
「死」という言葉をきいてあなたは何を思い浮かべますか。
今回取材させて頂いたのは、死や喪失に関する悲嘆ケアという社会課題にデザインの力で取り組む100BANCH発のプロジェクト「さだまらないおばけ」の趙愛玉さんと松本紗規子さん。
タブー視されがちな死生観を、なぜあえて扱うのか。
お二人の考える「死」と「生」とは。
活動の原点から、そこに込めた思い、これからの展望まで、たくさんお話を伺いました。
「さだまらないおばけ」ってなに?

ーープロジェクトの発足となった経緯について教えてください。
渋谷にあるデザイン専門学校「東京デザインプレックス」のソーシャルデザイン系ゼミでの活動が始まりです。
親族の死をきっかけに、死とどう向き合うのか、そしてグリーフ(大切な人やペット、または身体の一部や仕事・住まいなど、自分にとって大切な存在を失ったときに生じる深い悲嘆や心身の反応)をどう解決するべきか。そんなことを考えるようになりました。
大切な人を失った悲しみを抱えながら生きる人。
まだそうした経験がなくても、いつか悲しみを抱えてしまう可能性がある人。
死についての経験や知識・考えは人それぞれですよね。
そこで、デザインを通して自分の死生観を隠さず話せて、どんな考え方も批判されることのない社会を作りたい。そう思って、今の活動をしています。
ーーそうだったんですね。チーム名にはどんな意味が込められていますか?
ゼミでの活動でたまたまつけたというか(笑)。
最初は仮の名前として「もったいないおばけ」というチーム名をつけていました。
色々な課題と向き合って、動いて、だんだん他の社会課題やアップサイクルの問題もでてきて。そこで、「さだまらない」という動きと「もったいないおばけ」を合体させて今の形になりました。
あとづけにはなりますが、死と生には「さだまらない」部分がありますし、またその定まり方も人によってバラバラですよね。
そういった流動性を含めて、死生観は人々の心の中で定まらないまま存在し続ける。その状態を肯定し、許容しよう、そんなメッセージを込めて、このチーム名を使い続けています。
死生観はタブー?
ーー死という世間的にはタブー視されていることを扱っていることについてどう考えていますか?
以前私の会社の同期が亡くなってしまったことがあって。そのときに会社のなかでは「触れない」「話さない」「なかったことにする」という空気があって、それに凄く違和感を覚えました。
失われた日常への違和感というような感覚ですかね。いろんな人の話を聞いてみると、それぞれに違和感を持っていて、喪失感の共有不足があるなあと思ったんですね。
健康やキャリアを失ったり、大切な人を亡くした経験は個人的なものですしあって、基本的に暗い話題なので避けられがちです。ただそれを一人で抱え込むと、心の整理ができず、自分のなかで感情がぐるぐるループしてしまうんですよ。
宙ぶらりんの感情や、言葉に残せない想いというものを、社会全体で考えるきっかけが必要だと考えています。
ーーその考えをもとにこの活動をされているんですね。
はい。まずクラウドファンディングで支援者を募集して、グリーフケアを解決するためのプロダクトを作りました。
一つはノート、もう一つはカードゲームです。
ノートは、一人で気持ちを整理し、心を発散させるためのもの。
カードゲームは、対話を通じて考えを解放し死について話すことが「不謹慎」や「腫物に触る」行為にならないように、デザインで誘導できるようなコミュニケーションツールとして作成しました。
精神科の先生に監修していただきながら、心の価値観をポジティブにしようという思いを込めて考えました。


グリーフケアとデザイン

ーーカードゲームというのは、死の暗いイメージ少しミスマッチですが、、、
入口のハードルを下げるためにポップなデザインを取り入れていますが、中身は真摯に、真面目に作っています。 グリーフケアの専門家にも構成を見て頂いたりもしているのでそこは問題ないかと思っています。
ーーなるほど。イベントでお化け屋敷をモチーフにしたスナックも開催されていましたよね。
そうですね。かなりカオスでした(笑)。
100BANCHの一階のスペースを貸し切ってやらせていただきました(当時のイベントの詳細はこちら)。話題はそれぞれ違っていたり、少しそれても、きちんと死生観を捉えて話しているのが凄く伺えました。
哲学的な対話もあれば、カジュアルに話しているところもあって面白かったです。
おばけのキャラクターや色彩にも意味があって、「何これ?」って思われるかもしれませんが、、説明がつくものにはなっています。手軽さを表現していると思っていただければ幸いです。
ーーこういった活動を通じて、ご自身の死生観や物事の捉え方に変化はありましたか?
もうずっと変化してます!(笑)。
日本にはお墓だったり四十九日だったり、継承されている文化がありますよね。
その文化を守るだけではなく、時代やトレンドの流動的な動きを取り込みながら、変化させて途絶えさせず、本質を社会に届けていくのが大切だと考えるようになりました。
当事者と非当事者のあいだの難しいバランスを意識しつつ、広げることで軽視されないようその中間のグラデーションを丁寧に作っていく必要がある。
これは個人だけではなく、業界全体で考えていくべき課題だと思うようになりました。
あとはフランクに考えるというか、柔軟に考えるようになりました。他人と自分の考えが違ってもそれにはきっと理由があるはずです。
その人のバックボーンを知らずして否定するのは、やめようと思うようになりました。
生きるために死を考えよう
ーーこれからの目標や展望を教えてください。
凄く悩んだ末にたどりついたメインコンセプトは「生きるために死を考えよう」かなと思います。
うーん、なんですかね。多様化が進んでいる時代だからといって、宗教や伝統を否定するのは違うかなと。
ちゃんとリスペクトをもった上で本質をぶらさず、現代に合わせてカスタマイズしていくことが大切だと考えています。
今エンディング業界は変革期にあります。その中でも私たちは、いろいろなアイデアを出して色んな人が選択できる世の中になるよう土台づくりをしなければいけないと思っています。
あくまで生きるために死を見つめ直せるような世の中に変えていくことが目標ですね。後ろ向きではなく前向きな世の中に少しでもなれるよう、お手伝いがしたいです。
取材を通して
一昨年、私は長年お世話になっていた習い事の先生と、大好きだった保育園の先生が同じ時期に旅立ってしまったことがありました。
別れはあまりにも突然で辛く、今でも信じられません。
別れを経験する前にこの取材をしていたら、私の心はなにか違ったのかもしれません。
死を独りで考えることは容易ではなく、ましてやあの時の自分は今以上に心が幼稚で未熟だったのでただ漠然とした悲しみしかありませんでした。
また、ただ生きているだけの自分はここに存在していいのか。大げさかもしれませんがそんなネガティブなことも考えていました。
今回お話を伺い、活動内容やコンセプトについて知るなかでどこか自分の心が開放的になったように思います。
「不完全なままのその状態を肯定する。」「さだまらない状態のまま不安なもの不確実なものはそのままでいい。」この言葉を聞いて、ありのままの感情を素直に受け取っていいんだなと。悲しくていいんだ。辛くていいんだ。時間がたった時にまた見つめなおそう、そう思うことができました。
死生観について、グリーフケアについて、10代の今知ることが出来たのは凄く勉強になりましたし、ラッキーだななんて思いました(笑)。
明日も楽しく生きれますように!
◾️さだまらないオバケ
デザイン系の専門学校「東京デザインプレックス研究所」(東京都渋谷区)が運営する、学⽣主体のラボラトリー「FUTURE DESIGN LAB」から誕生したデザインユニット。死を拒むのではなく、亡くなった大切な人のことをいつまでも想い、語り合い続けられる世の中になることを願い、「死のリデザイン」に取り組んでいる。
◾️趙愛玉
1992年 東京生まれの在日韓国人3世。母が歌手ということもあり小さい頃から音楽を学ぶ。専門学校を経てMAエンジニアとして就職するも20半ばの頃にデザイナーになりたいという思いが再燃し、東京デザインプレックスにてグラフィックデザインを学ぶ。
現在はメーカーでグラフィックデザイナー、VMDの役割を務める中、オバケではリーダーとしてユニットをまとめつつ、グラフィック・イラスト・空間デザインなど幅広く担当。
◾️松本紗規子
1991年 静岡県生まれ。3歳から18歳までモダンバレエを習い芸術に興味を持つ。社会人5年目の時に渋谷にある東京デザインプレックス研究所に新幹線で通いグラフィックデザインを学ぶ。後に、さだまらないオバケにジョイン。ITメーカーのメディア運用やリクルーティンググッツの制作に携わり、現在はフリーランスとして活動中。1児の母。オバケのディレクションを担当。











