モチベーションはオリンピック金メダル! 元スピードスケート 髙木菜那さん

2023年2月15日に渋谷区立神宮前小学校で、元スピードスケート選手の髙木菜那さんが小学生と保護者に向けて講演会を開催しました。1〜6年生にわかりやすく楽しく、時には熱く語った髙木さん。渋谷での講演会はこれが初めてだったそうです。講演会は、低学年と高学年の2部制で実施され、年齢に合わせて内容も変えていました。そんな髙木さんに今回、渋谷新聞が独占取材することができました。

 

講演の様子

「今日、来るときに、なんか違うなと思っていたら反対の電車に乗っていたんですよ! みんなはそういうことないよね?」と笑いを誘うアイスブレイクからはじまった講演会。子どもたちは「ない〜!」と大きな声で反応していました。

髙木さんの自己紹介から始まり、スピードスケートの話に移ります。子どもたちが、スピードスケートに少し詳しくなったところで、オリンピックの会場や、選手にしかわからない情報をスライドを通して紹介。

マクドナルドが無料で食べられるんだよ! と髙木さんが言うと子どもたちは「いいなあ〜〜〜!!! 」と1番に盛り上がりました。

最後は子どもたちに「チャレンジしてほしい、やりたいことができたらそのやりたいことを言葉にして伝えていってほしい」「そして継続!」と投げかけました。そして、「保護者の方にはお子さんの声をしっかりと聞いてあげてほしい。お子さんを見ていたら、本当の声がわかると思うから、それを逃さず聞いてあげてほしいなと思います」「子どもの道を決める線路ではなく、ガードレールになって、子どもが決めた道から外れそうになった時、支え、見守るのが保護者や先生の役目だと思います」と熱く語ってくださいました。

 

低学年の部では、鬼滅の刃の登場人物に例えて、1人1人の良さがあるということを話すと、みんなうなずいていました。

時間が経つにつれて集中力が切れ始めたところで「みんな起立!! ラジオ体操をしよう!」と髙木さんが動き始めると、体の動きを真似する子どもたち。

髙木さんは講演に慣れていて、子どもたちにもわかりやすく、高校生の私も引き込まれました。

講演会の最後は質疑応答の時間。アニメ『名探偵コナン』の大ファンだという髙木さんの中で1番好きなキャラクターは? 金メダルをもらった時の気持ちは? 現役の時と引退した後の変化は? など、子どもらしい質問が飛び交いました。

 

▲長谷部渋谷区長、五十嵐渋谷区教育長も参加

 

講演後の独占取材!

ーー講演の中で、保護者の方々にはガードレールになってほしいという問いかけがありましたが、髙木さんのご両親はどんな教育方針だったのでしょうか?

「勉強しなさい」と言わない親でした。スケートも、もっと頑張りなさいとか、結果が出なくてもアドバイスを言われたことがなくて。良くても悪くても、「お疲れさま」という言葉だけをいつもかけてくれていました。だからこそ、結果が何だろうと全て自分のために頑張れていたんです。全部自分で決めて、自分で選んだからこそ、自分自身に責任を持ちながらやってこれたのだと思います。親からスポーツに関しては、やるならやりなさい、やらないならやめなさいということだけを言われてきました。

ーースポーツ以外ではご両親にどのように言われていましたか?

礼儀作法など、人としての対応についてはめっちゃ怒られていました(笑)。私は結構ヤンチャだったので、挨拶をする、ちゃんと人の目を見て話すとか、スポーツでいい結果が出て調子にのった時はしっかり怒られていました。

 

ーー今日の講演会は、東京での初めての講演だったそうですが、渋谷の小学生の印象はどうでしたか?

今日会って、いろんな子がいると思うけど、渋谷の子もやっぱりみんな子どもは子どもなんだとすごく感じました。だって、スピードスケートのオリンピック動画を見てあんなに盛り上がってくれるのは子どもだからですよね。どの子もちゃんと真剣に聞いてくれていたし、他の地域と比べてすごく変わったところはなかったです。でも、少し他の学校の子よりも大人っぽいかなと感じました。

 

ーー最近東京に引っ越されたと聞きました。渋谷は利用されますか?

私の地元、北海道の高校生が東京に来ると、自主研修で絶対に竹下通りに行きます。「こんなに買い物ができる場所があるんだーー!! 東京すげーー!!」と思いました。

 

ーー東京に移られた理由は何ですか?

スピードスケートを辞めて、メディアなどのお仕事をまずはやりたいなと思ったからです。メディアの仕事は東京での収録が多いですし、東京って中心地点で便利ですよね。テレビの仕事、イベントや講演の登壇で、日本各地に行くので動きやすいからです。

ーーもともと、講演会はよくやっているんでしょうか? 今日の講演会を聞いていて話すのがとても上手で、引き込まれてしまいました。

幼い頃は内気だったので、あまり話すのが得意ではなかったのですが、最近みんなにすごいね、いいねと言われるようになり、私はこれが得意なんだとわかりました。

 

ーー自分の望んだ環境じゃなくても、この場所でどう花を咲かせるかが大事と講演で話されていましたが、髙木さんは周りに巻き込まれる側ではなく、巻き込む側だと感じました。

巻き込む側になったのは大人になってからだと思います。中学、高校を通して元気いっぱいではっちゃけてはいたけれど、リーダーを率先してするタイプではなかったですし、チームのキャプテンもほとんどやったことがありませんでした。スピードスケートは基本的に1人で滑るのだというのも関係あるかもしれません。

▲左から、2022年北京オリンピック 銀メダル。2018年平昌オリンピック 金メダル2つ

 

ーー練習のモチベーションはオリンピックの「金メダル獲得」でしたか?

はい。私のモチベーションは全て「金メダルを獲りたい」で保たれていました。16歳の頃にオリンピックに出たいと思うようになってから、金メダルを取りたいと思うようになりました。自分の夢がステップアップしていきましたね。

 

ーー試合で結果が悪かったときに自分を責めることはありましたか? お話を聞いて、継続することって本当に意味があることだなと感じましたが、継続って本当に難しいことですよね。

私の場合、自分の目標のために自分で選んで試合に出た結果なので、結果が望むものではなくてもその事実を受け止めて、次に繋げていました。
そこに応援してくれるファンがいてくれたことで私は救われているなってすごく思います。

継続については、アスリートは本気で叶えたい夢があるので、その夢に対してだったらコツコツと練習を継続できちゃうんですよ。継続することが夢に繋がることを知っているので。 私はアスリートの立場なので、気軽に「もっと本気になればいいじゃん」と言えるけれど、分かっていても継続ができない一般の人はどうしたらいいのかなって美帆(妹)と話すことがあります。

継続できない人のことがわからないのではなくて、続かないこともあると思います。とにかくどんなに面倒になっても、続けることが次につながるんだと思います……私はスケートを本気でやるために、自主練が1番必要だと思ったから、辛くてもずっと続けられたんですよね。

でも、他のことは全然続けられない方なんですよ。英語の勉強などはなかなか続かないので! 継続が得意なわけではないけれど、本気になったものに対してはしっかり継続ができたって思います。

ーー最後に、将来はどうしたいと考えていますか?

今後についてはまだ考え中です。講演を行うのは好きなので、色々な言葉で伝えていくこともやりたいと思っています。あとは運動はすごく大事だと思うので、外に出て遊ぶこと、日光に当たること、そういうことをもっと伝えていきたいです。

スポーツをあんまりしたことがない子どもたちも、ずっと座って仕事をしている大人たちにも、体を動かすことがこんなに簡単で、こんなに身近にあって、こんなに楽しいことなんだと伝えることを、自分のベースとして作っていきたいです。これからいろんなことをしていけたらなと思っています。

 

今回取材をさせていただいて、スポーツ選手の方に実際にお会いするのは初めての経験でした。髙木さんは、オリンピックでの力強いイメージとは違い、フレッシュで明るい印象を受けました。髙木さんが今まで積み上げてきた努力や、葛藤などがあったからこそ、1つ1つの回答の中にある言葉に重みがあります。私も色々なことに挑戦して学び、努力する中で1つ1つの物事を意味のあるものにできる人間になりたいと思いました。

 

◾️髙木 菜那さん 略歴
1992年7月2日、北海道中川郡幕別町生まれ。7歳から兄の影響でスピードスケートを始め、2007年全国中学校スケート大会女子1,000mで優勝。
北海道帯広南商業高等学校時代には、2010年世界ジュニアスピードスケート選手権大会では、チームパシュートで妹、美帆らと銀メダルを獲得した。
高校卒業後は日本電産サンキョー株式会社に所属。
2014年冬季五輪ソチ大会で日本代表に初選出された。2018年平昌大会では、女子団体パシュートでオリンピックレコードを記録。新採用されたマススタートも合わせて、日本の女子選手初の同一大会での2冠に輝いた。
2022年北京大会では女子団体パシュートで銀メダル、個人1,500mで8位入賞を果たした。
同年4月5日に現役を引退。テレビやイベントへ出演するほか、全国の教育機関や企業を対象に講演活動を行っている。

 

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