【開催レポート】渋谷区立小中PTA合同研修会 地域と学校がつながる「未来の学校」

渋谷区在住の公立小中学生保護者として、日頃からPTAの活動には感謝をしている筆者ですが、地域住民として区内公立小中学校の建て替えや統廃合にはとても興味があります。去る11月10日に渋谷PARCOで行った、長谷部区長と渋谷新聞高校生ライターの公開取材でも話題になっていた渋谷の「未来の学校」は、その地域に開かれた学校というコンセプトからしてどうなっていくのか興味のあるところです。

そこで、11月30日に渋谷区役所の大集会室で開催された渋谷区立小中学校PTA連合会連絡協議会が主催する、小中合同PTA研修会『未来の学校〜子供たちのため、今からできること〜』に参加してきました!

長谷部区長と五十嵐教育長が登壇し、保護者からの質問を受けつつ小中PTA会長をパネラーに迎えてのディスカッションも行い、とても中身の濃い研修会は、司会者の「否定から入らず、こうなったらいいなという視点で参加してほしい」という言葉と共にスタートしました。

コミュニティの核となる学校

渋谷という街は、戦後急激に人口が急増したエリアです。現在使用されている学校や区民施設はその頃に建てられたものが多く、築60〜70年の建物がほとんど。それらの大きな建造物を全て建て替えるとなると3,000億円の予算が必要だといいます。

児童・生徒数減少に伴う学校の統廃合、既存の学校を統合して小中一貫教育校の設立、そこに100年先を視野に入れて区民施設も組み込んでいくといいます。学校と区民施設を同時進行で立て替えていくので、教育委員会と協力しあいながらパズルのようにスケジュールと仮校舎の場所を試行錯誤し、2023年から20年かけ建て替えを行っていく計画とのこと。町会や民生委員等の区分けと学区のズレなども、建て替えをしていく過程で次の100年を見据えながら調整していくチャンスと考えているそうです。

まずは中学校から移転が始まります。青山病院跡地と西原スポーツセンターのグラウンドに仮設校舎を建て、令和7年(2025年)度から仮校舎への移転を開始する予定だといいます。(詳細は区のホームページへ)
校庭に仮校舎を建てる学校や、近隣のマンションとの共同改築にすることでコストダウンを図る計画など、場所とコストの有効活用に取りんでいくそうです。

そこで気になるのが、建て替え後はどんな学校が出来上がるのかというところ。7月に発表された「未来の学校」プロモーションビデオを観ると夢が広がります。

従来の詰め込み型の教育から応用力、発想力を培い、“個”を尊重する教育へシフトしていくのはもちろん、地域に開かれた学校というのはとても魅力的に響きます。もちろん安全面を確保するための仕組みづくりも検討されており、地域住民としてもどうなっていくのか楽しみです。
各町会をまわって住民の方からのヒアリングを行うと「もう自分達は生きていないからなんでもいいよ」という声も聞かれるとか。地域に根ざした施設を作るためにも、未来に向けて皆が想像を膨らませることも不可欠なのだと感じます。学校を地域コミュニティの核とするためにも、いろいろな意見を集め、学校に付属する教室やテニスコートといった施設が使用されていない時は、地域に開くことも計画されているそうです。
他にも、仮校舎とは呼ばずに「渋谷キャンパス」といった呼び方を検討されていたり、今後通学はスクールバスの導入や自転車通学の許可も検討していること、放課後に他校との合同部活のために移動するということも想定しているなど建て替え中の制約もチャンスと捉え、児童・生徒の意見も取り入れていというのはとても楽しみです。

保護者の“得意”を巻き込む学校への期待

PTA会員が事前に寄せた区長への質問への回答と併せて行われた、5校のPTA会長とのディスカッションも興味深く、保護者の意見を前向きに取り入れていこうという姿勢が伺えました。
インクルーシブ教育についての質問に対して長谷部区長は、東京大学先端科学技術研究センターと子供の突出した能力を伸ばしていくプロジェクトを行っているということ、また、多様性もマイノリティも尊重しあえる寛容さが大切だと訴えました。現状、小学校から中学校への進学時に約5割の児童が私立中学へ進学する中、渋谷の子供達がもっと渋谷を知り、愛着を持ってもらうことを目的とした「シブヤ科」や、既存の部活動に加えて渋谷区立中学校8校の生徒が参加できる合同の部活動といった取り組みを実践することで地元により根付くきっかけを増やしていく取り組みが行われているそうです。

早くから児童・生徒1人に1台のタブレットを支給している渋谷区ですが「ICT教育については保護者の中にはプロの方も多いので、サポートをお願いしたい」という話からICTサポートPTAを作るという話に発展し、区長自らが来年度からやっていこうと話すスピード感に頼もしさを感じました。
従来は教員の経験や勘が頼りだった各児童・生徒の状況も、タブレットの使用状況や検索履歴といったデータ分析から課題を見つけ出し、必要に応じた対応や改善策を考える、個々に応じたサポートも可能になってきているそうです。こちらもやはりデータの有効活用ができる教員が必要になっていきます。

違うことを伸ばしていく教育へのシフト

続いて登壇した五十嵐俊子教育長からは、教育の内容にフォーカスした話を聞くことができました。10年ごとに改訂される学習指導要領ですが、現在の日本の教育のベースは明治以来のやり方。今後は想定外のことが起きても柔軟に対応でき、迅速に行動に移せ、創意工夫ができるようになっていくための教育が必要です。
子供が自分で課題を見つけ、教員の役目はそれをファシリテートすることだといいます。
パネラーとして参加していた神宮前小学校PTA会長山田さんは「より早く・より正確にを求められたのが我々の世代。これからは“個”の時代で、子供の軸をみつけられるように、未来志向が大切になる」というコメントがありました。
「誰一人取り残さない教育」が大切なのと同様に、進んでいる児童・生徒へのケアも大切で凹を伸ばして平均的にするのではなく、“凸”をもっと伸ばす教育を望む声も聞かれました。そのためには保護者もできないことではなく、できることを見守る姿勢が求められます。

最後には広尾中学校のキャリア教育、鉢山中学校のSTEAM教育、区内唯一の小中一貫教育校である渋谷本町学園についても各PTA会長から聞くことができ、盛りだくさんな内容でした。

 

こういった保護者の声がリアルに区長や教育長に届く場があるというのは喜ばしいことだからこそ、今後も継続して行ってほしいと感じました。現在小学校高学年と中学生の我が子は年齢的に新築された校舎に通うことはないのですが、地域の施設としての機能を併せ持つ学校施設というのはとても楽しみです!

 

◾️渋谷区『新しい学校づくり』 整備方向詳細情報
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/assets/kusei/000065076.pdf



 

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