シリコーンの特性を活かして豊かな未来を目指す 株式会社ニッシリ 岩田和之さん

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2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:以下 SDGs)」。2030年までの目標達成を目指し、さまざまな企業や行政でも積極的な取り組みが行われています。17ある目標のうち12番にあたる「つくる責任 つかう責任」は持続可能な消費と生産のパターンを確保するというもの。その一端として耳にすることの増えた「エシカル消費」ですが、一体どういう取り組みなのか知らない方もまだまだいるかもしれません。
英語のエシカル(ethical)は直訳すると「倫理的な」「道徳的な」という意味です。エシカルな消費とは環境、人、社会や地域など私たちを取り巻く事柄に対して多くの人が正しいと考えることや、良識的・平等に考えた結果などに基づいて消費活動をしていくことで環境問題や人権問題などの解決に繋げようとする取り組みになります。

2023年8月には渋谷新聞もメディアパートナーとして参加する「渋谷エシカルウィーク」が開催されます。そして8月19日(土)と20日(日)にはキックオフイベントとして「渋谷エシカルガーデン」が渋谷キャスト ガーデンにて行われます。出展企業などによるエシカルを体験して学ぶコーナーやエシカル商品のサンプリング・販売、エシカルな取り組みの紹介などを通して、「エシカル」とは何なのかを伝えていく予定です。そんな同イベントに参加する企業の一つでもある、株式会社ニッシリの活動について、同社の未来デザイン部の部長・ 岩田和之(いわたかずゆき)さんにお話をうかがいました。

環境にやさしいシリコーンプロダクト

株式会社ニッシリは渋谷に創業して70年余年のシリコーン専門商社です。「豊かで快適な明日の地球環境づくりのために英知をもって『魔法の砂 Silicone』を育てていく」という使命を果たすため、地域社会とのつながりを育み、エシカル意識を高める機会を設けることに取り組んでいます。私たちの日常生活に不可欠なシリコーン、その特性は耐熱・耐寒・電気絶縁・撥水・消泡・離型・接着・低燃焼・耐候と多岐にわたります。身の回りにも滑り止め、汚れや傷つき防止、防水・撥水などを目的として使用されていたり、キッチン用品・化粧品などにもシリコーンは使用されています。

▲家の内外、さまざまな場所で活躍するシリコーン。「こんにちはシリコーンです〜魔法の砂で 豊かな未来を〜」(株式会社ニッシリ発行)より

「高度成長期を経て、さまざまな分野でシリコーンの存在はとても重要な役割を果たしてきました。反面、技術の発展に伴い、サステナブル、エシカルという考えや取り組みが必要不可欠となった今、これからは環境や持続可能な社会のためにシリコーンを活用していきたいと考えています」

と話してくれたのは、2019年からSDGs目標達成に向けた取り組みとして、自社独自の商品開発をしていこうと立ち上げられた事業開発プロジェクトのメンバーとなった岩田さん。

同年、事業構想大学院大学でSDGsの実践をテーマにした〈SDGs総研〉に参加。シリコーン粘着シートを配管や水路に貼ることで防水や老朽化の原因であるサビの進行を抑えるためインフラの長寿命化を図っていると言います。また、落書き対策としてインクが乗らないように加工した「ラクガキボウシシート」をビル壁や配電盤に貼る実証実験をセンター街のクランクストリートでも行いました。このシートは3年経った今も現地にあり、落書き防止に役立っています。その後、2021年に「未来デザイン部」が作られ、新素材や新サービスの開発を行っています。
ちなみに、「シリコーンってよく聞くけれどいったい何だろう?」 という疑問は ニッシリのHP に詳しく載っているのでそちらをご覧ください!

シリコーンの特性を活かした商品開発

具体的にどういういった商品があるのか、NEO⁺SiltoLeather(ネオ シルトレザー)というヴィーガンレザーを使用したバッグを見せていただきました。

合成皮革と言うと、紫外線による劣化が課題の1つでした。また天然皮革は、動物保護の問題だったり、水質汚染などといった課題が指摘されることも。そんな中、シリコーンの紫外線に強く劣化しにくい、防水・撥水という特性を利用することで新しい合成皮革の可能性を提案しています。

リサイクルポリエステルにシリコーンのコーティングをしたネオシルトレザーは紫外線による劣化に強く、風を通さないことで防寒になったりもします。普段は1枚の布を折り合わせた「トライアングルバッグ」として利用し、災害時などには敷物にしたり、プライベートな空間作りとして使うなど、他の用途としても使えるのが魅力です。

また、年間100万トンの繊維ゴミが出ていると言われる中、繊維ゴミを再利用した生地にシリコーン加工をすることによって、素材を長持ちさせてゴミを減らすということも実現しています。

▲「トライアングルバッグ」と並び、渋谷エシカルウィークで販売を予定しているネオ シルトレザーの「ランドセルカバー」(色は未定)。ランドセルを傷から守りつつ、収納も増やせます

他にも、シリコーン製DIYテープの「ユニバーサルテープ」という商品があり、日常で使用するモノにテープを巻きつけることで、持ちやすく、握りやすく、使いやすくできます。シリコーン同士がくっつく特性や粘着性がないことで扱いやすいことなど、シリコーンの特性が活かされており、高齢者や障がい者に向けた自助具を作るために開発された製品です。自助具というのは障害や加齢で日常生活に支障がある方をサポートするための道具のことで、握力がなくても握れる太いグリップのカトラリーや滑りにくい工夫のされた食器など、従来はボランティアの方が3Dプリンターを利用して作ったり、施設の人が各当事者の状態に合わせて制作してきたものです。自助具制作ボランティアの後継者不足も不安視されていることもあり、当事者自身がDIYをしたり、介護現場で手軽に制作ができるようになることで介護担当者の負担を減らすことが可能になります。さらに、商品の梱包は就労継続支援B型事業所などへ依頼するなど、さまざまな方向で社会貢献に取り組んでいるそうです。

「実際に障がい者施設でこのユニバーサルテープを使ったワークショップを行ったところ、自分事として皆さんがアイデアを出しながら取り組んで、ワークショップがものすごく盛り上がりました。参加者皆さんの表情が生き生きしていてとても嬉しかったです」

▲「ユニバーサルテープ」の使用例。写真中央から左に、爪切りを板に固定し、ハンドルを太くすることで片手が不自由でも1人で爪切りが可能に。スプーンにPETボトルのキャップを組み合わせたグリップを追加。ボールペンのグリップ部に厚みを出したり、箸を上部で固定することによって細かい動作が不自由でも利用ができるなど、自由度の高い「ユニバーサルテープ」だからこそ、一人一人の状態に合わせての自助具作成が可能に

「なったらいいね」の未来に向けて取り組み続ける

「社内でのエシカルな取り組みは環境負荷の配慮をし、ペーパーレスといった取り組みも行っていたり、社員の健康管理のためにオフィスで野菜を取れるような栄養サポートの仕組みを導入したり、ゴミの削減を目的としたフリーマーケットも行ったりしています」と、岩田さんは言います。また、社内では健康経営やワークライフバランスを考慮し、リモートワークを推進。産休や育休なども積極的に取ることを推奨しているそうです。

「この数年で社会におけるSDGsへの理解が進んだのを実感しています。私自身はSDGs研究員をしていた3〜4年前からどうしたらゴミを減らせるかをずっと考えていますし、会社としてもエシカルな取り組みをしていくのを当然のことと受け止め、3ヵ年計画を立て『なったらいいね』の未来を目指しています。沖縄に環境ラボを設置し、海洋環境の問題などにも取り組んでいます。沖縄で実現できれば本土でも実装できる、沖縄をちょっと先の未来と捉えて未来に向けた課題解決を、小さいスケールではありますが、着実に進めています」

渋谷で創業して70年余年のニッシリ。岩田さんご自身も渋谷区内にある國學院大学を卒業したこともあり、渋谷との縁を感じているそうです。

取材に伺った日も、区内の保育園の園庭に「ラクガキケセルシート」を貼るために訪れたばかり。実はこの取り組みは、以前取材をさせていただいた原さんの会社、光伸プランニングも参加しているといいます。

▲渋谷区内の保育園にて。ラクガキするマーカーは選ぶけれど、乾拭きや水拭きで簡単に書いたものを消すことができる。壁への落書きに子どもたちも大喜び

岩田さんにエシカルウィークへの想いを伺うと「当日は、実際のプロダクトを見て触ってもらって、お客様からのフィードバックを得るのが楽しみです。シリコーンの活用の範疇と可能性を伝えたいですね」と話してくれました。

◾️岩田和之 略歴
1974年生まれ、國學院大學文学部卒業。1999年 株式会社ニッシリ入社 営業部配属。環境に優しいシリコーンを広める活動に従事。またシリコーンを使った近隣小学校でのワークショップや渋谷センター街の落書対策など地域課題の解決にも積極的に取り組む。
2019年 事業開発プロジェクトを兼任。環境配慮型レザー調シリコーンの開発。同年、事業構想大学院大学にてSDGsプロジェクト研究員として活動。インフラの老朽化対策について研究。
2021年 未来デザイン部を創設。人と地球の豊かさを追求する活動に特化。
2022年 インクルーシブ社会の実現を目指し、介護福祉分野での活動を開始。
介護職員初任者研修の資格を取得。
2023年 シリコーン製DIYテープ『Universal Tape(ユニバーサルテープ)』を開発。日常で使用しているモノを持ちやすく、握りやすく、使いやすく。誰でも簡単に使える介護・福祉・療育分野における自助具として、趣味や日常生活における便利用具としてPR活動中。

◾️株式会社ニッシリ
WEB:https://nissili.co.jp
Instagram:@nissili_mirai
商品販売サイト:https://nissili.base.shop

◾️渋谷エシカルウィーク
WEB:https://note.com/ethicalweek

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