
365日清掃やパトロールを欠かさず、渋谷を訪れる人々が安心して過ごせるよう支えるのは、実は商店街の存在。今回、「渋谷道玄坂商店街(以下:道玄坂)」「渋谷宮益商店街(以下:宮益)」「渋谷中央街」「東急本店前商店会(以下:東急本店前)」の4つの商店街の理事長/会長が揃い、渋谷の“今”と“これから”について語ってくれました。
にぎわいの裏で日々続けられている地道な取り組み、そして未来に向けて描くビジョン。ハチ公前広場の可能性、映画祭の再来、昭和の香りを残す横丁文化──渋谷の魅力を支える人たちの想いを知れば、この街がもっとおもしろくなる!

インタビュイー
渋谷道玄坂商店街振興組合理事長:大西賢治さん
渋谷宮益商店街振興組合理事長:菅野英雄さん
東急本店前商店会会長:久木野耕一さん
渋谷中央街・理事長:本間誠さん
インタビュアー
渋谷新聞編集部:新戸亜依
「渋谷に来れば、いつでも何かが起きている」──その賑わいの裏には、商店街による日々の努力がある。たとえば、道玄坂では、焼き鳥の煙と個人店のぬくもりが漂う路地裏で、地域の安心安全を守るパトロールが行われている。宮益でも月に1回の清掃活動や警察と一緒にパトロール、違法看板の撤去、花壇整備などを通じ、歩きやすい街を目指している。渋谷中央街は、街灯のLED化を完了し、モヤイ像の新しい居場所を生かした広場づくりにも取り組む。東急本店前でも、パワースポットとして知られている大山稲荷神社を起点に清掃活動や植栽ボランティアをやっている。こうした日々の取り組みがあるからこそ、渋谷は“にぎわい”だけでなく“安心感”を提供できる街であり続けている。ハロウィーンをはじめとした大規模イベント時も、トラブルを未然に防ぐ見えない努力が重ねられているのだ。

“いつ来ても何かが起きている街” 渋谷の商店街がつくる365日
一方で、各商店街は「連携」もキーワードに掲げる。異なるエリアが協力し、合同パトロールや排水溝清掃、再開発への知見共有などが行われ、渋谷全体の質を高めている。また、渋谷の未来を支える担い手として、若い世代や新たな商店主たちとのつながりづくりも模索中。イベントや地域活動を通じて、次の渋谷を一緒に育てていく仲間を増やしていきたいと話してくれた。さらに、訪れる人々に“もう一度来たい”と思ってもらえるような仕掛けづくりにも注力中。渋谷らしい自由で柔軟な発想が、街を歩く体験そのものを変えていくかもしれません。イベントでの協力はもちろん、街づくりの視点でも“オール渋谷”で動いている姿が印象的だった。

未来の渋谷をどう楽しんでもらいたいか――そんな問いに、4人の理事長/会長はそれぞれの言葉で語ってくれた。
道玄坂の大西さんは「毎日がフェス」のような街を目指し、くじ引きや宝探し、ハチ公を“神社化”するユニークなアイディアまで飛び出す。宮益の菅野さんも「イベントは日常の一部。渋谷に来れば何かに出会える空気をつくりたい」と語る。渋谷中央街の本間さんは、「昭和のにおいを残した街」として、個人店や飲み屋の魅力を未来に残したいと話す。インバウンド対応として、清掃やルール啓発にも力を入れている。東急本店前の久木野さんは、「歩きやすく心地よい街に」と再開発を見据えた構想を語っていた。将来的には街と街を繋ぐケーブルカーのような移動手段の導入も視野に入れているんだとか。

「ここが何通りかなんて意識して歩いていない。だから商店街も連携すべき」という声も。宮益の菅野さんは、他商店街のイベントにも積極的に足を運び、つながりを育んでいる。それぞれのエリアが描く未来像は違っていても、目指すのは“来るたびに新しい出会いがある街”。訪れる人が愛着を持ち、「また来たい」と思える風景や体験を届けたい。商店街の人々の挑戦は、今日も渋谷のあちこちで静かに続いている。渋谷の魅力は、どんな立場の人でもこの街の一員になれる“余白”にある。地域と観光、若者と年配者、日常と非日常が共存するこの街だからこそ、商店街の役割もますます広がっていく。変化を受け入れ、遊び心を忘れない姿勢が、未来の渋谷を形づくっていく。“渋谷の未来”はすでに始まっている。誰かの想いが形になり、それが次の誰かの行動へとつながっていく。渋谷らしい雑多さとエネルギーが、街の魅力をより際立たせている。そんな連鎖を感じさせてくれる、力強い座談会だった。

<渋谷道玄坂商店街振興組合>
渋谷駅西口から続く道玄坂周辺に位置する商店街。SHIBUYA109や渋谷マークシティなどの大型商業施設、映画館、ライブハウス、飲食店が集積するエリア。伝統と最先端が交差する、熱気あふれるエンタメの街。常に変化を続けながらも、どこか懐かしい情緒も感じられる独特の雰囲気を持つ
渋谷駅東口から宮益坂および明治通り周辺に広がる商店街。銀行、郵便局、オフィスビル、飲食店、サロンなど多彩な店舗が集積。地域イベントの開催や街路灯フラッグ広告を通じ、街の魅力向上に寄与。通勤する人々の活気と、老舗や地域に根ざしたお店の落ち着きが交差し、朝夕で表情を変える多層的な魅力を持つ
<東急本店前商店会>
東急百貨店本店跡地周辺に広がる商店会。渋谷の喧騒から少し離れた落ち着きある大人の街。老舗の専門店や高感度な飲食店、文化施設が点在し、感度の高い大人たちが行き交う上質な空気感が魅力的。再開発により変化しつつも、どこか懐かしく親しみやすい風景が残る、渋谷の“奥座敷”のような存在
<渋谷中央街>
渋谷中央街は、渋谷駅西口から延びる落ち着いた雰囲気の商店街。老舗の居酒屋やバーが立ち並び、大人の隠れ家として親しまれている。昭和・平成・令和の時代が交差する独特の雰囲気を持ち、懐かしさと新しさが融合した魅力的なエリア。昭和の面影を残しつつ新しいカルチャーも受け入れる、渋谷の懐の深さを感じられる
※本記事は2025年4月28.29日で開催されたイベント「渋谷パラダイス」で配布された冊子内に掲載されているインタビューです。