毎年、渋谷区が開催している「シリコンバレー青少年派遣研修」。行き先はアメリカカリフォルニア州北部のサンフランシスコ・ベイエリアの南部に位置しているサンタクララバレー及びその周辺地域である、シリコンバレー。渋谷区の8つの中学校から16人(研修時に中学2年生、3年生)が派遣団員として選ばれ、夏季休業中に5泊7日の研修に行きます。選考方法は渋谷区が一人一台配布しているタブレットで提出をする書類と面接です。
研修のプログラムの内容は、現地にいる日本人や、起業家の方の講義を受けたり、AppleやGoogleの本社、スタンフォード大学訪問など、普通の旅行では体験できないようなことが体験できます。研修に必要な費用は渋谷区が、団員の未来への投資として、ほぼ全額負担するため、約3万円の自己負担だけでたくさんのことを学べるプログラムになっています。
筆者自身もシリコンバレー青少年派遣研修令和元年度の団員です。令和元年度以降は、新型コロナウイルスにより、実際に現地で研修を行うことができず、4年ぶりの現地研修開催となりました。
令和5年度生の研修報告会に派遣団員として参加していた渋谷区立笹塚中学校2年生の鵜野光さんにインタビューを打診させていただいたところ、快く受けてくださり、今回のインタビューが実現しました。
初めはドキドキして、不安な気持ちもあった
ーー本研修を振り返っていかがでしたか。
とても楽しかったです。まず事前研修が6月からオンライン2回、対面3回の計5回ありました。初対面の人ばかりで、初めは緊張や不安の気持ちが大きかったのですが、実際対面で会って、お互い自己紹介を重ねるうちに打ち解けました。事前研修では、「自分と向き合う」内容や「プレゼンテーション力を高める」ためのプログラムを実施しました。団員とは、研修に行ってからより仲良くなり、この仲間達と研修に行けてよかったと思いました。研修の内容もとても充実していて、普通の旅行だったらGoogleの本社を見学できないだろうし、現地で聞いた講義も全て人生の財産になりました。
ーー事前研修では、「ジョハリの窓」や「自分が成長したいところ」など今までにないほど自分と向き合う機会が設けられますよね。そこで「自分」と向き合った上で、研修に行く。すると自分の物事の吸収力がハンパなくなっていて。(笑)現地についた瞬間、心がざわつき始めました。
そうなんですよね。やっぱり、現地に行かないとわからない感動があって。なので、この研修でたくさんの貴重な経験を体験することができて良かったです。
ーー1番心に残ったプログラムはなんですか。
B-traxという会社の社長であるブランドンさんのお話です。ブランドンさんが伝えてくださったのが、「自己理解」することの大切さです。「ひたすら自分と向きあって、自己理解を進めた先に、自分のやりたいことや好きなことが分かってくる。そしてその好きなことを人生の中で追い続ければ良いよ。」と言っていました。そしてその自己理解を進めていく中で、「視点を変える」ことが自分を見つめ直すきっかけになることがあると知りました。
ーーブランドンさんのお話を聞いて鵜野さんの中でどんなことが変わりましたか。
元々特別ポジティブ思考ではなかったのですが前向きに物事を考えられるようになりました。それは、起業家の方々もまずは自分を知るところから、という「自己理解」を行っていたからです。自分と向き合うこと、自分を知ることが、自分の生きたい人生を歩む一歩になると思いました。
▲カリフォルニア州にあるスタンフォード大学。
現地の人と英語でのコミュニケーションを通して
ーースタンフォード大学でのプログラムはいかがでしたか。
スタンフォード大学では、大学内のある場所の写真を撮るミッションや、物々交換を行うミッションがありました。ミッションでは学生や、大学内を散歩している人に話しかけました。もちろん英語なので、緊張したり、単語の意味がわからなかったりしたのですが、実際に現地の人の考えを聞いたりして、新たな発見があって楽しかったです。自分では思い付かないような視点からの考えにハッとさせられました。積極的に行動することの重要性をここで身にしみて感じました。
ーースタンフォード大学はとても広いですよね。私も寮の中に入らせてもらって写真を撮るミッションを行いました。他に印象的だったプログラムはありますか。
アイディアソンというプログラムです。アイディアソンとは、「アイディアを出し続けるアイディアソン=アイディア+マラソン」という造語なのですが、一つの課題に対して、とにかくアイディアをたくさん出す「デザイン思考のプロセス」でアイディアを付箋に書き出していきます。
私たちのグループは命をテーマにし、さらに深く健康診断にフォーカスしました。例えば、どんな人が健康診断を受けておらず、健康診断にはどんな必要性があるのかなどさまざまな意見交換をし、それを元に一つのアプリを作っていきました。そして、そのアプリのプレゼンテーションを行い、実際の起業家の方々からフィードバックをいただくことで、コンテンツだけでなく、プレゼンテーション力も高めることが出来ました。
▲スタンフォード生との交流をする鵜野さん。
アメリカから日本に帰ってきて
ーー様々なことを吸収して、日本に帰ってきて、周りの友達や家族に伝えたい思いはありましたか。
「機会は自分から掴む」ということの大切さです。与えられる機会は平等ではないからこそ、自分で掴む。例えば研修中では、発言や質問の機会は自分で得る必要があります。手をすぐにあげて、自分でチャンスを掴み取る。そういったことを通して、研修中にも自分の成長を感じました。学校では、自分自身が発言の切込隊長になる。するとみんなが意見を出しやすくなるような雰囲気になって、よりたくさんの意見が出る学級を作ることが出来るのではないかと思いました。
ーー見えてきたビジョンや夢、これからの人生に活かしたいことはありますか。
物事を考えるときに、視点を変える。ネガティブになってしまう時もすぐに落ち込まず「視点を変える」ことを大切にしてみる。すると自分の世界がみるみる広がっていくので、「視点を変える」ことをこれからも大切にしたいと思います。
また、今回の海外派遣研修を通して海外により興味を持ったので、もっと自分で様々なチャンスを掴みたいです。積極的にチャレンジすることで自分の可能性を広げていくことが出来るので、今から少しずつでも積極的な行動を積み重ねて行こうと思いました。自分の考えを世界に発信していくことも面白そうです!
ーー来年度の派遣団員に向けて伝えたいことはありますか。
実際に現地に行って目で見る、耳で聞く。五感をフルに使って感じる魅力があると思うので、ぜひ参加してみて欲しいと思います。そして、「自由な発想」を持つことの大切さや妥当性が現地で感じられると思います。私は、「少しの行動で自分は変わることができる」と信じています。この研修は自分の価値観が本当に変わります。想像を遥かに超える素晴らしい研修なので、まずは応募をしてみるという一歩を踏み出し、機会を自分で掴んでみてください!
筆者自身もこの研修で価値観が変わり、人生が変わりました。中学生の今、自分にとことん向き合うことがいかに大切か。中学生の今だからこその、感性やハングリー精神を活かして、アメリカ・シリコンバレーの地で一生分の知恵を得てきてください。
日々の学校生活が退屈、つまらない、そんな風に思う人にこそ、シリコンバレー派遣研修に参加をしてみて欲しいです。この記事を読んでいる中学生が実際にシリコンバレー派遣研修に行ったら、教えてください! そしていつか、取材させてくださいね!!
最後までご覧いただきありがとうございました。