炒飯が渋谷の人々、再開発を支える「ラーメン王 後楽本舗」後閑憲信さん

京王井の頭線渋谷駅西口から徒歩1分。マークシティー脇の道玄坂の飲食街の中に、40年以上も前から24時間営業を続けている伝説的な街中華「ラーメン王後楽本舗」があります。今回は二代目オーナーの後閑憲信さんにお話を聞いてみました。(インタビューは2022年8月に実施)。

「創業は父の代で、昭和47年です。新宿のコマ劇場前に立ち食いそばのお店を出したのが事業の始まりだと聞いています。そこから有楽町、吉祥寺とお店を出し、42年ほど前に渋谷の『ラーメン王 後楽本舗』を出しました。僕自身、当時はまだ幼くて記憶にはありませんが、コンビニやファストフードが今のように多くなかった飲食店が潤っていた“良い時代”だったと思います」

そう話す後閑さん。温和な雰囲気をお持ちで品の良さを感じる人柄です。

「私自身は大学卒業後に他の飲食店に勤めて勉強をしていましたが、20年ほど前に父が病気になり後を継ぐ形で戻ってきました。元々継ぐつもりでしたが、父からは継がなくてもいいと言われていました。けれど、継がなくていいと言われれば言われるほど、なんだか気になって継いでしまいましたね(笑)」

一番人気はラーメンではない!?

渋谷を代表する繁華街である道玄坂で24時間営業を行うラーメン王。実はわたしも朝まで飲んだ日は何度もお世話になったソウルフードであり、今回の取材後に食事をして帰るのを楽しみにしていました。そんなラーメン王の一番人気のメニューは、実はラーメンではないのです。

「うちで一番よく出るのは炒飯なんですよね(笑)。今働いている橋本さんはもう30年以上勤めていてくれていて、中華鍋の振り方なんかすごくて…!その手早で作る、家では食べられないパラパラ感が人気の秘訣だと思います。味付けに焼豚を煮込んだタレを使用しているのもポイントですね。僕もまかないは絶対炒飯を頼んじゃいますね~」

ラーメン王に足繁く通う渋谷新聞メンバーも「何度食べても美味しい!」という炒飯は、お米がパラパラでありながらもパサパサはせず、むしろ旨味を吸ってしっとりしています。具材が少なめのシンプルな炒飯だからこそ、ごまかしは効かず料理人の腕が決め手になります。熱々を一気に頬張りたくなりますが、レンゲにすくいラーメンスープに浸して食べるのもまた乙です。

再開発を陰で支える24時間営業

再開発の進む渋谷。どこにいっても工事や解体が行われています。24時間営業という特性を活かし、昼夜問わず渋谷で働く現場職人の憩いの場としても機能するラーメン王は舌の肥えた職人達の胃袋をしっかりと掴んでいるようです。

「再開発工事だと、現場職人さんが結構きてくれるんですよね。うちは営業は24時間だし、調理時間が短いので、休憩中にさくっとガツっと食べにきてくれるのが嬉しいです。再開発で渋谷に職人さんが増えたからなのか定かではないですが、昔に比べたら渋谷に訪れる人の年齢の幅が広くなって、老若男女たくさんの人がくる街になったなぁと思います」

「コロナ前は宮益坂に別の店舗があり町会理事も勤めていました。渋谷は街自体が前向きで何かやろうという感じがします。区長さんも先進的な人ですよね。少し高齢化が進んでいるので、昔からいる人と新しい人が協力してやっていけたらいいなと思います」

そう話す後閑さん。今は経理などの事務作業がメインでお店に立つことも少なく、コロナの影響もあり不動産オーナーもされているそうです。それでもやっぱり飲食店が好きで、飲食をやりたい若者がちゃんとやっていける環境を作りたいそう。

飲食で渋谷の再開発を支えるラーメン王は、渋谷で朝まで飲み明かしたあの日と変わらないメニュー、変わらない味で私たちを迎えてくれました。

 

■ラーメン王 後楽本舗 渋谷区道玄坂2丁目7−4 清水ビル 1F https://maps.app.goo.gl/q3tXfw3eMMxHRJKL7

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