地域と共に歩む老舗「渋谷西村フルーツ&パーラー」専務取締役 西村元孝さん

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ハチ公前から見渡すスクランブル交差点の先はTSUTAYAやセンター街入り口、109などがある渋谷の象徴といえるエリアです。そんな渋谷の顔ともいえる場所に、大きなフルーツの看板があるのを見たことはありませんか?

渋谷の一等地でフルーツの販売、フルーツパーラーを営む「渋谷西村フルーツ&パーラー」は1935年(昭和10年)に創業者・西村正次郎さんが現在の場所に開業し、90年近くお店を営んでいます。

今回は創業者の孫にあたる専務取締役の西村元孝さんにお話を伺いました。

 

 

西村果実店の渋谷支店としてスタート

「元々は祖父の兄が明治43年に駕籠町、現在の文京区に「西村果実店」を開業し、弟の祖父がそれを手伝ったのが始まりです。

なので、果物専門店として110年以上の歴史があるんですね。そこから、昭和10年に祖父が渋谷へ支店を出したそうです。

祖父はとても真面目な人で、自分の足で東京中を靴が埃まみれになるまで歩き回り、自分の目で何日もハチ公改札の前で人の流れを見たり……今でいう流動調査を一人で行い、惚れ込んだ街が渋谷でした。

当時はまだ発展前の渋谷ですが、そこで100坪以上の土地を借金して買ったそうです。その頃からハチ公は大人気で、祖母は餌をあげたそうですよ。」

▲創業者、西村正次郎氏

 

「当時からフルーツパーラーは東京にいくつかありました。せっかくなのでうちも始めようと翌年の昭和11年に果物販売だけでなく、果物をメイン食材とした喫茶業、フルーツパーラーをオープンさせました。

そこから、父と叔父たち、今は兄と私で三代目といったところです。」

 

まさに渋谷と共に年を重ね、渋谷と共に発展してきた「西村フルーツ&パーラー」。

それは西村さんも一緒で、ご自身も長い間渋谷という街を見てきました。

 

「私自身は生まれは渋谷区ですが、育ちは世田谷区です。

小学校は渋谷を経由して通っていて、ちんちん電車に乗って通学していたんです。

昭和43年にはバスに切りかわったので、一年くらいしか乗らなかったけれどよく覚えています。

渋谷の駅も、現在の地下鉄の駅なんかもまだ路面にあって……。

昨今、渋谷は100年に1度の再開発なんて言われているけど、戦前からも鉄道や道路を中心にずっと変わり続けて街が成り立っているなぁと思いますよ。」

 

 

「渋谷は東急百貨店や西武百貨店のような大型店が牽引してこの街を作ってきたところがあると思います。

今も再開発で新しいビルが作られていますが、ただのデベロッパーではなく、街と共に育つ商業施設、複合施設を作るんだといろいろなプレイヤーが渋谷の街を盛り上げています。

そんなプレイヤーにすがるのではなく、私たち商店街や振興組合に加盟している、地べたに足をつけた商業者が横のつながりを大切にし、大手とも手を取り合って協力して街を作っていけたらいいなと思います。」

 

そう、話す西村専務。ご自身にとっても、西村家にとっても渋谷は特別な街であり、現在は『道玄坂商店街振興組合』では理事を務め、地域貢献活動にも積極的に参加されています。

 

時代と共に変化していく「渋谷西村フルーツ&パーラー」

せっかくの機会なので西村専務が入社してから現在までのお話も伺ってみました。

 

「一族経営なので、父や叔父たちがそうだったように、すぐに西村に入りました。

自分の親や祖母が一生懸命やってきたものなので、自然な流れでした。

東京の人であれば知ってくれている果物屋ですし、学生時代は友達を連れてきてご馳走したこともあったりなんかしてね。

どこかで自分の誇りだったのかもしれませんね。」

 

 

「もちろん、入ってからは大変なことも多かったです。

バブルがはじけた頃は、お中元やお歳暮が減ったりしてね。

そこからは原点に戻って、美味しいものを多くの人に食べてもらうためにはどうするべきかと考え直し、オリジナルのフルーツ加工品にも注力して外注していたものを自社で作る見直しをしました。」

 

老舗高級フルーツ店でありながら、時代と共に変化していく「渋谷西村フルーツ&パーラー」。

渋谷という多様性と共に歩む街だからこそ、フルーツパーラーとしても進化していくのでしょうか。

そんな西村さんには新たな挑戦があるそうです。

 

「日本では昔から果物は献上品、今でもお見舞いやギフトとして重宝されています。

そんな日本のフルーツの素晴らしさを存分に詰め込んだ最高級の「キング オブ パフェ」を始めました。

厳選された旬の最高級フルーツだけで贅沢に作ったパフェです。

そのこだわりはフルーツだけでなく、上部には金箔で全面を覆い尽くした特注のチョコレート、特注デザインの江戸切子のパフェグラス、金の蒔絵風オリジナルカトラリーなどすべてが最高の一品です。

今後インバウンド需要が回復したら、外国人観光客にも注目されて盛り上がってくれると嬉しいです。」

 

 

「結局はたくさんの人に美味しいフルーツを食べて欲しいということなんですよね。

日本人のフルーツ消費量は欧米の半分とも言われています。

どうしたら若者のフルーツ離れを食い止められるか向き合っていきたいと思っていて、若い子や修学旅行生でも気兼ねなく食べられるような値段設定のパフェやデザート類も用意しています。

フルーツの良さを再認識して、もっと消費が増えてフルーツ業界が盛り上がっていくといいですね。」

 

日本のフルーツ業界、そして渋谷の街をも牽引する「渋谷西村フルーツ&パーラー」ですが、見据えているのは明るい未来。

全国、海外から渋谷に訪れる人も増えてきた時に、笑顔でフルーツを頬張る姿がたくさん見られるでしょう。

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