似顔絵こけしを通じて世界平和!山形のイラストレーター沼澤玲菜さんが渋谷へ

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手のひらサイズの小さなこけしに本人そっくりの似顔絵を描くのは、山形県在住のイラストレーター、沼澤玲菜さん。2人のお子さんを育てながら山形で大活躍する沼澤さんにインタビューをしました。

普段は山形県蔵王温泉にある湯旅屋 高湯堂(以下、高湯堂)等で似顔絵こけしの実演販売をされている沼澤さん。今回は宇田川クランクストリートで実演販売をしてくださいました。

幼少期から好きなことは変わっていません

ーーどんな幼少期でしたか?

「両親が水商売をやっていたので一人で留守番をする機会が多かったのですが、その時間が結構好きでした。夜中に絵を描いていました。当時から綺麗な女の人が好きで、淡い色合いで女性を描いている画家さんの絵が特に好きでした。そういう人たちに憧れを持って、真似して描いていましたね」

「実は絵の仕事をし始めたのは4年ほど前で、それまで絵は描いていなかったんです。今このように、子どもの頃と同じようなテイストの絵を描いているのを見ると、純粋に好きだったものが大人になって仕事になって社会と関わっているのはすごく幸せだなと感じます」

ーー学生時代とその後のキャリアはどのようなものでした?

「私が若い頃って、絵とかアニメとか漫画はオタクっぽくて恥ずかしいもののような印象があり、ずっと隠していました。学校に馴染めなくて、みんなと同じことをするということが苦手でした」

「高校を卒業してすぐに結婚して子どもを産みました。子育てをしながらだったのでパートとして働いていることが多かったです。シングルマザーになってからは、正社員として企業で働いていたこともありました」

「1番印象に残っているのが葬儀屋の仕事で、死って特別なことに思えるかもしれないですけど実は日常のことで、いろんな死に方があって人って色んな人生があるんだなって一瞬でも垣間見れて、人を知れることはとても楽しかったです」

ーー本格的に絵をお仕事にしたタイミングはいつですか?

「実はコロナの緊急事態宣言が出る直前の2020年3月頃に何もかも嫌になって当時務めていた仕事を辞めて、絵を描き始めました。本当にやりたいことやってみようと思って絵を描き始めたら本格的にコロナになって、世界中が静まり返っている中で黙々と絵を描いていました。静かな空間で描く方が創作意欲が湧きます」

「企業さん向けや広告になるようなもの、トラックや御朱印など様々なイラストを山形で描いています。山形に行けば、私の絵はどこでも見ることができます。聖地巡礼という形で私のイラストを巡ってくれる方もいらっしゃいます」

似顔絵こけしに込められた思い

ーー似顔絵こけしの創作・販売も行っていますよね、どんなものですか?

「もともと蔵王温泉にある高湯堂さんで訪れたお客さんがこけしに絵付けをするというイベントをやっていました。これにさらに何かできないかと高湯堂さんからお声がけいただいたのがきっかけです。遊び心で似顔絵こけしをはじめました」

「こけしをつくる職人であるこけし工人が少なくなっています。なくなってしまう文化の1つであるこけしをもっと盛り上げたいという気持ちで去年の5月から毎月蔵王温泉で実演販売をやらせてもらっています。実際に蔵王温泉に足を運んでもらい、周りの空気を感じてもらって、きちんとコミュニケーションを取ることも体験の1つとして楽しんでもらいと思って似顔絵こけしを作っています」

「地元の人はこけしが身近にありすぎて正直あまりいい反応はなかったのですが、県外の方や外国の方からすごく喜んでくれます。ファンになりリピートしてくれる方もいらっしゃいます。やはり魅力的なものなんだなと感じるのでどんどん広まって欲しいです」

ーーこけし以外に展開する予定はありますか?

「色んな方から、他のにも描いてほしいとお声がけいただくのですが、あまりこけし以外に描く予定はないですね。こけしでいっぱいいっぱいなので(笑)自然発生的に、こけしで喜んでくれた方が、絵の魅力に気づいてまた私に依頼をしてくれれば幸せだなと思っております」

「私自身、山形県から出たことがなかったのでこけしがありふれたものだと思って、こけしについてあまり考えたことがありませんでした。実際にこけし工人にお話を聴くことによって、こんな素晴らしいことをしている人を放っておいてしまうと絶滅しちゃうんだという感情が芽生え、自分の活動でどうにか守って発展させていけたらいいなと思いながら活動しています」

ーーどうやったら購入できますか?

「高湯堂さんで実演販売をしているのですが、高湯堂さんのInstagramやFacebookなどSNSに連絡するか直接電話をするとオーダーすることができます」

「今回は、蔵王温泉を飛び出して宇田川クランクストリートで販売させていただきました。渋谷は外国の方も多いと思いますが、外国の方の反応は日本人より大きいですね。飛び跳ねて喜んでくれる方とかもいらっしゃいます。本当にみんな大爆笑してくれて、似顔絵ってこんなに人を笑顔にするんだと改めて不思議な力を持っているなと思います」

ーー今のお仕事は楽しいですか?

「絵を描く前は、何をやっても向いてないなとか合わないなと感じていたのですが、絵を描き始めてから自分の人生が動き出したような感じがしました。子どもの頃に夢中になっていたことってそれこそが自分の宿命なんだなと。絵を描いて社会と関わることができて毎日楽しいです。人生が変わりました」

ーーエピソードはありますか?

「みちのくこけしまつりというイベントが山形にあるのですが、そこに私と同世代くらいの女性の方がいらっしゃってお母様の似顔絵こけしを作って欲しいと注文をいただきました。作り終わった後に打ち明けてくださったのですが、半年前に亡くなったお母様の死を受け入れられなかったけれど、せめて似顔絵こけしにして持ち歩いて一緒に旅をしたいと。家が狭くて仏壇を置けないから仏壇の代わりにしたいと言ってくださり、2人で泣きました」

「亡くなったペットのオーダーとかもありますね。ハチ公のように(笑)遺影だとちょっと重いのですが似顔絵こけしだとポップになりますよね」

こけしと一緒に良い世の中にしていきたい

ーー今後の展望とかありますか?

「これからどうなりたいとか正直まったく考えてなくて、毎日のことしか考えてないのですが、とにかく注文してくれた人に喜んでもらえるように描くだけだし、自分の周りの人を幸せにしたいです。みんなが笑顔になって、それがどんどん広がっていっていくと無駄な歪み合いや争いはなくなるのではないかと思います。とても小さな取り組みだけど広まって戦争がなくなればいいな。役目は世界平和です」

「絵を描いていなかったら渋谷に来ることはなかったので、これからも絵を通して色々なところに行って、たくさんの人と出会いたいです。今年はこけしを300体作りたいと思っています」

ーー今回初めての渋谷とのことですが、渋谷についてはいかがですか?

「渋谷は怖いイメージがあって若者が溢れていてゴミとかいっぱいあるのかな?とか思っていたのですが、逆にそういう場所で描けるのが嬉しいなと思います。伝統っていうとカチッとした印象になってしまうことがあるのですが、もっと自由な発想でいいんだと思わせてくれたのが渋谷です」

「渋谷ではじめてやる似顔絵こけし販売。少しでもこけしや似顔絵こけしに興味を持ってくれたら嬉しいと思います」

渋谷新聞メンバーも似顔絵こけしになりました!どれもとても似ていますね!柔らかくも強い芯をお持ちの玲菜さん。これからも渋谷でこけしの販売を行う予定です。気になる方は高湯堂さんのInstagramをチェックしてみてください。

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