渋谷の過去を掘り起こし、未来を奏でる「大人の本気バンド」。『Commons Archive Collective』が目指す、新しいアーカイブの形

シェア・送る

渋谷という街は、常に変化し続けています。新しいビルが建ち、店が入れ替わり、人の流れが変わる。

そんなめまぐるしいスピードの中で、あえて「立ち止まり、振り返る」ことを選択した大人たちがいます。

 彼らの名前は『Commons Archive Collective』

「アーカイブ」と聞くと、少し堅苦しい、学者たちが静かに行う作業を想像するかもしれません。

でも、彼らの活動はもっと泥臭くて、熱くて、まるで「ロックバンド」のセッションのよう。 

渋谷ヒカリエで開催された「第3回 渋谷アーカイブ写真展」の熱気が冷めやらぬ中、このプロジェクトを動かす5人のキーマンたちに直撃。過去2回、スタッフとして彼らの背中を追いかけてきた私、太田可奈が、この愛すべき「大人の部活動」の正体に迫ります。

なぜ彼らは、頼まれてもいないのに(笑)、これほどまでに渋谷の過去に情熱を注ぐのでしょうか?

「個人の記憶」を「街の財産」へ。チームの進化と深化渋谷という街は、常に変化し続けています。新しいビルが建ち、店が入れ替わり、人の流れが変わる。

そんなめまぐるしいスピードの中で、あえて「立ち止まり、振り返る」ことを選択した大人たちがいます。

 彼らの名前は『Commons Archive Collective』

「アーカイブ」と聞くと、少し堅苦しい、学者たちが静かに行う作業を想像するかもしれません。

でも、彼らの活動はもっと泥臭くて、熱くて、まるで「ロックバンド」のセッションのよう。 

渋谷ヒカリエで開催された「第3回 渋谷アーカイブ写真展」の熱気が冷めやらぬ中、このプロジェクトを動かす5人のキーマンたちに直撃。過去2回、スタッフとして彼らの背中を追いかけてきた私、太田可奈が、この愛すべき「大人の部活動」の正体に迫ります。

なぜ彼らは、頼まれてもいないのに(笑)、これほどまでに渋谷の過去に情熱を注ぐのでしょうか?

「個人の記憶」を「街の財産」へ。チームの進化と深化

▲左:太田 右:大西陽介さん 渋谷アーカイブ写真展2024 Shibuya Photo Archive Exhibition 2024

「最初は、父が撮りためた写真をお披露目したいという、個人的な想いから始まったんです」

そう語るのは、このプロジェクトのメンバーの大西陽介さん。

曽祖母の代から四代、渋谷で商売をしており、道玄坂商店街振興組合の理事と道玄坂青年会の副会長を務めており、渋谷新聞のアドバイザーでもあります。

そのお父様である大西忠保さんは道玄坂にかつてあった服飾店の「大西屋」三代目であり、街の風景を撮影し続けていました。2024年の渋谷アーカイブ写真展は、その一人の写真家の記録が中心でした。

そして、2025年11月に開催したテーマは

「名付けられた渋谷の通り(ストリート)」

個人の視点から、渋谷という街全体の「共有財産(コモンズ)」へ。

地域住民や商店街、企業、大学、博物館、そして「渋谷をつなげる30人」といったコミュニティなどCACはさまざまな繋がりを通じて、あらゆる場所から名の付く渋谷の通りの写真をかき集めました。

「大きな通りの写真はあっても、スペイン坂のような小さな通りの写真が意外とない。『灯台下暗し』ですよね。でも、そうやってみんなで持ち寄った写真が繋がったとき、そこには個人的なアルバムを超えた、街の歴史そのものが浮かび上がってきたんです」

大西さんの周りには、いつの間にか強力なメンバーが集まっていました。それは仕事の付き合いという枠を超えた、同じ熱量で走れる仲間たちです。

デザインとアーカイブのセッション。チームは「バンド」さながら

▲アートディレクターの杉浦草介さん

このチームを取材していて一番面白いのは、メンバーそれぞれの専門分野が異なり、時にぶつかり合いながらも、最高のアウトプットを生み出している点です。

CACの代表でアートディレクターの杉浦草介さんと、杉浦さんとともにCACを立ち上げたアーキビストの井出竜郎さん。この二人のやり取りは、まさにクリエイティブとロジックの攻防戦。

「今回は『渋谷の通り』という普遍的なテーマだからこそ、歴史や文化を示す年表(タイムライン)が不可欠でした。でも、情報整理が膨大すぎて……修正が永遠に終わらないかと思いましたよ(笑)。」

と杉浦さんが苦笑いすれば、井出さんはマイペースにこう返します。

「アーキビストの仕事は、複雑なものを整理して『わかりやすく』すること。でも、ただ事実を並べるだけじゃ面白くない。不確かな情報や個人の曖昧な記憶も、それが思考のきっかけになるなら、しっかりと調べて提示する価値がある。そう『踏ん切り』をつけることで、写真記録の本質的な価値を伝えたかったんです」

▲アーキビストの井出竜郎さん

デザインの力で魅せる杉浦さんと、情報の海をマイペースに航海する井出さん。

そして、その間を取り持ちながら、広報などを担当する宇佐美由衣さん。

宇佐美さんはこのチームを「バンド」に例えます。

「私も含め、自らが進んで選んで必要性を感じて、このプロジェクトを実践しているから、誰も妥協しないしできない。みんな個性が強いし、こだわりも半端ない。でも、回を重ねるごとにグルーヴが合ってくる感覚があるんです。練習を重ねて上達していくバンドってこういう感じだったりするのかなと思ったり」

無償の自主プロジェクトだからこそ、「やりたい」という純粋な熱意だけが燃料になる。

杉浦さんが冗談めかして言った「今回の成長点はアンガーマネジメント(笑)」という言葉の裏には、本気でぶつかり合ったからこそ生まれた信頼関係が見え隠れしました。

▲広報担当の宇佐美由衣さん

新たな才能との出会い。アーカイブは未来へ続く

若き実力派の社会人2年目、兒玉真太郎くんです。
「自分が『こうやりたいな』と思いながら見ていた展示の裏側に、まさか参加できるなんて」と語る兒玉くん。

地理学というレンズを通した彼の視点は、チームに「客観性」という新しい武器をもたらしました。 

彼はなんと、2024年の展示を客として見に来ていたところを…「熱心に見ている子がいる!」とメンバーにスカウトされたという、シンデレラボーイならぬアーカイブボーイ。

福岡と東京を行き来しながらのリモート参加。
ベテラン勢に囲まれての制作は、決して楽ではなかったはずです。
「自己管理も含めて、反省点は多いです」と語る彼ですが、その表情は充実していました。

自分の集めた情報が、チームの手によってデザインされ、形になっていく喜び。
それは、世代を超えたクリエイションの現場でした。

▲リサーチやタイムラインの企画を担当した兒玉真太郎さん

懐古主義ではない。「未来」のためのアーカイブ

彼らが目指しているのは、「昔は良かった」と懐かしむだけの場所を作ることではありません。

「過去の事実を提示することで、来場者自身が『これからの渋谷』をどうしていきたいか、未来を考えるヒントにしてほしい」と宇佐美さんは語ります。

会場では、若いカップルが「ここ、今のお店と違う!」と驚き、年配の方が「そうそう、ここはこうだった」と目を細める。

写真という「記録」を介して、世代を超えたフィジカルな会話が生まれる。そして記録の価値が共有される。それも、Commons Archive Collectiveが作り出したかった光景なのかもしれません。

大西さんは最後に、今後の展望を語ってくれました。

 「今後はエリアをもっと広げたいし、音楽文化など『人』にフォーカスした企画もやってみたい。AIなどの新技術も取り入れていきたいですね。熱意ある人がいれば、このノウハウはどこの商店街でも、どこの街でも展開可能ですから」

渋谷という街の記憶を掘り起こし、磨き上げ、未来へと手渡す。 

『Commons Archive Collective』は、単なる記録係ではありません。

彼らは、アーカイブという楽器をかき鳴らし、渋谷の未来を奏でる、最高にクールなロックバンドなのです。

この街ですれ違う、何気ない風景。その裏側には、こんな熱い大人たちの物語があることを、ぜひ知ってください。

▲渋谷アーカイブ写真展2025年11月展示会後

【Commons Archive Collective について】

■ 概要 「Commons Archive Collective(コモンズ・アーカイブ・コレクティブ)」は、街に残る写真や個人の記憶などから読み取れる「記録」を、地域や社会で共有すべき「財産(コモンズ)」として捉え直し、継承・活用していくことを目指すプロジェクトを実践しています。

メンバーは、専門性も備えつつも、枠を超えて横断的にプロジェクトを進行している。単に過去を保存するだけでなく、デザインや編集の力を通じて「活用できる情報」へと変換し、展示会やワークショップを通じて、街の未来を考える対話の場を創出しています。

■ Commons Archive Collective メンバー

  • 杉浦草介(アートディレクター・CAC代表):プロジェクトの ビジュアル、構成を担当。膨大な情報を魅力的な展示へと昇華させる。
  • 井出竜郎(アーキビスト): 記録の整理・監修を担当。アーカイブズ学の視点から、情報の信頼性と物語性を両立させる。
  • 大西陽介(渉外担当): 地域コミュニティとのハブとなり、プロジェクトのネットワーク形成を牽引する。
  • 宇佐美由衣(広報): PRやコミュニケーションプランを担当。現在と過去を結び、未来志向の展示を構築。
  • 兒玉真太郎(リサーチャー): 地理学の知見を活かし、リサーチや年表企画を担当。2025より参加。

■ 関連URL

この記事をシェアする
シェア・送る