欲望する都市 と身体 アーティストJACKSON kakiさん

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2026年2月13日(金) 〜15(日)の間、渋谷のいたるところで行われたアートとテクノロジーのイベント「DIG SHIBUYA」。渋谷パルコ9階では、アーティストJACKSON kaki(ジャクソン カキ)による渋谷を舞台とした新たなインスタレーション作品「欲望する都市」が制作され、発表展示されています。今回は、アーティストのJACKSON kakiさんに渋谷との関わり方の変化や、社会と身体の関係性についてお話を聞かせていただきました。

渋谷と身体と都市

ーー自己紹介をお願いします
JACKSON kakiです。映像や3DCGを使ってアーティスト活動をしています。今回はDIG SHIBUYのプロジェクトの一環として、MRのデバイスとフィジカルの作品を合体したものを制作させていただきました。

ーーどういう経緯で、渋谷がテーマにした作品を制作することになったのでしょうか

今回の作品含め、これまで僕がアーティスト活動するときには、パフォーマンスや身体をモチーフに作品を制作してきています。その背景には、大学院で研究していた内容が関係しています。
1989年に刊行された養老孟司さんの『唯脳論』と、そのお弟子さんでもあって、美術解剖学者の布施英利さんという方が書かれた『死体を探せ! バーチャルリアリティ時代の死体』という本があります。そこでは、社会とか都市が発展していくにつれて、身体が隠されていく、という視点が書かれていたんです。
分かりやすく言うと、例えば暴力、生、死というものは、特に真っ先に隠されているんです。都市や社会というものは、脳みそで作られたものであり、脳みそが考えたことを形にしていくものです。それに対して、暴力、生、死などは不都合なものであり、距離を置いていた方が円滑に社会や都市がつくりやすい。そういった概念を「隠された身体」と呼んでいます。

僕はそこから、テクノロジーが身体をさらに隠していくのではないかと思いました。VRをつけていれば、寝たままで誰かとコミュニケーションできたりとか、誰かと会話ができたりとか、あるいはセックスができるかもしれない。そういうテクノロジーが身体を隠していく。だからこそ、僕は逆にテクノロジーを用いて身体を露出する、露わにすることをパフォーマンスや身体的な表現としてやってきました。

そういった背景がある中で、もう1個レイヤーの違う話をしようと思いました。隠された身体の前提にある「社会」とか「都市」というところにフォーカスしようと。それが、今回の出発点でした。

1、2年前はずっと歌舞伎町に行っていたりとかしてたんですけど、最近は恵比寿の方に拠点を持って、渋谷のサクラステージによく出入りしてたりするんです。そのあたりにある、再開発ビルに通うようになって、ふと気付いたことがありました。

ビルとビルの間にある、陸橋や空中回廊みたいなものを渡っていると地上に降りなくても移動できる。ずっと空中を歩いている、ビルとビルの間を歩いている、と。これ、実はすごいことなんじゃないかと思って。人間が地上に降りなくても、空中を歩いているだけで渋谷を回れるんじゃないかというのが自分の中での着想点です。そこから、渋谷の再開発や渋谷の都市ってもの自体が、空に向かっていってるんじゃないかと思いました。

ビル自体がどんどん空に向かっていくっていうのは、日本の土地の問題だったり、地震の問題だけではないんじゃないかと。機能的な話だけじゃなくて、人間の根源的にある「空への欲望」みたいなものと結びついているのではないか。そう考えた時、渋谷の再開発と人間の欲望を結びつけた作品を作ろうと思いました。それを共存するための身体やテクノロジーを用いてミクストメディア的な作品を作ることになりました。

ーーでは最近は渋谷によく来られているんですか?

最近は渋谷が多いですね。元々、アーティスト活動をする前からVJやDJをずっとしていて、そのクラブは渋谷が多かったですね。その時代からずっと来ていますね。


フィジカルとデータ

▲実際に人間が映ると「PERSON」と表示されるLED映像

ーー今回この作品を制作してみてどうでしたか?

自分の中で挑戦的なものをやったと感じています。

流れているLEDの映像は、24時間配信しているスクランブル交差点の映像をリアルタイムで取得して、それをビジュアライゼーションしています。この映像では、人間が通るたびに「PERSON」と表示されます。
そこにあるのは身体ではなく、ここではただの情報でしかないのです。情報がただ歩いているだけで本当に人が歩いてるわけじゃない。フィジカルに対してデジタルツインのような、もう一歩の渋谷みたいなものとして、データとしての人間が扱われている。

僕の中で、人間って身体の話もそうだけど、こうやって身体や皮膚を持って何かしたりとか、フィジカルでやったりとか、哲学的な言い方をすると実存があったりします。
その上で、こういうバーチャルだったりとか、デジタル作品で人間を取り扱ってデータだけになった時に、果たしてそのデータを使うことがどういう実存を持つのか。

データの値によって映像内の心臓が動くっていうシステムを作ったんですけど、データ化されると、全てが何かしらの養分になり、情報になるという行為の面白さと奇妙さみたいなものに今回気付けて取り込んでて良かったと思う点です。

ただ、身体を持たなくなった人間の行く先みたいなことについては、今後も研究して制作していきたいと構想しています。

◾️JACKSON kaki
1996年静岡県生まれ、情報科学芸術大学院大学卒業。アーティスト、DJ、VJ、映像作家、グラフィックデザイナーとして活動する。VR/AR、3DCG、映像、パフォーマンス、インスタレーション、サウンドなど、マルチメディアを取り扱い、身体・都市・情報を軸に作品を発表する。

主な展示・出演に京都市京セラ美術館、中国・上海外灘美術館でのAudio Visual Live、イタリア・MATTATOIOでのVR作品のキュレーション及び展示。2021/24/25年にはMUTEK.JPへ出演。2025年度のメディア芸術クリエイター育成支援事業に採択される。

Twitter : @Kakiaraara
Instagram : @kakiaraara
TikTok : @kakiaraara
Youtube : @kakijackson2697

◾️JACKSON kaki 「欲望する都市」
アーティストJACKSON kaki(ジャクソン カキ)による渋谷を舞台とした新たなインスタレーション作品「欲望する都市」の発表展示を渋谷PARCOで開催いたします。
作品は、物理的な展示に加えて、人によるパフォーマンス、VRヘッドマウントディスプレイの映像を組み合わせた、リアルアートとデジタルメディアを複合的に鑑賞するインスタレーションとなっています。
JACKSON kakiが一貫して注視してきた「都市」にフォーカスし、 独自の解釈による”渋谷の再開発とそこから表出する人間社会の欲望”を、1.ハード(物理展示)、2.身体(パフォーマンス)、3.情報(VRヘッドマウントディスプレイ)といった3つの重層的な視座から立ち上げます。

イベント期間:2月13日(金) ~15(日) 各日11:00-21:00
会場:渋谷PARCO 9F 特設会場
鑑賞:無料
パフォーマンス開催時間:
14(土)①15:00-15:30 ②20:00-20:30
15(日)①15:00-15:30 ②19:00-19:30
※日時・内容は変更になる場合がございます。
※会場が混雑した場合、観覧を規制する可能性がございます。
主催:株式会社パルコ
マネジメント:李静文
機材協賛:X Vision 株式会社

パフォーマー:
花形槙
森澤碧音
いむ頓知

制作:
伊豫田真太朗
新谷啓
丸山葉音

サポート:
芳賀 菜々花
Kanae Noguch

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