デートなどを、どんな気持ちで過ごしていたんだろう、どのくらい苦しかったのだろう”と涙が出そうになりました。その後やっと両思いになれても『幸せになるのが怖い、僕なんかが幸せになっていいんだろうか?』と立ち止まってしまう姿も。自分のアイデンティティやセクシャリティを隠さなければならない、否定されて育つなど、社会から植え付けられた自己肯定感の低さはなかなか拭えません。それでも、運命の相手と出会えて幸せになった方からは『生まれ変わってもゲイでもいいと思えた』というお言葉をいただき、嬉しかったです。今パッと思い浮かんだのはこのくらいですが、会員様一人一人とそれぞれの思い出があります」

成婚後も田岡さんに会いたいからと退会を悩む人や、業務外で一緒に食事に行くカップルがいるほど人望のある田岡さん。このお見合いルームに飾られたドライフラワーアートもご成婚された方の手作りのお礼でいただき、思い入れがあるそうです。

 

一歩踏み出せる社会へ

「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」をビジョンにあらゆる多様性を受け入れ、その違いを認め合い、活かしていくことを掲げる渋谷区。まさに多様性と日々向き合う田岡さんにはどのように見えているのでしょうか。

 

「渋谷はすごくエネルギッシュな街ですよね。渋谷区が先陣を切って取り入れたパートナーシップ制度もすごくいい! 私はいずれ同性婚が認められる時代が来ると信じています。結婚するかしないかはどちらでもいいと思っていますが、結婚という選択肢がないということは大きな社会問題です。弊社で成婚された会員様が手を繋いで帰られても、誰も振り向かない渋谷になることを心待ちにしています」

 

最後に同性のパートナー探しに悩んでいる方々へ、メッセージをいただきました。

 

「いっぱい経験して、胸を張って生きて欲しい。同性であっても異性であっても、人を好きになる感情って素晴らしいものです。周りの人にいろいろ言われるかもしれない、見える景色は綺麗なものばかりでないかもしれない。けれど、自分の人生は自分でどうにでもなります。最初の一歩を踏み出すのは勇気がいるかもしれないけれど、その一歩を踏み出してここにきてくれるのなら、きてよかったと思える景色が見えるところまで、私たちがお連れします」

 

◾️田岡智美(たおか ともみ) 略歴
xxx(エイジィ)株式会社 ゲイ専用結婚相談所ブリッジラウンジ 店長
1974年、香川県出身。
30歳を迎えるころ、「幸せ」に携われる仕事に就きたく、結婚相談所へ転職。
2016年より同性パートナー紹介会社にてLGBTの出会いをサポート。
2019年からはxxx株式会社運営の「ゲイ結婚相談所ブリッジラウンジ」のコンサルタントとして、初めてご来店されるお客様へサービスのご案内、会員様のご紹介、お見合いお引き合わせ、カウンセリングなど、全てのサポート業務に従事している。

 

xxx株式会社HP:xxxaz.jp
ゲイ専用結婚相談所ブリッジラウンジHP:bridge-lounge.jp
Twitter: @BridgeLoungexxx

 

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