
外国人観光客にとって、日本は魅力的な観光地のひとつであり、その中でも渋谷は常に世界から注目を集めるエリア。渋谷を拠点に、インバウンド向けのサービスを提供するジェイノベーションズを経営するのは大森峻太さん。大森さんの事業は単なる観光案内にとどまらず、国際交流の促進やガイド育成、そしてSNSを活用した情報発信まで幅広く手掛けています。過去、渋谷のラジオ出演時にインタビューをさせていただいきましたが、今回はより大森さん自身にフォーカスしてインタビューをさせていただきました!
海外への興味を持ったきっかけ

高校2年生の時、オーストラリアへの修学旅行が転機となったそう。それまで海外には全く興味がなく、飛行機に乗るのも嫌いだったため、行きたくないという思いが強かったようです。しかし、親に「何十万円もかかっているのだから行きなさい」と言われ、渋々参加することに。
ところが、いざ現地に到着すると、目の前には未知の世界が広がっていました。英語が飛び交い、日本とは全く異なる文化に触れる中で、「自分の知らない世界がここにあった!」という衝撃を受けました。言葉はほとんど分からなかったものの、その雰囲気にすっかり魅了され、日本に帰国する頃には「いつか海外に住みたい」と強く思うようになっていたようです。
きっかけは「友人との案内」から
大森さんが観光ガイド事業を始めるきっかけとなったのは、友人とともに外国人観光客を無料で案内したことでした。「最初はボランティア感覚でやっていましたが、意外とニーズがあることに気づいたんです」
その後、渋谷区の応援もあって本格的に事業化し、インバウンド向けのツアーガイドサービスを展開するに至りました。現在では、外国人観光客向けのツアー提供に加え、ガイドの育成やSNSを活用したプロモーション、さらに地域活性化に向けた新たな体験型コンテンツの開発にも取り組んでいます。
「渋谷の魅力は、新しいことに挑戦する人を応援する風土があること。そして、変わったことを受け入れる開放的な文化があることです」と大森さんは話します。
ボランティアからビジネスへ

大森さんの活動がメディアに取り上げられると、「自分も参加したい!」という声が全国から集まり、わずか半年で仲間は200人ほどに。
その後、渋谷区観光協会の協力を得ながら、ツアー事業として本格化。ボランティア活動としての気軽さを残しながらも、事業としての持続可能性を確保するために有料サービスとしての仕組みを確立していきました。
渋谷の街を歩くと、スクランブル交差点やセンター街、ミヤシタパークといった観光名所が並ぶ一方で、知られざる歴史的スポットや地元の人々に愛される隠れた名店も多く存在しています。
そんな中、大森さんの観光案内では、観光客の国籍や興味に合わせた内容を提供することを重視しているそう。例えば、欧米の観光客は歴史的な背景を重視する傾向があり、スクランブル交差点の成り立ちや渋谷の発展の歴史を詳しく説明。一方、アジア圏の観光客はショッピングや食文化に関心が高く、おすすめの飲食店やショッピングエリアを案内するなど、柔軟に対応しているようです。
SNSを活用した新たな展開

大森さんはSNSの活用にも力を入れており、現在ではフォロワー数24万人(2025年5月時点)を超えるアカウントを運営し、日本の観光情報を発信しています。「SNSを通じて情報を届けることで、ツアー参加者以外の人々にも日本の魅力を伝えることができるんです」と大森さんは話します。
最近話題となった投稿のひとつが、「モスキート音」についての動画。日本では一部の駅や商業施設で若者のたまり場を防ぐためにモスキート音を導入しているが、その存在を知らない外国人には驚きの文化として映ったそうです。こうした視点で日本を紹介することで、海外からの関心を集めることに成功しています。
渋谷から世界へ
今後の展開として「体験型コンテンツの開発」に力を入れたいと話す大森さん。例えば、大阪では包丁作りの体験ツアーが人気を集めているが、渋谷にはまだそうした日本文化を深く体験できるプログラムが少ないといいます。
「渋谷の歴史や文化を活かした体験をもっと提供していきたい」
さらに、関西をはじめとする他地域への事業展開も視野に入れているそう。現在は渋谷を拠点としているが、すでに横浜など他エリアでもツアーを実施しており、今後はグループ会社を増やすことも計画しているようです。
ーーインタビューを終えて
大森さんの挑戦は、単なる観光ガイド事業にとどまりません。目指すのは、渋谷を拠点に「国際交流のハブ」となること。訪日観光客がより深く日本を理解し、楽しむための場を提供しつつ、日本人にも異文化に触れる機会を増やすことを目標としてます。
「渋谷は、新しいことに挑戦する人を受け入れる街。この街の特性を活かして、もっと面白いことを仕掛けていきたい」
その視線の先には、日本と世界をつなぐ未来が広がっているように感じました。
■大森峻太さん プロフィール
株式会社ジェイノベーションズ 代表取締役/ 渋谷区観光協会 観光フェロー
大学在学中に複数国で留学、卒業後に世界を巡り観光を学ぶ。帰国後、インバウンド観光専門の(株)ジェイノベーションズを設立し、渋谷の観光案内所運営やツアー企画、SNS「Fun Travel Japan」で20万人超に情報発信。現在は会社経営と並行し、自治体・行政のアドバイザーや大学講師として、観光現場と政策の両面から地域のインバウンド戦略に携わる。