渋谷区が所有している千葉県内房にある富山臨海学園のリノベーションするプロジェクト「千葉内房・渋谷『富山臨海学園』を再生、都市と地域の循環を生む新たな『臨海公園』へ」。現在実現に向け様々な取り組みをしているのは株式会社DE(以下DE)。今回はDEの共同代表でありクリエイティブディレクターの牧野圭太さんに渋谷ラジオの公開インタビューという形でお話を伺いました。
ープロジェクト概要ー
千葉「岩井海岸」にある渋谷区「富山臨海学園」。かつて渋谷の子どもが訪れて賑わった学園も2018年に廃校に。この場所を、民間の力で再生し、子どもだけでなく大人も学び楽しめる「臨海公園」へ再生します。渋谷(都市)と岩井(地域)をつなぎ、人や物を循環させる新たな地域のモデルへ!(CAMPFIREプロジェクトページより引用)
ークラウドファンディング1月末まで実施中ー
https://camp-fire.jp/projects/view/710451
驚きのクリエイティブディレクターへの歩み
ーーまずは牧野さんについて教えてください!
「2009年に博報堂に入社してからコピーライターを6年程やりました。その後独立して渋谷でクリエイティブの会社をずっとやっています。実はクリエイティブ職に就くつもりはなく博報堂に入ったのですが、あの会社天邪鬼なのでそういう人をクリエイティブ職に配属させるんですよね(笑)そこでコピーライターになったのがクリエイティブキャリアのスタートでした」
ーー学生時代はどんな学生さんだったのですか?
「実は大学、大学院と理系なんです。大学に全然馴染めなくて。高校までバスケをずっとやってたんですけど大学入ったらやることなくなって急に目的を見失いました。大学4年間でほとんど友達らしきものもできず、飲み会も苦手で行っていなかったのでその頃何をしてたかというと1日2冊くらい本を読んでいました。まだスマホがない時代なので毎日バッグに2冊本を入れて空き時間に読んでいました」
「現実から逃げまくっていて、逃げていた先が本でした。そこで何か言葉とか文章にまつわる素養が身についたのかもしれないです。今考えるとすごく自分にとって意味があったのかなと思っています」
牧野さんのコミュニケーションスタイル
ーー牧野さんは社会を良くするための広告をたくさん作っているイメージがあります。社会にフォーカスを当てているきかっけはなんですか?
「いくつかあるんですけど、わかりやすいので言うと大学時代に読んでた本の中の1冊に『戦争広告代理店』という本がありまして。その本には、戦争って物理的な攻撃だけではなくて、自分たちがいかに正しくて相手がいかに極悪非道であるかという世論を作ることが大切で、紛争を専門にする広告会社があると書かれていました。言葉1つで選挙がひっくり返るみたいな事例が載ってるんですよ。これを見た時に、言葉とかコミュニケーションみたいなものって実は社会に影響を与える要素があるんだって思ったのが広告業界に興味を持ったきっかけの1つです。やはり本に感銘を受けて、こういう力を世の中のために使えるんじゃないかみたいな思いを持っていました」
「広告業界に入社してみると、100%のものを101%とか105%にするためにものすごい努力をたくさんしました。寝れない日々を過ごしていたこともありました。誰かの心に残るだとか、商品が動くだとか、企業が喜んでくれるだとか、そういうモチベーションももちろんあるんですけど、何かこの流れる大金をただ流すのではなく、さらに社会を良くしたり面白いことのために使いたいと思ってました。広告費・コミュニケーション費を生産側に使って、みんなが共感して、企業や商品を好きになってくれたりと、今のSNSがある時代ではそういう構造が作れるんじゃないかっていうのを、博報堂に入社してからずっとモヤモヤ考えていて。そういうことに専念したいという思いで会社を辞めた後『広告がなくなる日』という本を書きました。同じ時間と労力をかけるなら何か社会が良くなるようなアクションを作っていけたらいいんじゃないかと思って提唱させてもらっています」
「4年くらい前から、渋谷区と一緒にもしも渋谷で震災が起きたらという『もしもプロジェクト渋谷』という仕事をやっています。震災が起きた時に経済活動立ち行かなくなるよね、だからこういった活動をやりましょうねということはリスクを減らすためのコミュニケーションだと思っています」
固有のエネルギーのある街、渋谷
ーー渋谷でお仕事することとか、渋谷と牧野さんの関係性を教えてください
「明確な理由があるわけではないのですが、会社を作る時に渋谷にしようという漠然としたものがあって2015年の起業からずっと渋谷にいます。渋谷って動いていますよね。場所によると思うんですけど、渋谷って小さい企業も含めて有象無象に動いている感覚があって、活動できるフィールドが多そうだなとか、シンプルに若くて勢いがあって、独自のエネルギーのある街だと思います
「そういったイメージで渋谷にしたんですけど、今振り返ってみてもそのイメージは間違っていなかったなと思います。今日のラジオ出演も知り合い経由で相談させてもらったら1週間くらいでこの場がセッティングされましたし(笑)この機動力みたいなものは渋谷ならではですね」
都心(渋谷)と地方(千葉)の連携プロジェクト
ーーそんな渋谷と関係するプロジェクト、現在クラウドファンディング中ですが 改めてどんなプロジェクトでしょうか?
「千葉県の岩井海岸という、チーバくんでいうとスネくらいの場所なんですけど、そこに富山臨海学園という渋谷区が所有している場所がありまして。渋谷区の子どもたちが自然に触れて共同生活をする林間学校の海版みたいなものが50年間くらい前からあったんですけど、2018年に廃校になってしまって。渋谷で生まれ育った人は行ったことあるんじゃないかな?その施設を渋谷区から貸付けしてもらって、民間が再生する事業を私たちDEが行なっています。再生するのにとてもお金がかかるのでクラウドファンディングをさせてもらっています」
ーーどんな場所にしていきたいですか?
「元々のコンセプトを生かしながら、やはり海と渋谷の人たちが子どもに限らず大人も自然に触れあうことができる場所にしていきたいですね。地球温暖化が進んで、海もすごく被害を受けているのでマリンアクティビティから環境について学ぶとか、SDGsの文脈も含めた施設を1年2年かけて生まれ変わらせていきたいと思います。また、半分公共半分民間のような公共的な場所にしたいと思っていて、みんなで公を作っていけるような場所にしたいです。」
「渋谷は都市で、岩井は地域だと思うんですけど、渋谷だって1つの地域であるという感覚をずっと持っていて、2つの地域が持っている資産は全然違くて。渋谷は大きいビルや企業がたくさんあって、人がたくさんいて、一方岩井は本当に人がいなくて。そういうギャップをある種循環させて、それぞれの価値をそれぞれに補い合えるっていう仕組みが作れる拠点になりそうだなとう感覚がすごくあります」
オフになれる渋谷、”オフ渋”
ーー最後に牧野さん自身、ここ渋谷で何をしていきたいですか?
「これから少なくとも5年は臨海公園を作って盛り上げていくことに踏み込んでいきたいと考えています。渋谷って何でもあるようで、わかりやすく言えば自然がないし、ゆとりが失われていくんじゃないかという危機感があります。今の渋谷の都市開発に対して最近の僕の考えは、渋谷をどんどん効率化してビルもいっぱい立ってお店もいっぱい入って欲しいけどそれに対して、岩井のような自然がある場所と連携してやっていくことが必要なんじゃないかと思っています。渋谷を拡張して、今回の件でいうと千葉だけど渋谷の離れみたいなものの環境を作れたらいいなと考えてます」
「1つキーワードとして、臨海公園を”オフ渋”と呼ぼうかなと思っています。オフになれる渋谷という意味で。基本的には渋谷でオンになって活動してるので、少し気持ちを落ち着かせた状態で新しい発想を生み出すことを繰り返す。ここ渋谷と岩井の好循環の1つになれる場所を作りたいなと思います」
ーー牧野さんのようなクリエイティブなお仕事をしている方ってオフの時間とても大切ですよね
「僕の中でアイディアが出る瞬間って、やっぱりスイッチを切った時なんですよね。一旦考えるのをやめて、お風呂に入ったり散歩したり、オフになることがオンに繋がるという不思議な構造だと思います。なかなかそれを渋谷の中で完結させようとすると難しいから、せっかくなら渋谷区が持っている岩井の学校が身体・時間・空間ごとオフになれる場所になるといいなと思います」
ーークラウドファンディング終了まであと少し、最後にメッセージをお願いします
「千葉に来てくれるだけでも嬉しいのですが、当初の目標である500万円は達成しましたので、ネクストゴールを1000万円に設定しました。実はトイレの改修費だけでも3000万円かかります(笑)応援したいなと思ってくださった方はぜひCAMPFIREを覗いてみてください。でもやはり来ていただけることが1番嬉しいのです。ぜひ海のアクティビティとか体験して、発信してもらえたら嬉しいです」
https://camp-fire.jp/projects/view/710451
■牧野圭太 略歴
DE Inc. 共同代表。09年博報堂、15年に独立し文鳥文庫を出版する文鳥社を設立。2020年より、DEを創業し、社会課題の解決を目指す企業コミュニケーションを軸足にクリエイティブ業務を行う。2020年3月に「広告がなくなる日」を上梓。