渋谷から日本の教育が変わる? 若者と政治家が本音でぶつかった「若者政策共創LAB.」

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各分野で活躍する若者たちが集い、「政治」を社会課題解決の有効な選択肢の一つとして再定義することを目的に活動する団体「若者政策共創LAB.」。 政治との接点を作るオープンなイベントのほか、ジャンルを問わず「圧倒的な知識量」を身につけるための週に一度の勉強会を開催。インプットとアウトプットの両輪で、政策提言の力を磨いています。

2025年11月30日に渋谷spongeで開催したイベントのテーマは、日本の根幹であり、私たち自身が一番の当事者である「教育」です。

このイベントには、現役の大学生や若者たちが集結。ゲストに東京都議会議員の龍円あいりさん(渋谷区選出)を迎え、「未来」を見据えた熱い議論が交わされました。

政策を実現する「3つの目」とは?

ダウン症のあるお子さんを育てるシングルマザーでもある龍円さん。都議として「インクルーシブ(包摂的)な社会」の実現に奔走してきました。

龍円さんから若者たちに授けたのは、政策を形にするための「3つの目」という視点です。

  • 虫の目(現場の視点): 「公園で遊べなくて悲しい」といった、一人ひとりの小さな困りごとに寄り添う視点。
  • 鳥の目(俯瞰の視点): 世界ではどうなっている?と広く見渡し、日本の立ち位置を客観視する視点。
  • 魚の目(潮流の視点): 今、社会はどう動いているか?という流れを読み、政策を打つタイミングを見極める視点。

「日本にはびこる『分ける教育』を変えたい」と、ご自身の経験から、虫の目(当事者の痛み)と鳥の目(海外のスタンダード)を行き来し、「インクルーシブ公園」などを実現してきたエピソードに、参加者たちも真剣な眼差しで聞き入っていました。

ワークショップを通して若者たちが描く4つの未来

インプットを得た後は、いよいよ若者たちによる政策立案タイム。4つのチームに分かれ、現状分析から「行政がやるべき理由」までを徹底的に議論しました。飛び出したアイデアは、どれも既存の教育システムに風穴を開けるものばかり!

1. 1億総才能開花政策 ~「J-PASS」で偏差値を過去へ~
最初のチームが掲げたのは、「偏差値偏重からの脱却」。
勉強ができるか否かという単一の物差しで自信を失う若者を救うため、新たな評価プラットフォーム「J-PASS」を提案しました。 テストの点数だけでなく、リーダーシップややり抜く力などの「非認知能力」をAIで可視化。「君にはこんな才能があるよ」と社会が提示してくれる未来を描きました。

2. 生きていく力 ~学校を社会に開く~
「因数分解は習うのに、確定申告は習わない」。そんな学校と社会のギャップに注目したチームは、教育の「アウトソーシング化」を提言。 教員だけでなく、地域の企業や大人を巻き込んだ「探究学習」を必修化し、学校を閉じた空間にせず、社会全体で子供を育てるエコシステムを提案しました。

3. 未来の新教科 ~好奇心が最強の武器~
AIが台頭する20年後、人間が持つべき武器は「好奇心」だ!と定義したチーム。 彼らが提案したのは、既存の5教科(国数英理社)の撤廃と、新教科「金・政・芸・教・人・社」(金融、政治、芸術、教養・倫理、人間関係、社会・文化)の導入。「知識はAIに聞けばいい。学校は『知りたい』に火をつける場所だ」という言葉が印象的でした。

4. 子どもが夢を持つ ~渋谷区発・教育バウチャー~
最後のチームは、渋谷区という地域に特化した具体策。「ピアノを習いたいけどお金がない」といった体験格差を埋めるため、区が認証した質の高い学校外教育(塾、習い事、体験活動)に使える「教育バウチャー」の配布を提言。 「体験」を贅沢品ではなく、すべての子供が持つべき「権利」として保障しようという力強い提案でした。

「体験」は贅沢品か?権利か?

発表後のディスカッションでは、龍円さんも交えて白熱した議論が展開されました。
特に深まったのは「体験格差」について。「読書は安価にできるが、特別な体験には親のリソースが必要」という現状に対し、「だからこそ行政が投資すべきだ」という若者たちの声。

龍円さんからも、「まさに今、都議会でも『学ぶ権利』と『体験の重要性』は大きな論点。皆さんの提案した『評価軸の多様化』や『インクルーシブな視点』は、これからの東京の教育を変える重要なピースになる」と、背中を押すコメントがありました。

渋谷から始まる、教育のアップデート

今回のLAB.で共通していたのは、「教育を学校の中だけで完結させない」という強い意志でした。

テクノロジーで個性を可視化し、地域を教室に変え、制度でチャンスを保障する。 渋谷から始まったこの「共創」の輪が、単なるアイデアで終わらず、実際の政策として日本の教育をアップデートしていく。そんな未来の予感に満ちた一日となりました。

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