「はなあそび」を通してロスフラワーを救う RIN 中村佳世さん


薔薇、紫陽花、かすみ草、百合ーー。

花屋さんの前を通ると、1年中色とりどりの花があって癒されますよね。
実はその裏で、店頭に並ばなかった花がたくさんあるのを知っていますか?
キレイに咲いているけど、長さが足りなかったり、気候の影響で成長する過程で花の一部が傷んでしまい売り物にならなくなったり。
そういった市場に出てこない花や、店頭に出た後に傷んで廃棄されてしまう花を“ロスフラワー”と名づけ、救出するための活動をしているのが「RIN」という会社です。

今回インタビューさせて頂いたのは、2020年からRINフラワーサイクル*アンバサダーとして活動をしている中村佳世さん。中村さんは短大や専門学校で保育士養成の講師をするかたわら、ロスフラワーを救うために「はなあそび」というロスフラワーを使った親子造形教室を開催しています。
「はなあそび」を通して伝えたいこととは?と伺うと、花や子ども達への愛情や優しさだけでなく、中村さんのバイタリティ溢れるカッコいい部分も見えてきました。

ロスフラワーとの出会い

ーーいつ頃から花と触れ合っていたのですか?

元々、祖母が花好きだった影響で、庭の植物に水をあげたり、仏壇の花を変えたり、花を一緒に買いに行ったりと、小さい頃から花に触れ合う機会が多くありました。
中学生からは華道を習っていたので、学生時代はずっと花と触れ合っていたのですが、社会人になると多忙になり、だんだん花とは疎遠になってしまっていました。

 

ーー花と疎遠になっていた状況から、どんなきっかけでロスフラワーと出会ったのですか?

ロスフラワーと出会ったのは、コロナが世界中に猛威をふるい始めた2020年でした。

当時働いていた幼稚園は休園になり、講義を請け負っていた専門学校や短大も休講になってしまって、空き時間が出来たんです。コロナで先行きの見えない毎日でしたが、この時間に久しぶりに花を生けてみたら、花からパワーを貰えた気がしてとても癒されました。

花のおかげで前を向くことができたのをきっかけに、再び花へ目を向けるようになって“ロスフラワー”という言葉を知りました。小さい頃から花が大好きで、華道の師範でもあるのに、廃棄されてしまう花がある現状に目を向けていなかったと気付かされたんです。

この時期はコロナ禍に入ったばかりで結婚式やイベントが激減してしまい、行き場を失った花がたくさんありました。少しでも花に何か恩返しをしたくて、実際にロスフラワーを購入してみたんです。「廃棄される予定の花」なので、状態が不安だったのですが、届いた花はとても綺麗な状態でした。

 

▲中村さんが初めて出会ったロスフラワー

 

ーー廃棄される花には、とても見えませんね

そうなんです。箱には農家さんからの「花を救出してくださってありがとうございます」といった内容の手紙が入っていて、それを見て涙が出そうになりました。

この出来事があったので、より一層「私にパワーをくれた花のために何か恩返しをしたい」という気持ちが強くなりました。ちょうどそのタイミングでRINのフラワーサイクルスクールという講座を受講して、フラワーサイクル*アンバサダーになりました。

親子造形教室「はなあそび」

ーーフラワーサイクル*アンバサダーとしてどの様な活動をなさっているのですか?

 RINではロスフラワーを使ってイベントの装飾をしたり、アート作品を作ったりと、様々な方がフラワーサイクル*アンバサダーとして花のある暮らしを提案しています。
私は子どもと一緒に何か作るのが好きなので、ロスフラワーを使った「はなあそび」という親子造形教室を行っています。花を使った作品作りを通して、小さい頃から花に触れる機会を増やすことを目的としています。

教室では、「農家の方がいて、花が咲く畑はこんな様子なんだよ」と最初に伝えています。花屋さんにある切花の状態しか知らず、花を育てているのは花屋さんだと思っているお子さんもいるんですよね。
他にも、花を見て、触って、自分の言葉で表現するのを大切にしているので、あえて花の扱い方などは伝えていません。
「臭い!」と言ってしまったり、花を強く触って折れてしまうこともありますが、自分自身で花とはどんなものなのか、どんな風に扱うと良いのかを学んでもらっています。

また、普段は折り紙などの制作活動が苦手なお子さんも、花を生けることは最後まで夢中になってやれたりして、普段とは違う姿が見られたりもします。
花を通して、お子さんの新しい「好き」が発見できると良いなと思っています。

 

ーー「うちの子どもは興味がない」と決め付けずに、色んなことにチャレンジするのが大切なんですね

 そうですね。子どもの感性は素晴らしくて、大人は花材がたくさんあると、それを目一杯使って作品を作ることが多いのですが、子どもはシンプルでオシャレな飾りつけをする子どもが多いんです。子どもが親に「そんなにたくさんお花を使うとごちゃごちゃしちゃうよ!」なんてアドバイスしたりして、子ども達にはたくさん驚かされ、楽しいです。

他にも驚かされたのは、小学校4年生の授業に呼んで頂いた時です。その小学校では、総合の授業でSDGsの取組みとして「花の廃棄について考える」ことになり、「花の廃棄について詳しい花の専門家に話を聞いてみよう」と、インターネットで私を見つけ、自分達でアポイントの電話をかけてきてくれました。

アポイントの電話も驚きましたが、授業に伺うと「世界的に生花の廃棄は出ているのか」「小学生の僕たちには何が出来るのか」と大人顔負けの質問をたくさん投げかけられました。
そういったやり取りを通して、花の廃棄を少なくするために「バスボムの中にドライフラワーを入れれば、小さい子どもでもお風呂で楽しみながら花を手に取ることが出来るからいいんじゃないか」など、様々なアイディアが出てきて、本当に子ども達には驚かされます。

 

▲「はなあそび」で作った作品

 

ーー本当に素敵な作品ばかりですね。農家の方もきっと嬉しいですね

ロスフラワーを売ってくださった農家の方には、「はなあそび」を含めRIN全体でどんな風に使用したか必ずお伝えしています。

そうすると、「この位の短い物でも大丈夫なんですね」「こんな状態でも使えるんですね」と農家さんも安心してくださったり。市場に出荷できないにしても、やはり手塩にかけて育てた花なので、活用されて喜んでくださっています。

教育を学ぶために、世界一周

ーー世界一周をしたと伺いました。なぜ世界を旅されたのですか?

世界一周の旅をしたのは、フラワーサイクル*アンバサダーになる前の話です。
8年間幼稚園教諭をした後に、「自分自身が成長しないと、子ども達にもっと色んなことを教えられないな」と感じたのがきっかけで、3〜4ヶ月くらい旅をしました。

旅を通して「国によって政治や宗教が違い、色んな要素が相まって教育を行っているので、そのまま日本に持ってきて教育するのは難しいんだな」など、様々なことを学びました。

旅先で知り合った若い子どもと話す内に、保育園・幼稚園の先生を目指す学生に興味が湧き、旅をして帰ってきた時には幼稚園教諭だけでなく、保育士の養成にも携わりたいと思うようになっていました。これがきっかけで、保育士養成に携わりました。

 

ーー今後の目標はありますか?

夏には公益社団法人東京青年会議所渋谷区委員会主催の「花の日イベント」で、一般のお客様にロスフラワーを3本選んでもらってブーケを作るワークショップを開催しました。

 

▲「花の日イベント」の様子

 

普段は神奈川県での仕事が多いので、生まれ育った都内での活動をもっと増やしていきたいです。
コロナの影響で実際に子ども達と畑に行って、花が育っていく様子などを見せる機会がなくなってしまいました。今後はそういった活動が少しずつ出来るようになると嬉しいですね。また、花育部(はないくぶ)というものをRINで発足させたので、花育部のワークショップなどにも力を入れていきたいです。

幸福度が高い国は花を飾る人が多いという統計が出ているので、日本でも、もっと花に目を向けて頂くために、今後も花の魅力を伝える活動をしていきたいと思っています。

 

筆者も花が好きなのでガーデニングを楽しんできましたが、市場に出せない花があるなんて驚きです。生花店で花を買うことで廃棄量を減らす活動に貢献できると知ったので、もっと利用しようと思いました。中村さんからドライフラワー入りバスボムや、芋掘り後に廃棄するツルを使ったリースの作り方を教えて頂いたので、娘と一緒に作って、廃棄される花について伝えていきます。

 

 

◾️中村佳世 略歴
花と緑の社会実験室「soe」運営メンバー、コミュニケーションフラワーアドバイザー、華道師範など多岐に渡って活躍。RINフラワーサイクル*アンバサダーとして「はなあそび」というロスフラワーを使った親子造形教室を行っている。

Instagram @hanna_kiyy

WEB https://kayo-hanaasobi.com/

RIN WEB https://lossflower.com/

 

◾️年内イベントなど
・「HELLO! “ヘンテコ”クリスマスフェス」にて
『ロスフラワーのスタンプでエコバッグ作り』ワークショップ開催
12月25日(日) 10時〜15時 浜松町ビルディング シビックホールディングス オフィス22階https://henteko-christmas2022.hp.peraichi.com/

 

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