子どもたちに機会を提供することが僕のハッピーに 鈴木大輔さん

4姉妹のパパで我らが渋谷新聞の代表である鈴木大輔さん。

他にも一般社団法人渋谷区SDGs協会、渋谷センター商店街振興組合、株式会社まなぶや、株式会社シブテナ、太平洋商事株式会社など携わる事業は片手では収まり切らない鈴木大輔さん。“鈴木大輔”といえば渋谷でさまざまなことに取り組んでいる人、と言ってもいい

このインタビューを通して彼の中に潜む熱い思いを垣間見ることができた。

自分の代で作った地域とのつながり

ーー地域でさまざまな取り組みをしている大輔さんですが、大輔さんが一番大事にしていることを教えてもらえますか?

「地域のつながり」と「とにかく行動すること」です。

僕の高校時代はとにかく友だちとふざけた遊びばかりしていました(笑)。高校を卒業して、父とパートさんが1人いるだけの太平洋商事で働きはじめたんです。父は田舎から渋谷に出てきて不動産業を始めたのですが、当時の太平洋商事は地域とのつながりが一切ありませんでした。そして僕は父の会社に入ってはみたものの、チラシ配りなど言われたことをやっているだけで、何のチャレンジもしていませんでした。実は人生の転機になったのは25歳の時、一人目の子どもができたことでした。「一人の人間を育てなくてはいけない。ヤバイ、お金が必要だ!」と思って今の妻と行く予定だった大好きなミスチルのめちゃくちゃ良い席のライブチケットを売ってしまったんです。今思うとすごく後悔しています(笑)。でも、ここから気持ちが切り替わり、仕事に明け暮れるようになりました。

 

ーー仕事の中で意識してきたことを教えてください。

28歳の時、どれだけがむしゃらに仕事をしても会社は赤字、何か打つ手はないのかと仕事のやり方を見直したんです。そこで気づいたのが、うまくやっている同業者は地域や人とのコミュニケーション、「つながり」を通して仕事を取っている。一方、うちは地域ともお客様とも一切つながりを作ってきていなかった。そこで、すぐに渋谷センター商店街振興組合に電話をして組合員になりました。関係を築くため積極的にお祭りやイベントの設営をしたり、飲み会に参加しました。父には遊んでいるように見えたのでしょう、よく「ちゃんと仕事をしろ!」と言われました。僕にとってはそれが仕事でした。父とぶつかりながらも地域や人との繋がりを大切にしているうちに5年ほどで周囲から仕事を紹介してもらえるようになり、成果が出始めました。あれだけぶつかっていた父も「すごいな!」と褒めてくれた時はうれしかったです。渋谷フクラスに開業時から入っている1階のスターバックスは地域の繋がりから成約できた初めての大きな仕事でした。今では「渋谷で何かやるときは鈴木に話してみるといい」と言ってくれる方もいるそうです。地道に地域との繋がりを大事にしたことは正解だったと確信しています。

中高生起業体験プログラム「まなぶや」の真意とは

中高生を対象にした起業体験ができるプログラム「まなぶや」。学生たちが2か月ほど社会課題の解決やビジネスに向き合い、将来の選択肢を広げることを目的としている。このプログラムを立ち上げた理由は大輔さんの過去が深く関係していた。

18歳の時から父の元で働き始めた大輔さんが一番苦労したのは、社会の仕組みや経営の知識がないまま2015年、33歳で太平洋商事の代表を受け継いでからだったという。この経験から日本の学校ではお金や起業の勉強をしないことに疑問を持ち、小中高生でも学べる環境を作るに至った。

 

ーー「まなぶや」の役割とはどんなことだと思いますか?

まなぶやでは「社長になりなさい」ではなく社長になるという選択肢を与えているだけ。将来何になるにしろ、中高生のうちから選択肢があることを知るのは大事だと知ってもらうことです。

そして、僕自身はまなぶやを通して、中高生と話すことが楽しいと感じるようになり、お金を稼ぐばかりではなく、ハッピーに楽しいことをやりたいと考えるようになりました。

まなぶやに参加する中高生と話していると楽しいんですよ。機会をあげると目をキラキラさせて取り組んでくれるのが嬉しくて、できるだけ中高生に機会を提供することで自分もハッピーになる。学生のために“やってあげてる”だと多分、ハッピーじゃなくなってしまうと思います。

 

ーー渋谷新聞に多くの中高生ライターが所属している背景が垣間見えた気がします。では、大輔さんの強みを教えてください。

一つは引き出しが多いこと。もう一つは繋がりが多方面にあることです。僕は不動産に始まり、商店街、多くの団体役員、地域貢献事業、スタートアップ支援、SDGs事業、メディア運営、中高生企業支援などいろいろなことをやってきました。知識で知っているだけではなく、実際にトライ&エラーを体験した回数が多いので、経験を伴った話しができます。
これが大事で、人にやっていることの話をすると「ワクワク」してるように見えるらしいんです。その様子をみて新しい繋がりができたりする。そうして作った繋がりが、まなぶやや渋谷区SDGs協会、渋谷新聞や原宿表参道新聞などのプロジェクトになって、さらにプロジェクト同士がつながる。まさに点が線に、線が面に、面が球になって拡がっていっています。

 

渋谷新聞=まちづくり

ーー渋谷新聞立ち上げ時のエピソードをお聞きしてもいいですか?

2021年の9月に地域密着新聞ネットワークをまとめている恵比寿新聞の高橋ケンジさんが、渋谷中央ブロックの新聞をやる人を探していて「あ、僕やります」って手を挙げました。11月10日がハチ公の誕生日だったので、その日にスタートすることに決め、2か月で初めてやるメディアを立ち上げるのは大変な作業でしたが、なんとか形にしました。「渋谷新聞=まちづくり」と思っていたので、ローンチ後は「街をつくるのは若い子たち」という観点から、まなぶやで出会った学生2人に声をかけ、その後は学生同士で友だちを呼んできてくれて広がっている感じです。

 

▲1月19日のキックオフイベント。各チームが考えた間取りを紹介している

ーー現在大輔さんはセンター街の太平洋商事が入っているビルの6階“SPONGE”という、学生による学生のための空間を作るプロジェクトをスタートしていますよね。このプロジェクトは大輔さんにとってどんなものですか?

これはまさに、さっきも話した点が線に、線が面に、面が球になってきたこと。まなぶや、センター商店街、渋谷区SDGs協会、そして渋谷新聞と原宿表参道新聞といった僕がいままで取り組んできた渋谷の全てが一つになる場です。

すごくワクワクしていて、最近はこの活動のことをずっと考えています。

 

行動力を大事に!

ーー最後に、学生たちにメッセージをお願いします。

中学校で講演をする時に言っているのは、「PDCA(Plan Do Check Action)なんていらない。DDDD(Do Do Do Do)でとにかく動いてみるといい」です。Plan(計画)を立てていると動けない。とにかく動いてみると、そこからPDCAが回っていく。渋谷は特に物事のスピードが早いです。とにかく動いてスモールスタートをすることで失敗も見えてくるし、それが実績になって周りを巻き込めるようになっていく。とにかくやってみる、これは僕の得意な事だし、「行動力」は大事にしていることです。

 

今回初めて執筆する記事ということで、日頃からお世話になっている大輔さんに話を伺った。普段あまり自分の思いを熱く語ることのない大輔さんの、心に秘めた熱い思いを引き出そうと挑んだ初取材。大輔さん自身も驚くほど熱い思いを聞き出せたのではないだろうか。

 

◾️鈴木大輔 略歴
1982年6月東京生まれ、渋谷在住。太平洋商事株式会社入社後、地場の不動産業者として少人数体制にも関わらずこれまでに1,000件以上の事業用不動産契約を成立させる。2015年より太平洋商事の代表取締役に就任。誠実な経営方針が功を奏し事業の拡大に成功する。

未来を担う子ども達へ「機会の提供」を人生のテーマとし、子ども食堂や学童でのワークショップも開催。中学校(シブヤ科)や高校では教壇に立ち、自身が取り組んでいる「地域課題の解決」について伝える活動や「起業体験プログラム」などを提供している。今では各方面より頼られる渋谷のコンシェルジュ的な役割を果たしている。バスケが大好き、4姉妹の父でもある。

 

〈役職〉
◇渋谷センター商店街振興組合・宇田川町会 常務理事
◇渋谷新聞・原宿表参道新聞 代表
◇一般社団法人渋谷区SDGs協会 代表理事
◇渋谷をつなげる30人 2期 アドバイザー
◇東京青年会議所 渋谷区委員会 第45代委員長
◇東京商工会議所 渋谷支部 ビル事業分科副会長
◇東京商工会議所 渋谷支部 青年部副幹事長
◇渋谷法人会青年部会 幹事
◇株式会社まなぶや 取締役ファウンダー
◇株式会社シブテナ 代表取締役会長
◇太平洋商事株式会社 代表取締役

株式会社まなぶや
一般社団法人渋谷区SDGs協会
渋谷センター商店街振興組合
株式会社シブテナ
渋谷新聞
太平洋商事株式会社

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