2022年5月、渋谷と原宿の間に位置するカフェとギャラリースペースの複合施設JINNAN HOUSEにて、
福岡県出身、18歳の芸術家 奥村門土さんの個展「モンドくんから奥村門土へ」が開催されました。
これまで「モンドくん」として似顔絵をはじめ様々な芸術活動をしてきた彼が18歳になり、
本名の「奥村門土」として新たな一歩となる個展の開催中に、ご本人と父のボギーさんにお話を伺いました。
きっかけは、父から出される似顔絵のお題
ーー似顔絵アーティストとしてすでに著名な門土さんですが、描くようになったきっかけは何だったんですか?
門土さん(以下敬称略):
絵を描くのがもともと好きでしたが、ちょっと変わった環境で育ちました。父であるボギーがミュージシャンだったため、小さな頃からライブハウスに一緒に連れて行ってもらったりして、ボギーの友人達の似顔絵を描いていたのが画家としての始まりでした。それからはボギーが似顔絵のお題を毎日出すようになり、それを今もブログにアップし続けています。
ーー今回の個展のタイトルにもなっていますが、アーティスト名を本名にした理由はありますか?
門土:
意外とシンプルです。例えばおじいちゃんになっても「モンドくん」という名前だとさすがに違和感があるので、今回の18歳での個展から「奥村門土」という本名で活動しようと考えました(笑)。今回の個展ではモンドくんとして活動をはじめた小さな頃に描いたものから、奥村門土となるまでの流れになるよう、年代順に作品を展示しました。
作品の変化と新たなステップへ
ーー今回の個展開催にあたり、新たに挑戦した作品などはあるのでしょうか?
門土:
ここ半年くらいは個展に向けて、新しい取り組みを色々しました。最近のものはアクリル絵の具を使った作品が多いです。
これまで描いていた色鉛筆やペンの色づくりとはまったく違うので最初は苦戦しましたが、楽しく制作できました。
特に、この真っ赤な作品は「いくら」というそのままのタイトルなんですが、遠くから見ると赤一色なのに、近くに寄ると様々な赤があるという作品です。下地などがあるわけではなく、いくらに見立てた点を地道に一つずつ描いていくことで完成させました。最近の作品では一番時間がかかりましたね(笑)。
ーーこれはすごいですね・・・売約済みじゃなかったら、僕も家に飾りたかったです!
個展が無事開催されて一段落したかと思いますが、今後やってみたいことなどありますか?
門土:
海外で絵を描いたり、展示をやってみたいという思いはあります。
以前、台湾で個展をしたのでまた行きたいですし、ニューヨークにも行きたいですね。街の風景を写真に撮ったりするだけでも楽しいですよね。
様々な人種の方がいると思うので、似顔絵も描きたいですね。日本で描くのとは違うインスピレーションが期待できる気がします。
また、これまではコツコツと小ぶりな作品を制作して数をこなしてきた感じなので、大きい絵を描いてみたいです。過去すごく大きな絵の依頼を頂いたこともあるんですが、自分でもこれから描いてみたいと思っています。
今ここにいるのは、出会った皆さんのおかげ
ーー年齢で区別するものではないと思いつつも、18歳・アーティストという生き方は、同世代とはかなり違う道を生きていると思います。父親であるボギーさんもアーティストですが、不安になったりしませんか?
ボギーさん(以下敬称略):
幸運にも、門土本人に才能みたいなものがあったのかもしれませんが、それだけでは今日ここには居ないと思います。色んな意味で門土をすくい取ってもらえる環境があったんだと思います。
門土:
本当に今まで良い出会いしか無いよね。
ボギー:
門土が過去の人みたいに葬り去られない出会いがその時々であったんですよね。例えば、この個展が開催できるのも家族だけの力ではもちろんなく、福岡だと回kaiという飲食店さんが応援してくれていたり、東京でも応援してくれる人たちの力が大きく、そのお力添えがあって18年の集大成みたいな個展が実現できた感覚です。イラストから書籍の装丁のお仕事につながったり、映画のお仕事につながったり。そういうつながりが大きくて、バンド仲間やこれまでお世話になった人たちが個展期間中お祝に駆け付けてくれています。
ーー最後に、ご家族として大事にしていることはありますか?
ボギー:
お世話になった方々を大切にすること。それだけは厳しく言ってきました。僕ら家族のスタンスですが、アーティストとして大きな野望を抱いてそれに向かっていくよりは、一つ一つの出会いに感謝して、人との関係が深まったり、そこからまた輪が広がったりしていくことを大切にしています。その結果として社会とつながり、アーティストとして生活できると良いなと信じて活動を続けています。
◾️奥村門土 略歴
2003年、福岡に生まれる。3歳頃より絵を描き始め、小学生になると週末には似顔絵屋さんとして活動をはじめる。まっすぐ純粋に見たものを見たまま描くというスタイルで描かれる人物画が話題となり、2014年に初の画集「モンドくん」(PARCO出版)発表。そのほか雑誌「ヨレヨレ」の表紙や谷川俊太郎とのコラボ、瀬戸内寂聴「死に支度」、鹿子裕文「へろへろ」「ブードゥーラウンジ」の装画、「文學界」「東京新聞」の挿絵連載。メディアにも度々取り上げられ、東京や台湾、シンガポールでの個展開催など、国内外で大きな注目を集めている。フジロックなど全国のフェスにも出演するなど、その世界をさらに広げつつある。現在18歳。映画「ウィーアーリトルゾンビーズ」(長久允監督)にて2019年俳優デビュー。現在も毎日絵を描き、ブログに発表し続けている。
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