現在、西武渋谷A館4階にてポップアップストアを開催中のcarutena(カルテナ)は回収した古着や布切れを小物やバッグ等にリメイクして販売を行うことを通して、衣服の大量廃棄による環境問題解決に取り組んでいるファションブランドです。上智大学の学生が始めたcarutenaは、服飾専門学生や他大学の学生も参加し、2023年4月に活動3周年を迎えます。carutenaがこれまで回収した古着の数は2月現在、826着に登ります。
ポップアップストア期間中のお忙しい中、carutenaの共同代表の塩谷菜歩さん(大学2年生)、企画課の小笠原萌(大学2年生)さんにお話を聞くお時間をいただきました。
「環境に良い」を付加価値に
ーcarutenaの活動について教えてください
塩谷さん(以下、敬称略):
carutenaの活動には着なくなった洋服から制作したリメイク商品の販売と、出張授業を通じた啓発運動の2つの軸があります。リメイク商品の販売は、自分たちで古着を回収してバッグや小物にリメイクをしています。主な回収手段は、インスタグラムのストーリーで回収日時と場所の告知や、ウェブサイトのフォームからの古着回収の問い合わせです。また、ポップアップストアでも古着回収をしています。もう一方の啓発運動では、衣服の大量廃棄による環境破壊や、生産過程における児童労働や労働搾取の問題を知ってもらうために、学校や図書館で出張授業を行い、子供たちにファッション産業が抱える問題について伝えています。
ーーリメイク商品はメンバーの方々の手作りですか?洋服の販売もされていますか?
塩谷:
シュシュやアクセサリーなどの小物は自分たちでデザインから制作までします。巾着やバッグなどはデザインまで行い、制作は委託しています。デザインやサイズ感を流行に合わせることが難しいので、洋服から洋服へのリメイクをする予定はありません。ジェンダーなどに関係なく誰にでも手に取ってもらいたいと思っているので、小物のリメイク商品をメインに販売しています。
ーーリメイク商品となると、やっぱりいまだにコストがかかってしまうイメージがあります。より多くの人にそういった商品を手に取ってもらうためにはどのような工夫が必要だと考えますか?
塩谷:
現在、carutenaでは商品制作にあまりコストはかかっていないんです。今回のようなポップアップストアのスペース等も、carutenaの活動に共感してくれた企業の方々に協力いただき、無償で開催できています。現状で外部に制作を委託しておりコストがかかっている商品も、メンバー内で全て制作していきたい。また、carutena商品のデザインを担当している開発課のみんなで意見を出し合って、趣味が偏らないように、より多くの人に素敵だと思ってもらえる商品のデザインを考えています。ただ「環境に良い」だけでは多くの人に手に取ってもらえない。だからこそ、「このバッグ可愛いな、素敵だな」から「あ! 可愛いだけじゃなく、環境にも配慮された地球に優しい商品なんだな」という風に「環境に良い」を付加価値にしたいと思っています。
“みんなの”環境問題であることを自覚する
ーー「衣服による環境問題を解決したい」という思いを抱き、形にしていく上で苦労したことはありますか?
塩谷:
私は大学1年生の時にcarutenaに参加しました。当時はSDGsやサステナブルという言葉が今ほど多く流通していなくて、環境問題を話題にすると「意識高いね」と少し遠巻きにされることもよくありました。でも活動を続けるうちに、周りも変化していって、活動に対する理解が増え、友達がポップアップストアに来てくれるようにもなりました。以前、原宿でポップアップストアをしたときは、「環境に良い」や「古着をリメイク」に興味を持って足を止めて商品を見てくれる人が少なかったんです。その時に改めて、環境問題を一人一人が自分事として捉えることが大切だなと思いました。
ーーお二人は幼い頃からファッションが好きだったんですか?
塩谷:
大好きでした! 学生の間ってお金があまりないから、多くの人が安い服を買うと思うんです。実際に私もそうでした。でも高校生の頃に読んだ本で、「ファストファッション」による、短期間での衣服の大量生産・大量廃棄が、環境問題につながるということを知ったんです。さらに、発展途上国の子どもたちの労働搾取や、人権侵害が多くあることを知ってショックを受けました。そして、衣服を廃棄することも環境破壊に繋がっていることを知って、自分が何かその問題解決に貢献したいと思ったんです。
小笠原さん(以下、敬称略):
私も大好きでした。好きだからこそ、衣服の大量廃棄が環境に悪影響を与えているということを知った時はとても悲しかったです。その悪影響に自分が加担することも嫌だと思って、carutenaで活動することを決めました。
ーーリメイク商品をデザインする上で大切にしていることはありますか?
塩谷:
可愛くても、壊れやすかったら意味がないので、クオリティも重要視しています。今後は、デニムコレクションを展開しようと思っていて、デニム生地で色々なリメイクをして、ブランド感を出して行きたいなと思っています。古着だけではなく、革の工場から廃棄予定のレザーなどを譲っていただいたりもしているので、もっとたくさんの素敵なリメイク商品を作り出していきたいです。
多様性で溢れる世界で「唯一共通」する環境問題
ーーお二人が理想とされる世界はどんな世界ですか?
小笠原:
私が理想とするのは、色々な人と関わっていく中で、お互いが認め合って、受け入れ合う、壁のない世界です。この世界は多様性に溢れていて、例えば性に関する悩みや、それぞれが抱えている問題もたくさんあるけれど、一人一人が尊重されるあたたかい世界になったら良いなと思います。
塩谷:
この地球に住んでいる人全員に、唯一共通している問題が環境問題だと思っているので、みんなが自分ごととして環境問題を意識して行動するような世界になってほしいです。人権や環境保全に配慮した、エシカルな商品や行動が少数派から多数派になって、一人でも多くの人が、小さなことからでも意識し始められたら! と思います。
ーーこれから渋谷とどのような関わりを持っていきたいですか?
小笠原:
渋谷は日本中から多くの若者が集まる街の一つで、発信力も影響力もあると思っています。その発信力や影響力などを通して、carutenaのような環境問題に取り組むブランドをたくさんの人に知ってもらって、たくさんの人にリメイク商品を届けていきたいです。
塩谷:
ファッションの街と言われる渋谷で、これからもっとポップアップストアやイベントを開催し、若者はもちろん幅広い年代の方にcarutenaの商品を手に取っていただけたらと思います。その中で、環境問題に思いを寄せる人が一人でも増えてくれたら嬉しいです。
ーー最後にcarutenaの夢、今後やっていきたいことを教えてください
塩谷:
メンバーとよく話している大きな夢はcarutenaを「大学生みんなが知っている当たり前のブランド」にしたいということです。人々にとって、環境問題が身近な存在となるきっかけにcarutenaがなれたらと思います。これからはもっと規模を大きくして、リメイク商品を使ったファッションショーも行っていきたいです。
また、carutenaは4月に3周年を迎えるので、それに伴って単独イベントとして「carutenaフェス」を渋谷周辺で行いたいと思っています。詳細は決定次第お伝えしたいと思っているので、ぜひお越しください!
環境問題に対して何か行動しようと思っても、どんなことから始めれば良いのか分からない人も多いかもしれません。そんな中で、carutenaのようなブランドの活動を知ること、SNSなどで情報を広めること、商品を買う、などといった小さなことからも環境問題の解決に貢献することができます。どんなに小さなことでも、みんなが少しづつ行動を変えていけば、やがて大きな変化を生み出すことにつながります。これから何百年、何千年先も人や動物が生きていける地球を守っていくために、全員が環境問題を自分事として捉え、行動に移していくことが大切だと感じました。
2月18日まで開催中のcarutenaのポップアップストアに足を運んでみてください!
◾️carutenaポップアップストアイベント
期間:2023年2月18日土曜日まで開催
場所:西武渋谷店A館4階10:00〜20:00
公式リンク:https://lit.link/CARUTENA
◾️塩谷菜歩 carutena 共同代表
2021年春 学生団体carutenaに参加
2021年08月 フリー・ザ・チルドレン・ジャパン主催
We Talk “SOCIAL” 大学生メンバー企画イベントにてオンライン授業の実施
2021年10月 世田谷区立中央図書館出張授業
2022年02月 環境省主催 かんきょう講演会「サステナブルファッション~日々のくらしと地球の関係~」出演
2022年03月 Lenovo Japanとのコラボ企画実施
2022年03月 Fashion Snap 掲載
2022年04月 日経デザイン4月号掲載
2022年07月 新潟県長岡市 まちなかキャンパス長岡にて出張授業
2022年10月 学生新聞掲載
2023年01月 小学館Steenz『気になる10代名鑑』掲載
2023年01月 NHKのInstagramアカウント『地球の未来』出演
2023年01月 淑徳高等学校にて出張授業
◾️小笠原萌 cartena 企画課
2022年05月 湘南アップサイクルフェスタ出店
2022年10月 新宿ルミネエストPOP UP開催
2022年11月 carutenaフェス開催
2023年01月 淑徳高等学校にて出張授業
2023年02月 渋谷西武POP UP開催