渋谷を世界の「Shibuya」へ!渋谷の魅力を立体的に体験できる観光サイネージをつくる 内野未唯さん

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▲渋谷センター街にて内野未唯さんと島野拓也さん

今回お話を聞いたのは株式会社Social&Cultural代表の内野未唯(みい)さんと株式会社E9Technologies代表の島野拓也さん。
みいさんは大学で都市生活の研究をしながら、現在は休学をして、社会と文化をテーマにソーシャルプロデュース事業に挑戦中です。
実はみいさんは、渋谷新聞の大学生ライターである中川花乃さんの友人でもあり、面白い人がいるから会って欲しいと言われて今回のインタビューに至りました。
そんなみいさんが、渋谷を舞台に新たなプロジェクトを立ち上げました。
プロジェクト名は「THE Shibuya Neo Attendant」。外国人向けにAIアテンダントによる観光案内マップをつくるというプロジェクト。共同でプロジェクトを進める島野拓也さんにも同席してもらってお話を聞いてみました。

渋谷好きの二人が意気投合しプロジェクトを開始

▲渋谷Spongeにて内野未唯さん、島野拓也さんと、大学生ライターの中川花乃さん

共同でプロジェクトを進める島野拓也さんは、企業や自治体向けにキャラクターAIのデジタルサイネージを使ったプロモーションサービスをしています。

お二人の活動のきっかけはなんだったのでしょうか。

ーー島野さん
「渋谷が好きで、大学在学時から14年間ずっと渋谷に住んでいます。僕は元々AIの研究と開発が本業なのですが、渋谷とデジタルは相性が良いのでポテンシャルを感じていました。AIなどのシステムと、キャラクターなどのエンタメ・デザインを掛け合わせて面白いこと・エモいことをやりたいと考えていた時に、みいさんの『ディズニーマップのような、渋谷をエンタメとして楽しめるマップをつくりたい! 訪日観光客向けに裏渋谷の魅力を可視化した地域Mapを製作しています』という話を聞きました。
世界の「渋谷」を舞台に、魅力を発信するデジタルサービス。
それはやらない理由がない、裏渋谷だけでなく渋谷でやろうよ! と盛り上がったことがきっかけです」

もともとみいさんには裏渋谷(道玄坂、円山町あたりを指す)をフィールドにメディアプラットフォームを作りたいという構想があり、これが2023年の3月に「TRUNK DONATION」という寄付プロジェクトに採択されました。

2021年〜2022年にかけて「円山町チャンネル」という組織を募り、Youtubeチャンネルの運営、ショートフィルムムービーの製作、地域で講習会、イベント、地域ツアーを実施していました。

参考記事:渋谷の「ラブホ街」をZ世代はこう楽しんでいる…女子大生を惹きつける「魅力の正体」

 

▲みいさんのYutubeチャンネル「円山町チャンネル」より

ーーみいさん
「海外でのバックパッカーの経験を経て、海外には日本や東京に強く関心を持っている人が大勢いること、想いと時間とお金をかけて日本へ来ることを知りました。しかし、訪日観光客の大部分の方が、渋谷ではスクランブル交差点とハチ公の写真を撮って帰ります。
日本に来た友人におすすめの場所を聞かれた際も、大好きで魅力しかない渋谷を提案したのですが、その魅力を体験してもらうには渋谷はあまりに複雑で、私が案内するしかないことがありました。より多くの方が日本のカルチャーの発信地として渋谷を楽しんでもらうこと、それを可能にする観光サービスをつくりたいと思っていた時に島野さんと会いました。
最先端技術を活用し、エンターテイメントを通じて『渋谷の街とカルチャー』を体験することや、言語の課題なども解決できるサービスが見えてきました」

ーーー島野さん
「渋谷のポテンシャルを活かし、渋谷だからこそできるチャレンジとして、アニメなどのジャパニーズカルチャーと組み合わせた最先端のデジタルマップを作っていきたいです。渋谷は日本のシリコンバレーになれる!!」

ーーみいさん
「私が思っていた訪日観光客向けの渋谷のマップは、それぞれのお店の情報や、地域の歴史や、そこにいる人が一つのマップ上にまとめられて相互的に関われるような仕組みがあったらいいんじゃないの?という構想です。
裏渋谷で地域の文化や歴史を発信してきたのは、そういったコンテンツを通じて人と人が集えるコミュニティをつくりたいからです。
実際に円山町に住んで、地域に入り込んで活動をしてきました。しかし、地域の人からはこの街を変える必要がないという声も聞きました。せっかく街に魅力があるのに、その魅力を伝えて継承していかないと魅力がなくなってしまうという思いがあります。なので、魅力を発信していって人の流動性をつくっていきたいと思っています」

デジタルを生業とする島野さんと、地域と文化を軸に活動を行うみいさん。
この2人が、「渋谷」を介して交差する。この姿もまた、渋谷ならではだと思います。アプローチは異なりますが、訪日観光客向けのマップをつくりたいと思っていた島野さんとみいさん。二人が意気投合して一緒にプロジェクトを進めることになったのは必然的な出会いのように感じます。

観光客の趣味趣向に合わせたデジタルマップ

では、二人が進めるAI・AR等の最新技術を活用した訪日観光客向けに渋谷を紹介するデジタルサイネージをつくるプロジェクト「THE SHIBUYA NEO ATTENDANT PROJECT」はどういったものでしょう。

ーーみいさん

「海外の観光客の多くは日本の文化に興味があると思いますが、まず渋谷駅に着いて、どこに行ったら良いのかわからずにつまずいてしまいます。
日本食を食べたい人が行きたいお店を見つけるといっただけでなく、その文化とか歴史がわかるとか、自分の趣味趣向をいれたらこのエリアを散歩したらいいよというレコメンドがあったり、ARと連動してコミュニケーションができたり、ここでこんなイベントやっているという、リアルな情報が可視化されるということをやりたいと思っています。

従来の地域マップは、媒体は紙で、道とその時の情報しか載せることができませんでした。なので、必然的に大衆向けの情報やデザインになります。これからの時代は、読み手や読み手の求めるものに合わせて『レイヤー』(見せ方)が変化する優しいマップが必要であると感じています。日本の技術と、エンタメ性のあるキャラクターを活用したMap3.0なるものを渋谷からつくっていきたいです」

このプロジェクトを始めるにあたって、観光客のニーズやペインをリサーチするために、観光協会などの分析データだけでなく、直接外国人に聞くことにこだわっていると言います。外国人もいろんな趣味趣向があるので、場所を変えて声をかけたり、日本にまだ来たことがない人には海外に行って聞くなどして何百人もの人に話を聞いたそうです。

渋谷は天然のテーマパーク

▲円山町にあるランブリングストリート

そもそも大学生のみいさんがなぜ渋谷、それも円山町・百軒店エリアに惹かれていったのか気になったので聞いてみました。

ーーみいさん

「大学の研究のテーマは渋谷の都市開発。みんなでひたすら渋谷を研究して何ができるのかを提案していました。渋谷との出会いはこれが一番最初です。
ほぼ毎日、渋谷を歩いていたときに、ここはめっちゃ面白そうって思ったのが円山町と百軒店のエリアです。この街は人間っぽい感じがします。街中に、意味がわからない、合理的じゃないものがたくさんあったりします。
よくよく調べてみると、そこには文化的な背景があったりして、歴史を紐解いていくとつながることがたくさんありました。実際に住みながら見てみると、独特なリズムや文化があって、人の息づかいを感じられる街だと思います。
例えばラブホテルの間を歩いていると、古くからある料亭が残っていたりとか。そういうことも一つ一つ、今ある全てに意味があるんですよね。
渋谷はどこも面白い場所です。その渋谷の面白いところをぎゅっと集めたのが円山町のエリアだと思います。

また途中で、地域を盛り上げたい! と、できることをするようになりました。実際に円山町に住んだりもして、地域を学ばせていただいていました。これが2年ほど前の話です。

今回のプロジェクトは、その中で生まれたメディアプラットフォーム構想が発端です。
それぞれのお店の情報や、地域の歴史や、そこにいる人が一つのマップ上にまとめられて、発信できたり、相互的に関われる仕組みがあったらいいんじゃないの?という構想です。

せっかく街に魅力があるのに、その魅力を伝えて継承していかないと魅力がなくなってしまうという思いがあります。なので、魅力を発信していって人の流動性をつくっていきたいと思っています」

▲円山町にある料亭三長

ーーみいさん

「渋谷の街っていろんな顔があって、ユナイテッド・ステーツのような感じがします。代官山があったり、センター街あたりの宇田川町、円山町、桜丘町、宮益坂あたり、それぞれが全部歴史や文化が異なります。
ディズニーランドに例えると、トゥモローランドやアドベンチャーランドがあるように、渋谷の街を分かりやすく区切ってみると、まるでテーマパークのようです。円山町エリアは『オールド渋谷』といった風にわかりやすく名前をつけておくと、そのエリアが好きな人がそこに行けばいいと思います。
例えばヨーロッパの人には、日本の先進的な超高層ビルがとても人気があります。それはヨーロッパには地震がないので古い建物が残っていて、最先端のビルが少ないからです。
だから「センターオブ渋谷」(渋谷駅周辺)はヨーロッパの方にとても人気があります。でもその中でこのマップを見た人が、日本の文化にも関心がある方だったら。え、オールド渋谷なんて書いてある、ここも行ってみようよ。じゃあ帰りは飲食店が沢山ある宇田川町を通るコースで行こうよ、とか。

はじめから日本の文化とかを知りたいという人は『オールド渋谷』に行った方がいいよねというように、キーワードを入れたらこのエリアがいいよというのを視覚的にわかるようにつくっています」

進化する街で文化を継承していきたい

▲渋谷百軒店の老舗ロック喫茶B.Y.Gの前で

最後にこのプロジェクトを通じて、みいさんが今後渋谷とどのように関わっていきたいか、渋谷でどのような活動をしてみたいか聞いてみました。

ーーみいさん
「一つ目は、渋谷を世界に伝える人になりたいです。
日本の魅力を海外に伝え、体験してもらう手段として、渋谷が圧倒的に強く、日本を代表するコンテンツだと感じています。そして何よりも渋谷が好きなので、熱を込めて発信したいです。

二つ目に、ひとりの渋谷のプレイヤーとして、よりよい街に向けて何かをつくる人でありたいです。今回のPJで言うと、海外向けのビジョンが先行していますがこのツールがあるからイベントをしてみようとか、街でアクションが起こったりしていくといった、相互的に発展するようなことがあるとよいなと思います。
メタバースなどの世界は渋谷が先駆けで発展していくと思いますが、その時にこのツールが渋谷のめっちゃいけてるツールとして認知されているとよいなと思います。

一個人としては、このツールだけでなく、これとか決めずに渋谷でいろんなことに挑戦したいです。
渋谷の人はエネルギッシュだし、新しいことに敏感で寛容なのでやりやすいです。
そういう渋谷の魅力がさらに加速するような世界になってほしいです。
いい意味で未知を楽しみたい!デジタルハッピーわくわく渋谷みたいな笑

そして街がどんどん進化していっても、その地域の歴史とか文化がわかる人がいてほしいですし、私自身もそういうところを大切にしていきたいです。
歴史や文化がわかる人が街にいないと存続しないと思います。高齢化が起こっているところでも、飲食店などで新しい住民と交わって仲良くなるうちに街の代謝が起こっています。
私は性格的にミツバチ型なので、いろんな花を転々としながら、いろんな人を繋ぐ役割になれたらと思います」

 

編集後記
インタビューに同席した筆者も20年以上前は建築学生、同じように街歩きをして文化や歴史を探っていました。
今回のインタビューを期に130年くらい前からはじまった円山町、100年前につくられた渋谷百軒店の文化を感じながら歩いて新たな発見がありました。
実は渋谷新聞では過去に渋谷百軒店や料亭三長を取材しました。
これからも渋谷の深いところを探っていきたいと思います。

 

◾️内野未唯 略歴
1.にんげん
溢れ出る探究心から、人生という名の「旅」を送っている。
2.株式会社Social&Cultural代表
地域・文化の領域を軸にしたコンテンツ、展示、イベントの企画・運営や、海外へ向けたPR・ブランディング事業から社会貢献に取り組むため挑戦中
3.東京都市大学(旧武蔵工業大学) 都市生活学部休学中
趣味:絵を描く、漫画を読む、日本酒の開拓、地域の歴史を紐解く、旅
マイブーム:ギター、バッティング

◾️裏渋谷エリアの過去の記事

渋谷の発展は渋谷百軒店から

古き美しき木造屋敷は100年後まで「料亭三長」三代目高橋千善さん

歴史と想いを込めた手打ち 讃岐うどん 麺㐂 やしま

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