生まれも育ちも渋谷区の宮本里乃亜さんは、渋谷区立神南小学校、渋谷区立松濤中学校出身の高校2年生。わたしの小学校の同級生でもあります。小学校6年生の渋谷区連合陸上記録会で走り幅跳びに出場した際に好記録を樹立し、秘めていた才能を開花させました。中学校に入り部活を通して走り幅跳びを本格的に始め、ジュニアオリンピックカップ(以下、JO)、全日本中学校陸上競技選手権大会に出場。高校に進学してからも、JO、日本陸上競技選手権大会に出場して瞬く間に全国の舞台で活躍する選手となりました。専門は走り幅跳びですが、100m競走やリレー競技、1マイル競走の選手としても活躍しています。
全国の舞台で戦う里乃亜さん
ーーこれまで出場した大会で一番印象に残っているのはいつですか?
2022年夏のU18日本陸上競技選手権大会(以下、日本選手権)です。高校1年生のときのインターハイがコロナ禍で開催されなかった分、日本選手権に懸ける思いは大きかったです。日本選手権のときは調子も良く、自己ベストも更新し、入賞もできるはずでしたが、直前に肉離れをしてしまい、力を出し切れないまま終わってしまいました。
2022年の日本選手権は自分にとって、とても悔しい大会となってしまいましたが、同時に日本選手権で改めて自分の技術や記録で全国の選手を相手に戦えることを実感しました。
ーー走り幅跳びについて教えてください。ホップ・ステップ・ジャンプという感じですか?
ホップ・ステップ・ジャンプは3段跳びです(笑)。走り幅跳びは、3段跳びとは違って、まず助走から入って踏切板で踏切るんです。踏切板といっても、バネ製ではなくてただの板なんですけど、板は30cmあってスタート側の20cmが白色、ゴール側10cmが緑色で、足が緑色にかからないように跳ぶんです。かなり助走が大事で、助走が上手くいかないと踏切も上手くいかずに記録も出ないので、助走を大切にしています。良い助走と踏切りのタイミングがあったときに、遠くまで跳べて、とても気持ちがいいんです。
また屋外の会場で行われる場合、陸上競技の各種目には追い風、向かい風の考慮がありますが、走り幅跳びにはありません。なぜかというと着地する砂場がグラウンドの両側にあるので、そのときの風の向きで走る方向が決められるので、常に追い風状態で競技を行えるんです。その風向きの心配がないと考えると、走り幅跳びの選手で良かったなと思います(笑)。
ーー全く走り幅跳びという競技を理解していなかったです(笑)。踏切板にバネがあるわけじゃないのに、6m近く跳ばれるんですね。びっくりです! 進化した里乃亜さんの走り幅跳びを実際に観たくなりました!
ぜひ観にきて欲しいです! 観戦可能の大会があれば連絡しますね(笑)!
ーー1日オフがほとんどない毎日のハードな練習の中で大切にしていることはなんですか?
「練習は本番のように本番は練習のように」ということを意識しています。練習が出来ていれば、本番もできるだろうし、逆に練習で出来てないことは本番でも出来ないだろうから、その部分をいつも大事にしています。
あとは、「常に楽しくやる!」ということを大切にしています。辞めたいって思わないためにも、「なんの為にやっているか」が分からなくならないように考えること、また過程を大切にするようにしています。辛いことを乗り越えていって、いつかは結果に結びつくと信じて頑張っています。
ーー私はいつも水泳の試合前に緊張して思うようなパフォーマンスが出来ないんですけど、試合のときのルーティーンや緊張を和らげるためにしていることはありますか?
ルーティーンは特にないし、普段の食事の制限もありません。大会の調子が1日、2日前の生活で変わるので、直前になると少し生活を気にします。普段あまり緊張しないタイプですが、緊張してしまった時は、今までやってきたことを信じて跳ぶ。どうしてもプレッシャーを感じてしまうときは、信頼する先生も見ているし「やってやろう!!」という気持ちを持つようにしています。
ーーアスリート目線からの質問です。普段競技のために何か制限されていることはありますか?
食事の面だと、特に制限されていることはないんです。コーチからは「食べるもので結果が変わるなら、記録が安定しない。今は成長期だから、好きなものを食べて、たくさん寝て、たくさん練習しなさい」と言われています。さすがに大会前は少し考えますが、普段は好きなものを食べています。
ーー子供の成長期をちゃんと大切に思われている素敵なコーチですね!
いつも感謝しています!
里乃亜さんのこれからの夢
ーー中学校1年生のときに走り幅跳びを本格的に始めてから5年。競技から得たものはありますか?
仲間の大切さですね。今まで色々なことをやってきたけど、どれも長くは続かなかったんです。でも走り幅跳びはやっていて楽しい。もちろん、個人競技だから結果は全て自分の責任だし、プレッシャーも期待も自分が背負わなきゃいけない。ベストが出なかったり、練習がうまくいかないときはやっぱり気持ちが落ちることもあります。
だけど、練習はずっと一人じゃ頑張り切れなくて、仲間がいるから頑張れる。走り幅跳びは個人競技だけど、大きくみればチームスポーツです。仲間の力強い応援やサポート、それらにも支えられて、毎日練習を積み重ねることができています。だからこそ仲間の存在はとても大きくて、ありがたいんです。
ーーこれからの競技についてどんなふうに考えていますか?
全国1位を取ることが今の目標なので、競技をこれからも続けたいと思っています。大人になったらオリンピックを目指したいと思っていて、海外の選手と戦って自分のレベルを知りたいと思っています。
でも、陸上を大学で続けるかどうかは、来シーズンの記録で決めようとも思っています。もし競技を続けないなら、6年間スポーツを続けたことを生かしてトレーナーや栄養について学び、スポーツを頑張る子どもたちを支えていきたいです。自分の経験を渋谷に還元することができたら素敵だなと思っています。
里乃亜さんの明るくて、たくさん笑う性格は変わっておらず、3年ぶりの再会はとても楽しい時間でした。一つのことを、周りに惑わされずに全国レベルまで極め、技術を磨き上げてきた努力は計り知れません。里乃亜さんが、自身の「全国1位」という夢の実現に向けて日々の練習に励む姿を、これからも応援していきたいと思います。
◾️宮本里乃亜さん 略歴
第106回日本陸上競技選手権大会・室内競技
2023日本室内陸上競技大阪大会
U18 女子走幅跳 6位
第105回日本陸上競技選手権大会・室内競技
2022日本室内陸上競技大阪大会
U18女子走幅跳 5位
第15回U18/第52回U16陸上競技大会
U16女子走幅跳 8位