渋谷で生まれる共創のかたち vol.09「『狭小極深』地域密着型経営が生む信頼と成長戦略」

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最近、自分の経営スタイルを表す言葉をつくりました。

「狭小極深(きょうしょうごくしん)。」

狭く小さなエリアに、極限まで深く入り込むという意味で、渋谷センター街の半径2キロ圏内という狭いエリアに少数精鋭で深く入り込んでいくスタイルです。ここで少数精鋭のチームを組み、まちづくりとビジネスを同時にやっていく。横に広がるより、縦に深く潜る。そうすることで、独自の文化や強みが生まれてくるのだと思っています。

住宅補助は「街に住むための仕組み」

前回も話しましたが、まちづくりには長いスパンが必要です。だからこそ、メンバーは20代が中心。普通の会社なら10年待たないと任されないような仕事を、うちでは20代前半から担う。新卒がいきなり重要ポジションにつくこともあります。
もちろん失敗することもありますが、私はそれを「投資」とも考えています。
失敗も含めて経験を積んでいくことで、次の世代にまたチャンスを渡していける。そういう連鎖が生まれる文化こそが、&&(アンドアンド)の特徴だと思っています。

地域密着のビジネスなので、渋谷センター街のオフィスから、2キロ圏内に社員に住んでもらっています。そのため家賃の4割を会社が負担する住宅補助を出しています。4割ってけっこうな額ですが、住宅補助の狙いは、通勤時間のロスや満員電車のストレスをなくし、生産性を上げることでした。また、渋谷に20代で住めるというステイタスもありますよね。僕自身、10年以上渋谷に住み、徒歩で通勤をしていて、もう電車生活には戻れない。

そして実際やってみると別の効果も出てきたんです。
社員が渋谷区に住むことで、各町会の一員になっていく。そうすると、自然に地域と入り込んでいくことができるので、地主さんやビルオーナーさんと住民として顔を合わせることができる。町内会の活動をするうちに、信頼関係も構築されていきます。
渋谷も広いので、センター街だけでなく、神宮前に住んでいるメンバーは、すっかり地域に馴染んで、超重要なステークホルダーとつながっている。もはや僕より地域力があるんじゃないかって(笑)。これは当初想定していなかったけど、本当に大きな副産物です。

「あと50年いる」と言える強み

不動産の世界では、長くお付き合いしてきたオーナーさんでも、売買になると大手に案件が流れてしまうことがあります。10億円の物件なら手数料は3,000万円。何度も悔しい思いをしてきました。
理由はシンプルで、やはり金額が大きい取引だと大手の方が安心できるからなんだと。ですが、大手の担当者は2〜3年で異動してしまいます。なので、ビルオーナーがやっと担当者がよく理解してくれるようになったと思ったところで、また一からスタートということも多くストレスを感じていたんです。

だからこそ、僕はそこにチャンスがあると思いました。僕は「家族と一緒に渋谷に住み続けます。あと50年はここにいます」と言いきれる。
この覚悟が、僕にしかない信頼を生み、街の人たちに安心して任せてもらえる理由になる。
やはり、渋谷に住んでいる、住人の一人だからこそ渋谷をよくしたいという思いが強い。そこが、私の最大の強みですし、大手にはできない関係性を築けるんだと思っています。
実際、私も子どもが代官山の小学校に通い始めたら、PTAを通じて上場企業の社長さんとパパ友として、知り合いになり、そこから仕事にもつながったことがあります。
なので、私は若い社員にいつも言うのは、家族を持ったら多少無理してもステージを上げられる地域に住んだ方がいいということ。
そうすることで、自分はもちろん、家族の人生や仕事にもつながっていくような人脈が築けると思います。

若手と一緒に地域へ入っていく

商店街や町会は、若い世代が少なくて人手不足です。
そこにうちの社員が入り、運営側を手伝うことで、短期間で役員にもなったりします。地域に根ざせば根ざすほど、街の一員としての影響力が出てくるんです。
ただ、いきなり若い社員が商店街に飛び込んでも馴染むのは難しい。
だから最初は私が一緒にいってトスアップしていきます。「うちの亜依をよろしくお願いします」と紹介すれば、受け入れてもらいやすいですよね。地域のお祭りやイベントも積極的に参加して、人手不足だったら、「うちのスタッフ5人出します」とその場で即決して一緒に動いていく。こうした小さな積み重ねが地域との関係を強くしていきます。

子どもに仕事を見せられる喜び

そして、僕にとって渋谷で働くことの一番の喜びは、子どもに仕事を見せられることです。
渋谷センター街商店街で娘が好きなアニメとのコラボで清掃イベントをした時も、「これ、パパがやったんだよ」と子どもに見せられる。父親の仕事って、子どもに見せられることってなかなかないけど、こうして具体的な形で伝えられるのはすごく嬉しいんです。
子どもも誇らしそうにしてくれるし、街の人からもいろんな人から声かけられる父親の姿を見せられるのも嬉しい。その積み重ねが、家族にとっても街にとっても財産になっていく気がします。
今は独身社員を対象にしている住宅補助制度ですが、今後は家族を持つ社員にも広げていきたいと思っています。家族ごと渋谷に根を下ろし、地域に関わっていく人が増えれば、街はもっと面白くなるはずです。
「狭小極深」というコンセプト、狭い街に深く潜る生き方は、効率的ではないかもしれません。でも、その分、濃い人間関係が生まれ、街も会社も、そして自分自身も豊かになっていく。
僕にとって暮らすことは、街を育て、家族を育て、自分を育てること。
これからも渋谷の現場に立ちながら、仲間と一緒に新しい挑戦を積み重ね、未来に向けてワクワクする街をつくっていきたいと思います。

渋谷に興味を持っている人、持っていなくても地域ビジネス、活性化に興味ある人はぜひ、気軽にメッセージください。

鈴木大輔のこと、プロジェクトについてもう少し知りたい方はこちらをご覧ください。▶︎▶︎▶︎https://daisuke-shibuya.com/about/

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