
2026年3月11日、渋谷区役所にて「渋谷をつなげる30人」第10期のアクション宣言発表会が開催されました。
企業、NPO、行政など多様な立場のメンバー約30人が、約半年間にわたる対話と実践の成果を発表。
4つのテーマコミュニティによる取り組みが共有され、発表を起点に新たなアクションへとつながる場となりました。
「街の同級生」をつくる共創プラットフォーム

発表会の冒頭では、一般社団法人つなげる30人 代表理事の加生健太朗さんが挨拶をしました。
東日本大震災から15年という節目に触れながら、改めて組織や立場を越えて人がつながること、人をつなげることの重要性について語られました。

続いて登壇した渋谷区長の長谷部健さんは、多様な人材が集まり新しい挑戦が生まれる街としての渋谷の可能性に触れ、「渋谷をつなげる30人」のような官民の垣根を越えた取り組みが街の未来をつくっていくと期待を寄せました。
半年の対話から生まれた4つのプロジェクト

「渋谷をつなげる30人」は、渋谷区に関わる企業、NPO、行政など多様な立場の人たちが集まり、街の未来について対話と実践を行う官民共創のプラットフォームです。2016年にスタートし、これまでに約300人が参加。現在は全国15拠点にも広がっています。
コンセプトは「街の同級生」。組織や肩書きを越えて同じ街に関わる仲間として関係を築くことを目指しています。
参加メンバーは半年間で計6回のワークショップを行い、発想から企画、実証実験までを進めてきました。最終発表会は、その成果を「アクション宣言」として発表する場です。
以下では各チームの発表内容をレポートします。
清掃をカルチャーに変える「CYCLE+」

一つ目の発表チームは「CYCLE+」。
「美化の循環に『+α』を。『センスのいい渋谷』をつくるには?」をテーマに、渋谷の美化活動に新たな価値を加えるプロジェクトです。
「挑戦する街から、汚さないことがかっこいい街へ」というメッセージのもと、清掃活動をカルチャーとして再定義。メンバーにはアパレル企業やビルオーナーなどが関わり、自由なファッションで清掃を行うなど、従来のイメージを覆す取り組みが展開されました。
実証実験では、POPを活用した啓発によってポイ捨てがゼロになる成果も確認されたほか、清掃ツールのあり方を見直す「ツールハッキング」といった試みも行われました。

講評では、長谷部区長がグリーンバードの活動に触れながら継続的な展開への期待を寄せ、企業側からも渋谷らしいカルチャーのつくり方というコメントが寄せられました。

偶然の出会いを設計する「寄り未知」

「寄り未知」は、渋谷における偶発的な出会いをテーマにしたプロジェクトです。
渋谷には多様な人や場所が存在する一方で、「近いけれど遠い存在」が多いという課題があります。そこで、違いを楽しみながら人と場所をつなげる仕掛けづくりに取り組みました。
「『ちがいを楽しめ』というのは暴力だ!」という指摘も共有され、多様性を肯定する言葉が、かえって誰かに無理を強いる可能性があるという視点が発表されました。
その前提に立ち、自然に関われる関係性や余白をどう設計するかが、このプロジェクトの出発点となっています。

実証実験として実施された「移動アトリエ」では、店舗の一角を制作空間として開放し、制作プロセスを公開。来場者が作品のタイトルを考えたり、コースター制作に参加したりするなど、対話を生む仕組みが設計されました。

夜の渋谷で行われた「ナイトアトリエ」では、アートを介した自然なコミュニケーションが生まれたといいます。今後は「渋谷アーティストバンク構想」など、継続的な仕組みづくりも検討されています。

松澤香副区長と、まちづくりの専門家でもある須田直樹さんからも、多様性という言葉を掲げるだけではなく、それぞれの人が安心して関われる環境づくりや、日常の中にある違いをそのまま見つめることについての価値についてのコメントが寄せられました。

未来を語る場をひらく「シブヤ2050」

「シブヤ2050」は、未来の渋谷を考える対話の場をつくるプロジェクトです。
2050年という遠い未来は、多くの人にとって実感しにくいテーマです。その距離を縮めるために、今回の実証実験では中学生を招いた座談会を実施。若い世代の視点を取り入れながら、未来を考える機会を創出しました。

また本プロジェクトでは、「知られていない渋谷」に光を当てることも重要なテーマとしています。日常的に見過ごされがちな場所や活動に目を向けることで、街の新たな可能性を発見しようとしています。
その延長線上にある構想の一つが「渋谷万博」です。多様な人や文化が交差する渋谷という街の特性を活かし、さまざまなテーマや価値観が交わる場をつくることで、未来の渋谷を体感できる機会の創出を目指しています。
LGBTQなど、これまで語られにくかったテーマにも踏み込みながら、多様性を前提とした未来の議論が展開されています。
発表を受けたコメントの中では、参加した中学生から「2050年が想像できない。自分が大人になったときの渋谷を考えたい」といった率直な声も上がり、世代を超えた対話の必要性が浮かび上がりました。

地域の土壌を次世代へつなぐ「しぶ家」

「しぶ家」は、都市におけるコミュニティの再構築をテーマにしたプロジェクトです。
「隣に住んでいる人を知らない」という都市の現状に対し、単なる住居ではなく、街のハブとなるシェアハウスの構想を提案。町会や商店街が培ってきた関係性を次世代へとつなぐことを目指しています。
防災や担い手不足といった地域課題に対し、若者が関わる余地はあるものの、その入り口が見えにくい現状も共有されました。

チームでは、地域をリンゴの木に見立てたイラストが共有されました。町会や商店会など、これまで受け継がれてきた歴史、地域の活動地域に蓄積されてきた「土壌」を活かしながら、新しい担い手が関わる仕組みを模索しています。
この取り組みに対して、地域の商店会関係者からも期待の声が寄せられました。
「渋谷は人が多い街ですが、実は顔の見える関係はまだまだ少ない。こういう場があることで、初めて地域とつながるきっかけになる」と話します。

渋谷のまちづくりは、行政や企業だけでなく、こうした商店会や町会の積み重ねによって支えられています。今回の取り組みは、そうした地域の文脈の中に、新しい関わり方を提案する試みともいえそうです。
発表で終わらない、次のアクションへ
発表後には、たくさんの方から講評が寄せられ、それぞれの取り組みに対する期待と具体的な視点が共有されました。
「渋谷をつなげる30人」は、単なる発表の場ではありません。ここで生まれたアイデアは、街の中で実証され、次の実践へとつながっていきます。
肩書きや組織を越えて関係性を築く「街の同級生」という考え方。その関係性の中から生まれたアクションは、これからの渋谷の風景を少しずつ変えていきそうです。











