渋谷から全国へ。「地域共創」の未来を考える JR東日本『WaaS共創コンソーシアム』フォーラム

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3月10日、渋谷スクランブルスクエア15F「渋谷キューズ」で、JR東日本主催の『WaaS共創コンソーシアム』ウェルビーイング領域における地域共創フォーラムが開催されました。
この場所は、JR東日本・東急・東京メトロの3社が共同開発した渋谷のランドマーク。
まさに大都市・渋谷の中心から、全国の「地域共創」について議論するという、象徴的な場となりました。

今回のフォーラムでは、「都市と地方のつながり」「ウェルビーイングの新しい形」「テクノロジーを活用した地域共創」など、多岐にわたるテーマが語られました。
筆者自身も渋谷と全国の地域での共創事業を研究しており、とても興味をもって参加しました。

「学び続けることがウェルビーイング」— 若宮正子さんのメッセージ

▲講演をする若宮正子さん。若宮さんが着るシャツはご本人がデザインしたピクセルアート。

基調講演のひとつ目は、“世界最高齢のプログラマー”として知られる若宮正子さん。
高校卒業後銀行で定年まで勤めた若宮さん。当時は銀行もまだ機械化されていない時代。退職を控える58歳に当時ようやく世の中に出始めたパソコンを購入。独学でパソコンを学び、80歳でスマホアプリを開発。現在も、90歳を迎えるとは思えないほど精力的に活動を続けています。

「高齢者もITリテラシーがあると孤独じゃないんです。ウェルビーイングって、結局は学び続けることなんです。スマートフォンが出てきた時にも高齢者には使いにくいと思ったので、自分で勉強してアプリをつくっちゃいました。いくつになっても新しいことを知るのって楽しいですよね。私は毎日がワクワクです」

「年齢を理由に挑戦しないのはもったいない!」と語る若宮さんの言葉に、会場の参加者も大きく頷いていました。

「NFTで地域を支える」— 林篤志さんの新たな挑戦

次に登壇したのは、Next Commons Labファウンダーの林篤志さん。
林さんは、NFTを活用し、地域と都市のつながりを生み出す新しい仕組みを紹介しました。

特に話題となったのが、新潟県旧山古志村の「デジタル村民」の取り組み。
NFTを活用することで、都市部の人々が「第2の村民」として地域づくりに参加できる仕組みを作りました。

また、三重県尾鷲市では、森林を守る活動にNFTを活用し、企業や個人が環境保全に貢献できる取り組みを進めています。

これらのプロジェクトを通じて、「都市に住む人も、全国の地域の一部になれる」という可能性を感じました。

基調講演に続いて、WaaS共創コンソーシアム会員等の活動発表が行われました。

▲WaaS共創コンソーシアム等で活動を行う地域の活動発表(写真は宮城県の発表)

パネルディスカッション:「限られた資源を可能性に変える、共創で生み出すウェルビーイングな地域」

▲モデレーター、登壇者の皆さん(左から田中さん、東浦さん、齊藤さん、八木さん、矢野さん、安田さん)

その後は、全国の地域で生まれる共創プロジェクトについて議論するパネルディスカッションが行われました。
登壇者は、東急総合研究所の東浦亮典さん、合作株式会社の齊藤智彦さん(鹿児島県大崎町)、株式会社DOSOの八木毅さん(山梨県富士吉田市)、株式会社MARBLiNGの矢野淳さん(福島県飯舘村・東京)、JR東日本イノベーション戦略本部の安田致敏さん。そしてモデレーターは事業構想大学院大学学長の田中里沙さん。

全国各地で地域共創に取り組むプレイヤーが登壇し、それぞれの活動について語りました。

「ごみは資源」— 鹿児島県大崎町 × 齊藤智彦さん(合作株式会社)

齊藤さんは、鹿児島県大崎町で「日本一のリサイクル率」を誇る取り組みを推進しています。
「地方の資源は限られています。でも、それを可能性に変えることができる。たとえば、ごみを減らすだけでなく、資源として再活用することで、新しい価値を生み出せるんです」
大崎町では、住民と行政、そして企業が一体となり、循環型社会のモデルを作り上げています。

「古い建物が、新しい価値を生む」— 山梨県富士吉田市 × 八木毅さん(株式会社DOSO)

八木さんは、富士吉田市で古民家や空き家をリノベーションし、宿泊施設「SARUYA」を中心にカフェ、アーティストレジデンスなど新たな交流拠点を作る活動を行っています。
「地方の価値は、歴史や文化にあります。古い建物を壊すのではなく、新しい使い方を考えることで、地域の魅力を引き出すことができるんです」

また、八木さんは「FUJI TEXTILE WEEK」という布をテーマにしたイベントを通じて都市部のクリエイターとも連携しており、富士吉田の町に多くの関係人口を創出しています。

「二拠点でつくる“新しい関係”」— 福島県飯舘村 × 矢野淳さん(株式会社MARBLiNG)

矢野さんは、福島県飯舘村と東京の二拠点で活動。飯館村ではホームセンターを改修した秘密基地図図倉庫(ズットソーコ)を運営し、「都市と地方の架け橋」となるプロジェクトを展開しています。
「東京で暮らしながら、地方と関わる方法はいろいろあります。飯舘村では、農業や地域資源を活かしながら、新しい関係性を築く仕組みを作っています」
矢野さんの活動は、「地方に住むか、都市に住むか」という二者択一ではなく、「両方に関わる」ライフスタイルの可能性を示しています。

「渋谷だからこそできる地域共創」

今回のフォーラムでは「都市と地方は対立するものではなく、お互いに必要な存在である」ということを改めて認識する場になりました。
渋谷は、「情報を発信する場」「新しい文化を生み出す場」「多様な人が集まる場」という特性を持ち、地域とのつながりを生むハブになれるポテンシャルがあります。

フォーラムを通じて 「都市に住む人は、どうやって地域共創に関わることができるのか?」という問いかけを考えるきっかけになりました。

デジタル村民のように、オンラインで地域の活動に参加すること、都市の企業や団体が、地方と連携したプロジェクトを立ち上げること、渋谷のような街で、地方の取り組みを発信する場を作ること。さらに都市も一つの地域という考えのもと、都市に住みながらも「全国の地域の一員」になってウェルビーイングを実現できる方法はたくさんある。そんな未来を考えるきっかけとなるフォーラムでした。

これからも「地域共創」の視点を大切にしながら、全国の事例を伝えていきます!

◾️開催概要
JR東日本『WaaS共創コンソーシアム』ウェルビーイング領域における地域共創フォーラム
主催:WaaS共創コンソーシアム(WCC)
共催:SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)、株式会社ロフトワーク
主管:JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)
日時:2025年3月10日(月)13:30〜16:30
会場:渋谷キューズ スクランブルホール

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