教育は若者を照らす光 FOS 長谷川雄飛さん・高瀬悠さん

7月に設立されたNPO法人、FOS。立ち上げたのは東京大学や慶應大学などに通う現役大学生です。渋谷を中心に活動している彼らの目指す未来とは何なのか。代表の長谷川雄飛さん・副代表の高瀬悠さん(以下敬称略)にお話を伺いました。

 

教育の格差をなくしたい

 

ーーFOSとはどんな団体ですか?

 

長谷川:

中高生の学習・進学の支援を行っているNPO法人です。

立ち上がったのはつい最近で、NPO法人として認証を受けたのは今年7月になります。

メンバーは全員現役の大学生で、東大を中心に京大・早稲田・慶應、他にも海外大など幅広い大学から参加しています。

 

ーーFOSという名前の由来は何ですか?

 

長谷川:

FOSは4つのFを掲げています。

Fundamental(基盤)・Free(自由)・Fair(公平)・Future(未来)の4つで、それぞれにFOSの理念に沿った意味が込められています。

その理念というのが、教育は道路のようなインフラである、ということです。

過去のどんな文明も道路を整備するところから始まっています。

また、その道路を誰もが自由に・公平に使えるからこそ社会が発展してきたんですよね。

教育も同じように、みんなが自由に・公平に使えることが重要だと私たちは考えています。

そして、そういった自由で開かれた教育の先にあるのが明るい未来です。

この4つのFはそういった思いからきたものです。

また、FOSという言葉にはギリシア語で「光」という意味もあります。

私たちは教育で社会や若者を照らす光になりたいという思いを持って活動しています。

 

ーー具体的にどういったことを目的に活動されているのですか?

 

長谷川:

教育の格差をなくす、というのが私たちの目的です。

教育にはさまざまな格差があって、地域格差・経済格差・ジェンダー格差・障がいに合わせた教育などいろいろな問題があります。

もちろん、こういった問題に対して既にいろいろな団体から支援などはなされていますが、まだまだ行き届いていないところも多い、というのが私たちの活動の出発点です。

 

ーー今の社会ではどんなことが問題だと考えていますか?

 

長谷川:

一番の問題だと思っているのが、地域格差です。

先ほどの支援の話で言うと、教育に関する支援が都市部に集中してしまうと、格差をなくすための支援が逆に格差を産んでしまうという矛盾が生じてしまいます。

このように、都会と地方で受けられる教育に差が出てしまう、というのが地域格差です。

地域格差の一つの例に、コミュニティ間による情報格差というものがあります。

例えば、都会の進学校に通っていれば、先輩や卒業生から簡単に大学の話や、受験に関する情報を聞くことができます。

一方地方だと、大学進学率が低いこともあり、そもそも大学の情報が入ってこない。

レベルの高い大学に行く力があっても、情報がないことで進学することを思いつきすらしない、ということが起こりうるんですね。

 

高瀬:

例えば、僕の通っていた灘高等学校では中学のうちに高校での数学範囲を終わらせて、部活も高校2年生で引退するという人が多くいました。

東大や京大を目指すならそれが普通、という世界だったんですね。

それを知らない人が、3年生から東大・京大を目指して勉強を始めても、出遅れてしまうということも実際にあります。

 

 

学生一人ひとりに寄り添う

 

ーー具体的にどんな活動をされているのですか?

 

長谷川:

一つはWebメディアの運営です。

先ほどの情報格差の話とつながるところで、情報の入手が難しい中高生のために、大学生が実際に記事を書いてリアルな受験生活・大学生活を発信しています。

 

 

もう一つの軸となるのがLINEオープンチャットの運営です。

FOSメンバーのいるオープンチャットへ中高生に入ってもらい、自由に気軽に話してもらうというのがコンセプトです。

高校生が受験のことで悩みがあったら、すぐにその大学の現役学生に質問できるという環境を目指しています。

FOSには地方から東京に出てきた人もいれば、逆に東京から地方に進学した人もいたりとメンバーが多様で、学生一人ひとりに寄り添える回答ができるよう意識しています。

 

 

ほかにも、茨城県の高校で行われる探求活動の授業でサポートをさせていただいたりと学校との連携も行ってきました。

 

▲高校での探求活動の様子

 

高瀬:

今後力を入れたいと考えているのが、オフラインでの活動です。

高校生向けに東大のキャンパスを案内するといった活動や、放課後に学校の自習室で勉強を教える学習支援などを考えています。

また、将来的にもう一つ考えているのが、中高生の居場所作りです。

中高生がいつでも来られる場所を作って、そこで勉強をしたり、大学生と話したり、好きなことをしたりできる。

団体が大きくなったら、そういった場所をいろんな地域に増やしていきたいです。

 

ーー今活動する中でどんなことに苦労していますか?

 

長谷川:

一番はリーチの難しさですかね。

地域格差をなくすという私たちの目標のためには、地方の中高生にFOSの取り組みに参加してもらうというのがとても重要です。

ですが、オープンチャットなどの参加者は都心の学生に偏ってしまっているというのが現状です。

それと、オープンチャットの参加者も30人くらいとまだまだ活性化できているとは言えません。

全体の質問が少ないと、中高生からしても余計に発言しづらくなってしまうと思うので、学校と連携するなどしてもっと広めていきたいです。

 

教育で広がった世界

 

ーーお二人がこういった活動を始めるようになったきっかけはありますか?

 

長谷川:

高校2年生の時に、教育に関わる活動をしたのがきっかけです。

当時、大学入試がセンター試験から共通テストに切り替わるという転換点で、記述式問題や英語の民間試験を取り入れることが検討されていました。

ですが、その新しい制度は問題点が多く反対する人もかなり多かったんですね。

僕もそのうちの一人で、行動を起こそうと思い、仲間と学生団体を立ち上げて署名活動を始めました。

活動はいろんな方の協力もあって上手く行き、国会などで教育に関わる方とつながることができました。

こういった活動を通して教育への興味を強く持つようになりました。

 

高瀬:

僕は、中学まで公立で、大学進学率も半分くらいの学校に通っていました。

そこではそこそこ勉強ができたら公立高校、それ以外は私立に行く、というのが常識で、もちろん東大・京大なんていうのは遠い存在、という感じでした。

僕はそこから灘高校・東京大学と進んできたんですが、そのきっかけはたまたま少し遠い大手の進学塾に入ったというだけだったんですね。

もちろん中学でも僕と同じように勉強のできる子はいましたが、ちょっとした環境の違いでこんなにも世界が変わるということを実感しました。

こういった経験から、誰もが選択肢を持って自分の進路を決められる社会というのを考えるようになったのが活動を始めたきっかけです。

 

ーー大学生になって暮らし始めた渋谷の街はどのように感じていますか?

 

高瀬:

一番に感じるのはやはり、利便性の部分ですね。

何か欲しいものがあっても、15分もあればなんでも買いに行けますし、商品もいろんなものが揃っている。

もちろん最初は戸惑うことも多かったです。

例えば電車の乗り換えでも、「JRって一言で言われても分かんないよ」っていう感じで(笑)。

 

ーーお二人は今2年生ですが、卒業された後FOSはどうして行こうと考えていますか?

 

高瀬:

やはりFOSは学生団体としてスタートした団体なので、ずっと大学生で回して行けたらいいなと思っています。

僕たちが卒業した後も、教育に興味のある学生たちが集える場所になれば嬉しいです。

 

▲高瀬悠さん(左)、長谷川雄飛さん(右)

 

 

◾️長谷川雄飛さん 略歴

東京都出身

2018.3芝中学校卒
2021.3芝高等学校卒
2021.4東京大学理科二類入学

特定非営利活動法人 FOS代表

 

◾️高瀬悠さん 略歴

兵庫県出身

2020.3灘高等学校卒
2021.4東京大学理科二類入学

特定非営利活動法人 FOS副代表

 

◾️FOS 概要

WEB:https://npofos.or.jp/ 

Instagram:@npofos

Twitter:@fos_npo

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