
1月24日(金)〜26日(日)、Shibuya Sakura Stageに新しくできた404 Not Foundにて行われた『渋谷への手紙〜 LOVE HATE SHOW〜』を観劇しました。
舞台は詩人・大崎清夏さん、ダンサー・中間アヤカさん、映画監督・佐々木美佳さんの3名のアーティストによるコラボレーションパフォーマンス。テーマは渋谷にかつて存在していた在日米軍人と日本人の手紙の翻訳、代筆を行う手紙屋さんがあった通り「恋文横丁」。
アーティストと観客の距離が近い。渋谷の歴史や現在の様子を擬人化する表現。この舞台をドキドキ感のある舞台を作られたお三方に、舞台での表現の意図などを伺いました。

渋谷へのこだわり
ーーなぜ渋谷に向けて手紙を書こうと思ったのですか?
(語る人・大崎さん)
2007年から8年間渋谷に住んでたんですけど、住んでるうちに渋谷の街を好きになって、都会に住んでる自分も好きになってました。ちょっと渋谷を離れて暮らして作品作りのために渋谷に戻ってきた時に、全然自分の知ってる渋谷じゃないって思っちゃったんですよ。駅前も再開発されて変わってるし、自分が好きだった思い出の渋谷が変わってて寂しいなって思って。これは未練を断ち切らないといけないんじゃないかと思って、渋谷への手紙の執筆を始めました。
ーー劇中に中間さん(踊る人)が服を脱ぐ場面がありました。どのような意味合いがあるのですか?
(踊る人・中間さん)
渋谷の景色が移り変わっていく様子だったり、時代の流れが変わると着る服も変わるじゃないですか。渋谷の街を歩く人の様子も変わっていくことを表現したいなと思って。手紙の中の登場人物を演じているわけではなく、着替えることで時間の経過を匂わせたくて。
ーーハチ公像を前後から映すシーンがかなり長い時間ありました
(映す人・佐々木さん、語る人・大崎さん)
ハチ公の正面姿と後ろ姿は、別々の日に撮影しました。1回目に撮った時は晴れていて、2回目は雨が降っていてハチ公に傘をさす人がいました。時間と天候がずれてたり、カメラが固定なのか手持ちなのかも偶然違いました。お客さんにはハチ公の映像を見ている時に舞台の最初にあった詩を思い出したり、あんなシーンあったなとか思い出したりする時間になればいいなと思いました。ただただ舞台で起きてることを目で追うんじゃなくて、全然関係ないことでもいいんです。お客さんそれぞれが何か考える時間になればいいなと思いました。
ハチ公の映像が流れる演劇空間が、まさにハチ公の前で待ち合わせする人たちのような場所に一瞬なって、嬉しかったです。

観劇する人に向けて手紙の募集
ーー手紙を読もうと思った経緯を教えてください
(語る人・大崎さん、踊る人・中間さん)
実際に手紙の募集を知った方が404のカフェで書いて投函してくださったものを読んでいます。投函した手紙は上演の中で責任を持って処分しますという約束が募集の際にあったので、読むシーンを作ることで処分しよう!となりました。
ーーズームで繋いでラジオコーナーを作った理由を教えてください
(語る人・大崎さん)
この舞台は最初、私(大崎さん)が湘南、中間さん(踊る人)が神戸、佐々木さん(映す人)がインドにいるところから作り始めました。3人が別々の場所で舞台を作り始めた背景があって、3人が3人のやり方で、別々の場所にいるけども、1つの手紙をそれぞれの方法で紹介することを考えた時にズームを繋ぐことになりました。別々にいることもあって手紙っていう媒体って面白いよねってなって、この舞台も始まりました。

会場の特性を利用して
ーー会場を404 Not Foundにした理由を教えてください
(語る人・大崎さん)
会場の周りには商業施設があって、雑多な雰囲気に惹かれました。静かな間にも外の音が聞こえていたりして、それも舞台の一つになってました。
ーー舞台と客席の境目がない会場で工夫したことありますか
(踊る人・中間さん)
例えば渋谷のスクランブル交差点を歩くと、そこにいる通行人全員が舞台や映画の出演者のように感じられる瞬間があったりします。そういう体験がこの作品でも出来たらいいなと思って、「あなたも出演者だよ」とお客さんに感じてもらえるようにいろいろなコミュニケーションの方法を試してみました。遠い時代のことを伝えるときは逆にお客さんから離れてみたり。
ーー会場内のスクリーンの使い方も特徴的でした
(映す人・佐々木さん)
超横長のスクリーンは私たちにとっても新しくて、映画館のスクリーンとは違うので、使い勝手にすごく悩みました。大きなスクリーンの前に小さなスクリーンが降りてくるのをこの会場に見学しにきて知りました。誰も使ってないと聞いて笑。大きいスクリーンあるのにわざわざ降ろす間とかもおもしろいねと話し合い、どちらのスクリーンも使うことになりました。

変わりゆく渋谷の中で変わらないでいて欲しいものはありますか
ーー語る人・大崎さん
代々木公園は変わらないでいて欲しい。渋谷区に住んでた時もよく行ってたので一息つける場所があるといいな。駅前はどんなに未来空間になっても、緑がなくならない渋谷区であって欲しいなと思います。
ーー踊る人・中間さん
生まれが九州で普段は神戸に住んでいることもあって渋谷との関係は遠いんですけど、学生の時は渋谷は憧れの的でした。ずっと憧れの場所でいて欲しいとは思ってなくて、いま渋谷に暮らす人たちが気に入って生活できる空間だといいなと思ってます。
ーー映す人・佐々木さん
ハチ公だけは残して欲しい。
ハチ公をインスタにあげた時そのインスタにあげたハチ公をきっかけに友達に会えたんですよ。友達も私も普段はお互い東京にいない人だったので、渋谷のアイコンとしてハチ公にはいて欲しいです。
大崎さん・中間さん・佐々木さん、ありがとうございました!
舞台を観劇させていただいて、手紙を通して渋谷の歴史や渋谷の魅力を再確認させていただきました!貴重な経験をありがとうございました!
◾️大崎清夏(語る人)
2011年、第1詩集『地面』刊行。『指差すことができない』で中原中也賞受賞。『踊る自由』で萩原朔太郎賞最終候補となる。ほかに詩集『暗闇に手をひらく』『新しい住みか』、その他の著書に『私運転日記』『目をあけてごらん、離陸するから』など。協働制作の仕事に、奥能登国際芸術祭パフォーミングアーツ「さいはての朗読劇」(22,23年)の脚本・作詞、舞台『未来少年コナン』(24年)の劇 中歌歌詞、オペラ『ローエングリン』(24年) の日本語訳修辞など多数。
新刊「暗闇に手をひらく」(リトル・モア)発売中
https://littlemore.co.jp/isbn9784898155998
◾️中間アヤカ(踊る人)
別府生まれ、神戸在住。ダンサーとして国内外の上演作品に多数出演。近年は「ダンスとしか 呼ぶことのできない現象」を追い求め、それが現れる瞬間を他者と共有するための仕掛けを創り出す ことに挑戦している。これまでの作品に、庭で他者の記憶を踊る4時間のソロダンス『フリーウェイ・ダンス』、空き地に建てた仮設劇場を運営し解体までを見届ける『踊場伝説』など がある。第16回神戸長田文化奨励賞受賞。2022年度よりセゾン文化財団セゾン・フェロー。
ストレンジシード静岡2025(2025年5月3日(土・祝) 〜 5月5日(月・祝)開催)にて
新作『グルーヴィ・グレイヴ』を発表予定https://strangeseed.info/
◾️佐々木美佳(映す人)
福井県生まれ。映画監督、文筆家。東京外国語大学言語文化学部ヒンディー語学科卒。2020年、初監督作品であるドキュメンタリー映画『タゴール・ソングス』を全国の映画館で公開。2022年には『タ ゴール・ソングス』(三輪舎)を刊行し、文筆家としての活動もスタートする。2023年『うたいおど る言葉、黄金のベンガルで』を刊行。現在、インドの国立映画学校Satyajit Ray Film and Television InsituteのDirection and Scleenplay Writingに在籍中。
◾️公演概要
『渋谷への手紙〜LOVE HATE SHOW〜』
2025年1月24日(金)〜26日(日)
構成:大崎清夏(語る人)、中間アヤカ(踊る人)、佐々木美佳(映す人)
主催・企画制作:株式会社precog
助成:芸術文化振興基金、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【東京ライブ・ステージ応援助成/東京芸術文化鑑賞サポート助成】
本事業の鑑賞サポートは、誰もが芸術文化に触れることができる社会の実現に向けて、「東京文化戦略 2030」の取組「クリエイティブ・ウェルビーイング・トーキョー」の一環としてアーツカウンシル東京が助成しています。
特設ウェブ:https://lovehateshow-shibuya.tumblr.com/about
◾️会場
404 Not Found
〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町1-4
Shibuya Sakura Stage SHIBUYA SIDE 4F