渋谷で生まれる共創のかたち vol.05「人脈は“一緒に動いてくれる人”のこと」

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渋谷のセンター街の清掃活動やパトロールをやっているということを、前回の記事でも伝えましたが、私たちがずっと気になっていたのが、ステッカーや落書きだらけのグレーや緑の“箱”の存在があります。
みなさんも見たことがあると思いますが、あの箱は正式には「分電器」といいます。

東京電力が所有する地上機器で、街中の電力を安全に届けるための、大切なインフラ設備。なくてはならない存在なんですが、実は景観を大きく損ねる“見落とされた存在”でもありました。多数のステッカー、落書きなど、私が渋谷に関わってきて、この25年間、ずっと気になっていたもので、この分電器の状態を見るたびに「どうにかならないのかな」と、心のどこかでずっと引っかかっていたんです。でも全く動かないし、変わらない。

で、あれば、やっぱり自分が率先して動かないとと思い、渋谷センター商店街振興組合としてなんとかしようと立ち上がりました。
とはいえ、分電器は東京電力の所有物。勝手に清掃するわけにはいきません。そこでまずは渋谷区、東京電力、渋谷センター商店街振興組合の3者を巻き込み、さらにシブヤキャンバスも加え、4者連携のもとで、分電器の清掃プロジェクトを立ち上げました。

この話し合いを始めて、半年、実は先日、初めての合同清掃を実施できました。私も現場に立ち、1時間かけてシールをはがし、落書きを消しました。一つひとつ丁寧に、地味な作業ではありましたが、やっと動き出せたことが、本当に嬉しかったし、感動しました。というのも、行政、巨大企業のからむ案件は、通常だったらなかなか動かないもの。調整には数年はかかると言われていたことをわずか半年でできたことが今回の何よりの成果です。

今回のプロジェクトのポイントは、ただ社会活動を行なっただけでなく、分電器にアートを掲載することで景観を改善し、さらにその施工費用を広告収入でまかなうという、サステナブルな仕組みづくりを作り上げたことです。分電器の清掃は実はとてもお金がかかります。1台あたり数十万円、街の清掃に必要な20台ともなれば数百万円というコストに。
街をきれいにしたいという思いに賛同はしてくれるけど、いざ元手はどうするの?というと簡単な話ではありません。だからこそ、「街をきれいにすること」と「地域に還元できる経済の循環」を両立させることが大切だと感じています。

まずは“街ファースト”で考える

(左)清掃前から→(右)清掃後はキレイに。

渋谷区という行政、東京電力という大きな企業を動かして進めることは並大抵ではないことでした。やりたいけど、やれない、どうしたらいいかわからないという課題に向かい、解決に向けて動き出すことができたことが大きい。

まず街をきれいにすること。それができて、はじめて次のステップに行ける。
いきなりビジネス目線ではなく、まずは“街ファースト”で考えること。
この2点が、成功の要因だと感じています。

今回の合同清掃を通して、行政(渋谷区)、大企業(東京電力)、地元の商店街、アートチームという異なる立場の人たちが、同じテーブルで渋谷の未来を語り合うことができました。その事実だけでも、大きな一歩です。プロジェクト全体で見れば、まだフェーズ10のうちの2段階目くらい。それでも、25年間まったく動かなかった課題が、動き出したことが本当に大きな成果です。

このように、街に関わる課題解決やプロジェクトは、個人や一つの会社だけでは動かすことはできません。だからこそ、今回は僕自身の“多面性”を活かしました。渋谷センター商店街振興組合の常務理事としての顔、渋谷で暮らす一人の住民としての顔、そして不動産・観光・店舗など複数の事業を展開している経営者としての顔。場面に応じて、最も効果的な立場を選びながら、プロジェクトを進めてきました。

ビジネスという側面でも、個人としてでもなく、今回は渋谷センター商店街振興組合の鈴木大輔としての成果だと感じています。

そんな大きな成果を果たした、組合の理事としての私ですが、実は最初の方は苦手でしかありませんでした。飲み会も得意じゃないし、発言するのも緊張する。それでも顔を出し続けて、呼ばれればすぐに駆けつけて、センター街のために動く。正直「こんなに忙しいのに会合今日はいいかな?」なんて思ったことも、何度もあります。でも、参加し続けてきたからこその信用もできたし、人脈がここで築くことができた。

思うに、人脈ってただ知り合いが多いとかではなくて、何かをやりたい時に助けてもらえるかどうか。何か目的をやり遂げるために一緒に動いてもらえるのが人脈なんだなって最近感じています。

今回はまさに、長年の商店街での実績がようやく実り、人脈を活かせたからこそ実現できました。
このプロジェクトが進んでも、まだ他の課題もたくさん出てくるかもしれません。例えばゴミ箱の再設置や、街の壁面活用、景観ルールの再構築なども。

ですが、一人ひとりが、自分の足元から整えていくこと。その積み重ねが、渋谷の未来にもつながる大事なことだと感じ、これからも、小さいことから一歩ずつ進み続けようと思っています。

渋谷の魅力は、“多様な人と、自由な空気と、想定外が起きる余白”。それを残しながら、次にバトンを渡せるように、これからも一歩ずつ、動いていきたいと考えています。

一緒に渋谷の未来を創る仲間を募集しています
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